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うれしい知らせ

平成18年3月8日(水)
啓蟄も過ぎてこのところおだやかな日が続く。「三寒四温」とはよく言ったもので季節は暦のとおりに巡ってくる。
先日不妊治療で妊娠となり、出産のために里帰りされていた患者さんのご主人から「無事に生まれました」との知らせがあった。こういう時が一番うれしい。この仕事をしていてよかったと思える瞬間である。どんな仕事でも難しければ難しいほど相手(ユーザー)に満足してもらうのが最もやりがいを感じる時である。 我々の仕事は結果次第のことが多いので、完璧にやっても結果がうまくいかなかったら満足してもらえないばかりか、訴えられることもある。結局は誠心誠意やるしかないが、やはりうまくいって喜んでもらえるのはうれしいことである。
医師で作家の南木佳士は末期の肺がん患者ばかりを看取っているうちに精神に変調をきたして、病院に行けなくなったことを書いているが、そうなるのも仕方がないと思う。人は希望のない状態ばかり見ることには耐えられないようにできているのだから。

ピルの普及には時間がかかる

平成17年12月21日(水)
正月休みが近づくとピルを早めに買っておこうと来院される人が多くなる。当院のピルの処方数は結構多いので、在庫のピルが少しでも減ればすぐに補充するよ うにしている。常に400シート(5種類)は置いているが1つの銘柄だけ減ることもあるので在庫の確認が必要である。当院の処方数から見ればピルはかなり 普及してきたように思うのだが、全国レベルでは我が国は依然として世界でも極端にピル使用の少ない国なのだ。折に触れピルの利点を説いているが、普及には まだまだ時間がかかりそうである。

生理不順は経過観察

平成17年12月9日(金)
先日来院された患者さんで、生理不順のため漢方薬を処方されて飲み始めたが、最近他県から転勤で広島に来たので同じ薬を処方してほしいという。診察したと ころ、生理不順の原因は生来の排卵が遅れやすい卵巣のためであり現在妊娠の希望がなければ特に毎月排卵させる必要はなく、そもそも対症療法しかできないことをお話すると薬を飲まずに経過を見ることになった。患者さんにとっては生理不順をそのままにしておいたら良くないのではと思って薬を飲むのだろうが、特別の場合を除いてそのままにしておいてもいいのである。意味のないことはしない方がよい。患者さんにとっては二重の負担になる。
やっと腰痛が治ったと思ったら朝からのどが痛く、風邪のようである。こんなことではダメだ、鍛え直さねば。

セカンドオピニオンの困惑

平成17年10月18日(火)
セカンドオピニオンを求めて来院する人がいる。初めからセカンドオピニオンですがと言って来る人と、診断結果をお話した後で「実は前の病院で○○と診断されたのですが、、、」という人がいる。もちろん最後まで黙っている人もいるだろう。当院の見立てが前医と同じならいいのだが、問題は診断が異なっている場合である。見解の相違ぐらいならそういう見方もあると説明できるのだが、どう考えても前医の診断と違う場合はどう説明しようかと悩んでしまう。
自分の診断が絶対正しいとはいわないが、それにしても違うものは違うのである。患者さんは心配しているわけだから、医者としては安心させてあげたいので診断どおりに答えるのだが、後で診るほど正しい診断ができる。だからそのことを話して説明し納得していただくのである。

緊急避妊薬について

平成17年9月20日(火)
緊急避妊薬を希望して来院する人が結構おられる。Yuzpe法といってアメリカンジャーナルにその避妊効果についての論文が載っていたが、かなりの確率で避妊できるようだ。中用量のピルを1回2錠、12時間後にもう2錠飲めばいいのだが嘔気などの副作用があり、飲めない人もときに見られる。短期間に何度も来院するリピーターもいて、何回も使うぐらいなら低用量ピルを毎日飲んだ方がいいとすすめたくなる人もいる。以前はそんなに多くなかったが、最近増えているのはネットからの情報のせいだろうか。わからないことがあればネット検索でいろいろな情報が得られるので利用している人は多い。
ピルに関する情報も豊富でそれらを見てよく知っている患者さんも多い。その場合は説明が早くて実にいい。ピルというと何か恐いものという先入観があって、説明に時間がかかるのだが安全性、副作用共にある程度わかっているので必要なことだけ話せばよいのだ。ネットは有用であり、なくてはならないものになっている。

