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人工妊娠中絶薬について

令和5年2月2日
現在、人工妊娠中絶薬ミフェプリストンについての審議が行われている。この薬は30年以上前にフランスの製薬会社ルセルが開発したもので、RU486と称されて動物実験を経て人に適応されるようになった。当時、属していた研究室で後輩がこの薬をマウスに使い薬の血中濃度の変化を調べ、ほぼ妊娠中絶できることを確認し学会で発表した。その後フランスでは一般に使われるようになったが日本には入ってこなかった。現在は妊娠9週までは使われるように審議されているらしい。
妊娠を継続する必要なホルモンであるプロゲステロンの受容体に結合して流産(中絶)させるので、早い時期ほど効果がある。問題なのは流産が始まると痛み、出血などが起こり不安になって受診したくなることが多いと思われるが、24時間対応の医療機関以外では対処できないことである。また一部遺残することもありその場合は手術が必要になる。だからこの薬は着床した後せいぜい2週間ぐらいの間に使うべきで、それなら生理と同じような出血で済むだろう。これが本当のアフターピルである。承認するならこの条件ですべきと考える。

流産手術

令和4年12月22日
久しぶりに流産手術を行った。以前は妊娠初期に超音波検査で稽留流産が確認された場合、流産手術で治療することになっていた。当院でも年間40件くらいは行っていたが米国発の「自然流産まで待機してもし不全流産になった場合に流産手術を行う」という方針が我が国でも主流になった。確かに多くの場合は1か月くらいの間に流産が始まって、1週間ぐらいで出血が減って治癒する。ただ、出血がいつ始まるかわからないし、痛みも強いことが多いので患者さんは不安だろう。
当院でも基本的には自然に流産するように待機する方針をお話しするが、早く治癒したいと希望される人には流産手術を行ってきた。令和になってから流産手術を希望する人は非常に少なくなっていたけれど出血が多く不安になる人もいた。また、2か月待っても流産が始まらない人もいて手術を希望することもある。手術は人工妊娠中絶術と同じ手順なので半日で帰宅でき、後は普通に過ごすことができる。以前のように流産手術を薦めるほうがよいのかと考えることもある。

性感染症について

令和4年12月1日
性感染症でよくみられるのは「クラミジア感染症」で、無症状の保菌者も多いのでその発見が蔓延を防ぐ最善の策である。男性は排尿痛などの症状がみられることが多いが、女性は無症状のことが多いので注意が必要である。「淋菌感染症」もよく見られ、クラミジアと同時の感染がみられることも多い。これらは抗生剤で治癒するので早めに受診した方が良い。「尖圭コンジローマ」はHPV感染による「イボ」で、外陰部・膣・肛門などに多発するがクラミジア感染も併発していることもある。「ヘルペス感染症」はHSV-1によるものが多いが、初感染の場合外陰部に潰瘍をつくるなど痛みが強い。薬はあるがあまり効果がなくそれでも2~3週間で治るので「日にち薬」の病気といわれる。再発の場合は4~5日で治るので薬はほとんど要らない。
このところ増えているのが「梅毒」で以前はほとんど見たことがなかったが、今年は全国で1万件を超えたという。外陰部の痛みや鼠経リンパ節の腫れ、バラ疹、手掌丘疹などから発見されることもあるが、無症状で見つかることも多い。ペニシリンで治癒するのでやはり早く受診することが肝要である。かつては時々あった「毛じらみ」はあまり見られなくなった。「膣トリコモナス」は魚臭を伴う泡沫状黄色帯下などで発覚するが慢性化して無症状のこともある。
人と人との接触がある限り性感染症がなくなることはないだろうが、早めに見つけて治療することが大切である。

緊急避妊ピルと人工妊娠中絶

令和4年11月24日
緊急避妊ピルを希望して来院される人が多いが、いつもお話しするのは「緊急避妊ピルはそれほど効果があるものではない」ということと、「飲む必要のあるのは排卵前で、排卵後や排卵1週間以上前は飲む意味がない」ということである。妊娠可能なのは排卵日前の最大1週間と排卵後1日くらいで、それ以外の時期の性交では妊娠できない。緊急避妊ピルは排卵する前に飲むことによって、排卵を少し遅らせるか抑制するだけなのである。排卵日に性交した場合の妊娠率は3割ちょっとぐらいなのだが、それを1割ちょっとぐらいにする程度である。
緊急避妊ピルを飲んだけれど妊娠した場合は、産むか中絶するかということになる。どちらも大変なことである。だから毎日飲む低用量ピルはほぼ完ぺきに避妊できるのですばらしいのである。我が国でも人工妊娠中絶が減ってきたのは、ピルが少しずつ普及してきたからだと思う。当院で中絶手術をした人にはピルを薦めるようにしている。

産婦人科治療の変遷

令和4年10月13日
産婦人科の治療はこの40年でずいぶん変わってきた。例えば「切迫流産」、これは妊娠初期から中期にかけて出血などの流産兆候があった場合の病名であるが、40年前は安静・止血剤・子宮収縮抑制剤の処方、入院も薦めるのが標準治療だった。その後、超音波検査が開発され予後がわかるようになってからは何もせず経過観察するようになった。以前は入院して安静・止血剤などの点滴が普通で、病棟にはそんな患者さんが多かった。今から思えばさぞ大変だったと思う。
生理痛のひどい人に対して子宮後屈が原因だといって後屈を治す手術(欧米で始まった手術)も行われていた。今は後屈が原因説は否定されているので手術された人は気の毒としか言いようがない。
他にも同じような例はいくつもあり医学はそのような試行錯誤を繰り返して進んできたのである。現在行われている治療も後になって間違っていたということはいくらでもあると思う。だからこそおかしいと感じる検査や治療はすべきではないしいつもそのような視点でガイドラインを見ている。たとえ周りが行っていても本当に将来にわたって患者さんのためになると信じられること以外はしない。この姿勢は一貫している。

コロナは普通の風邪になった

令和4年9月29日
新型コロナ第7波もおさまってきてやっと終焉を迎えたようである。周囲の多くの人が感染し、ほとんどは普通の風邪でおさまっているのをみると、オミクロン株以降はまさに「普通の風邪」になったようだ。
母校の先輩で病理・感染症・分子病理学の井上正康名誉教授、現代適塾塾長はコロナ騒ぎの初めから、厚労省や専門家と称する人たちの振る舞い、マスコミのあおりなどに対して警鐘を鳴らしていた。ウイルスの感染は防げないし、集団免疫も獲得できるからインフルエンザと同じように対処するしかない、mRNAワクチンは危険すぎるので使うべきではないと。
我が国ではコロナが蔓延し始めた2,020年の超過死亡は18,000人少なかったのにワクチンを打ち出した2,021年は70,000人以上が多く亡くなっている。2,022年はもっと増えるだろうといわれているが、原因はワクチン以外には考えられないという。
ファイザー社のワクチンに関しては、その内部資料を米国FDAが75年間隠蔽しようとしたけれど、裁判で敗訴して開示せざるを得なくなった。5万5千ページに及ぶ資料によると、治験者総数4~5万人で亡くなった人が千数百人、治らない重篤な副作用があった人が数千人、回復しつつある人が数千人、副作用の種類が1,291件とのことで、これがその時点で発表されたらだれもワクチンを打たないだろう。それでFDAは75年間非公開にしたことは医学倫理では考えられないことである。これからはワクチン後遺症に対処することが大切で、心ある医師たちは勉強会を開いて情報交換をしているという。なぜ本当のことを言う人の言葉は無視されてしまうのだろうか。ファイザーの公開した資料はわが国でも議論すべきだろうし、8億8千万回分のワクチンの契約は反故にできない。またも政府と厚労省はうやむやにするのだろうか。