HPV(ヒトパピローマウイルス)への対処

平成17年8月9日(火)
細胞診で軽度の疑陽性の場合は、1~3ヵ月後に再検することが多い。ほとんどの場合、同じ疑陽性の状態が続き、精密検査をしても軽度の異型上皮という悪性ではないが正常でもないという結果が多い。特に若い人の場合はHPVというウイルスの感染による細胞・組織の変化のせいであることがわかってきた。そのままにしておくと、ほとんどの場合は疑陽性のままでそのうち正常にもどることも多いが、一部では悪性に進むこともあるので一定の期間ごとに細胞診をしなければならない。これは本人にとっては不安な気持ちになることに加えて、通院の負担も結構大変だろう。異常を見つけても経過を見る以外には方法がないというのは、どう考えても医療側の責任でなんとかしなければならない問題である。
そこで、HPVに効果のある薬を塗ることによりウイルスを殺し、感染細胞が修復されれば細胞診も正常に戻るのではないかと考えた。ちょうど、いくつかの大学で同じ方法の治療をした論文が発表されていたので、軽度の異型性の続く患者さんにインフォームドコンセントの上治療を試みた。細胞診の異常の認められた部位に1~数回薬を塗るだけであるが、副作用はなく患者さんには何の問題もなかった。
その結果は、現在までのところ32例中14例は正常にもどり、13例は変わらず、1例は進行し、4例は脱落例(来院せず)であった。全くの無治療で経過をみた場合と比較しなければならないが、副作用がないことを考えるとなかなか良好な結果だと思う。もう少しこのまま続けてみるつもりである。

セカンドオピニオンについての考え

平成17年7月29日(金)
当院にもセカンドオピニオンを求めて来院される患者さんがおられるが、ほとんどの場合初めの医療機関の診断・治療方針と同じ意見である。むしろそれとは関係なく来院されて問診の際に以前の診断と治療に?を感じることの方が多いように思う。診断に関しては診断した時期が異なれば微妙に違うこともあるし見立て違いもあるだろうが、一旦診断が確定し治療を始めれば内容によっては患者さんになんらかのストレスを与えることになる。
子宮内膜症などはこういう事が起こりやすい典型的な疾患で、いろいろな問題を含んでいる。まず診断そのものが初期のばあいは難しい。つぎに、たとえ正確に診断できてもなかなかいい治療法がないということもある。そのために高額な薬や長期にわたるフォローをするようになり、場合によってはよりストレスを与えてしまうこともあるかもしれない。したがってこういう疾患はなによりもまず正確な診断が必要であり、治療も長期にわたる可能性があるのでできるだけ患者さんの負担が少ないようにする必要がある。それぞれの治療法の利点と欠点を説明して選んでもらうようにしているが、どうしても自分がいいと思っている方法をよりくわしく説明してしまうようだ。
誘導は良くないとは思うが、みすみすあまりよくないと思っている治療法を選ばれるのは気の毒である。そのあたりのことが難しいのである。

かかりつけ医と健診

平成17年7月13日(水)
相変わらず曇天の日が続く。昼からは雨も降りまさに梅雨である。
子宮筋腫があり、他院で定期的にフォローしてもらっている患者さんが、健康診断や市の健診の子宮がん検診を希望して来院されることが少なからずある。いつも思うのだが、すでに信頼して行きつけの医療機関があるのであれば健診は必要ないのにどうしてさらに同じ検査を希望するのかということである。思うに、健診に対する信頼感と検査は何回でもした方がいいのではないかと考えているのだろう。健診はあくまで何も症状がなく、他に同じ科の医療機関に受診していない場合にはいいかもしれないが、そうでなければあまり意味がない。よく聞くと、何ヶ月か前にかかりつけの医院で子宮がん検診は異常なかったと言われるのである。健診はスクリーニングに過ぎなくて、信頼できる医療機関にかかっているのならその方が良いのだと縷々説明するのだが、いつも一定の比率でそういう人がおられる。スクリーニングが寿命の延びにどの程度寄与しているかは疑問であり、医療側も過大な幻想を抱かせないように有用性についてきちんと説明すべきであろう。

病気の受け止め方

平成17年7月9日(土)
同じことを話しても患者さんによって受けとめ方がずいぶん違う。細胞診で子宮がんが発見された患者さんに、どのように話したらいいかと思いながら告げたが、「そうなんですか、じゃあ手術が必要なんですか」とあっさりと言われた。ほっとすると同時に手術できる病院を紹介すると言うと「その日は都合が悪いので別の日にしてください」とおっしゃる。まったく気にしてない様子である。気にしてないように見えても実は頭が真っ白になったという話はずいぶん聞いたことがあるが、この場合は本当に淡々と受けとめておられる様子である。
同じ場合でも、別の人は心配でたまらない様子で、何度も今後の見通しについて質問される。どちらもその人にとっては真実なのだろうが、心配しようがしまいが結果(予後)は決まっている。結果が決まっているのであれば気楽にしている方がいいと思うがそう単純な問題でもない。無理して気楽に思おうとしても意味がないだろう。心境の問題だろうがこういう時に人間の性格と、それまでの越し方が出るのかもしれない。

説明疲れ

平成17年7月2日(土)
いままでの空梅雨がうそのように朝から豪雨となっている。自然はうまくしたもので、我々人間の浅知恵では計り知れない動きで季節が過ぎて行く。結局きちんと帳尻を合わせているようだ。
土曜日のせいか雨だというのに結構患者さんが来院されるので、夕方には疲れてしまった(説明疲れ、しゃべりすぎ?)。特に初めての妊娠で胎児の心拍がなくなって流産と診断した時は、時間をかけて丁寧に説明するのだがなかなか難しい。今日のような日はストレス解消のために、歩いて帰宅したいのだが天気次第だろう。雨が続くと梅雨の晴れ間が待ち遠しくなる。人間とは結構勝手なものだ。