人工妊娠中絶について

令和4年9月22日
人工妊娠中絶手術は産婦人科医が習熟すべき手術の一つである。まず掻爬術を習得しその技術を身につけたうえで手術に臨むが、お産と同じで何年たっても緊張する手術である。その後、吸引法が取り入れられてやや簡素化したようであるが、遺残した場合はやはり掻爬術の習熟した技術がないとだめである。掻爬の時に指先に感じる感覚が大切なのだ。
今から30年以上前にフランスのルセルという製薬会社がRU486という薬を作った。これは妊娠維持に必須のプロゲステロン受容体に作用して妊娠を止めてしまう働きがあり、妊娠初期なら動物実験ではほぼ完ぺきに妊娠を止めることができ、ヒトでもかなりの確率で効果が認められ、海外では使われるようになっている。我が国でも現在治験が行われていて近いうちに承認され発売されると思われる。問題なのは、いつ出血が始まるかわからないので、深夜あるいは仕事中に始まったらその痛みが強くても対応できる施設があまりないことである。24時間対応の分娩施設ならいいが、それも限られてしまう。また、遺残した場合は掻爬が必要になる。やはり、手術日を決めてきちんと麻酔をして掻爬か吸引した方が安心安全ではないだろうか。

更年期症候群

令和4年9月16日
閉経前後の10年間くらいに起きる更年期症候群は、のぼせ、ほてり、異常発汗、動悸、冷え性などの自律神経症状がメインであるが、精神神経症状や運動器症状も加わって、一人ひとり症状が異なる。女性全体では症状なく閉経を迎える人の方が多いけれど、深刻な症状のみられる人もいる。以前は漢方薬などを処方していたが、効果はあまりなかったので漢方の本を買い集め勉強してみたが、いっこうに効果がなかった。
その頃欧米ではホルモン補充療法が始まり、アメリカに留学していたD先生が帰国し、広島市民病院で治療を始められた。その時に薫陶を受けられたM先生が中電病院で始められ、その効果に驚いた自分も始めたわけである。
自律神経失調症は男性でも女性でも大人でも子供でもなるが、原因がホルモンの不安定によって引き起こされるのが更年期症候群である。ならばホルモンを補えばいいのは明白である。実際ほとんどの場合効果がある。我が国ではいまだに漢方薬が使われているようだが、欧米ではローカルドラッグとして承認されていない。日本人のホルモン怖い病も普及しない理由なのだろう。

低用量ピルの普及

令和4年9月8日
日本で低用量ピルが解禁されて20数年たった。初めは普及はゆっくりだったが、今では健康保険のピルも認められてそこそこ飲まれるようになった。とはいえ欧米に比べるとまだまだわずかなものである。
低用量ピルを初めて使ったのは今から30年以上前で、岡山市民病院に勤務しているときにピルの治験を担当したからである。希望者を募って同意を得てピルを1年間飲んでもらい、月経量の変化や生理痛の改善、副作用の有無などを調べたところ、全例副作用もなく生理痛は緩和し、生理の量も減り、避妊効果も万全だった。全国で行った治験をまとめた結果、我が国でも欧米と同じくピルが承認されるはずだった。子宮内膜症にも有効なことがわかっていたので早く患者さんに使ってあげたかった。なのによくわからない理由で承認が棚上げになり10年間据え置かれた。
今ではピルは普通に処方しているが10年の遅れは大きく、我が国でのホルモンに対する怖いと思う感覚からか、普及率はまだまだの感がある。

生理日の移動

令和4年7月28日
生理日の移動を希望する患者さんは多い。生理は排卵2週間後に始まるのでその3日前から中用量のピル(プラノバール)を1日1錠、延ばしたい日まで内服すればいい。問題なのは予測生理日が正しいかどうかである。排卵日は生理開始から14日目の人が比較的多いが遅れることもあるし早くなることもある。生理の始まる1~2日前から黄体ホルモンが減少し、子宮内膜の血管が破綻しはじめるので、そうなってからではピルを内服しても生理は始まってしまうのである。だから早めに(5~7日めから)飲み始めるといいが、それでは長く飲まなければならなくなってしまう。
中用量ピルは副作用(嘔気など)があったので低用量ピルがつくられたのである。問題は低用量ピルで生理をコントロールするためには、生理中から飲み始めなければならないことである。だから少し早めに受診して両方の利点・欠点を聞いて選べばいいというわけである。