母体保護法指定医研修会

令和5年6月7日
表題の研修会が医師会館で行われた。興味深い演題は最近承認された「経口中絶薬」についての説明だった。
以前にも書いたがこの薬は40年近く前にフランスの製薬会社ルセルが開発したRU486で、妊娠を維持するために必須の黄体ホルモン受容体に結合して妊娠の維持ができなくなり流産(中絶)してしまうものである。当時、大学のホルモングループに所属していたので、この薬を使って動物実験をしていた後輩の研究成果を見ていてすごい薬ができたものだと感心したものだ。マウスを使って実験するとほぼ100%流産させることができた。その後、欧米では普通に使われるようになったが我が国では認可されなかった。
我が国では今年の4月28日正式に承認され5月中旬より使われることになったが、問題がいろいろあることがわかった。まず、流産が始まると痛みと共に出血が多くなり、自宅では耐えられなくなって病院を受診したくなるが、深夜だと対応できなくなるので、入院設備のある医療施設で院内でのみ使用して院内で待機する。一日たっても流産しなければ手術になる。ちなみに10人に1人は手術になるという。今までなら朝手術をすれば昼には帰宅できるし、確実に中絶できるのでそのほうが楽ではないかと思ってしまう。値段も従来の中絶術と変わらないか少し高くなるという。これではわざわざ薬を承認する意味がないのではないだろうか。欧米では薬を使う場合と手術をする比率は半々だそうである。なぜ承認したのかわからない。

LGBT法案

令和5年6月1日
自民公明両党はLGBT法案を国会に提出した。性的少数者を守ることは大切だが、G7サミットに合わせて大急ぎで出したのはいかがなものか。女性だと自認した男性がトイレ・浴場・スポーツなどに介入してくることを、LGBT当事者団体特に女性団体から反対の声が上がっているという。さらに児童生徒にも性差をなくする教育がなされるようになることが、はたして本当にいいことなのだろうか。
エッセイストで動物行動学研究者の竹内久美子氏によると、人間も含め動物はメス(女)がオス(男)を選ぶのが原則で、メスにとって1回の繁殖に多くのエネルギーと拘束時間がかかるためできるだけ質の良いオスを慎重に選ぶ。対してオスは1回射精したら次の繁殖のチャンスはすぐに巡ってくるので相手を慎重に選ぶ必要はないし、そうしないほうが得である。繁殖における原則の違いが男と女の一番の違いで、性差を失くする教育は動物としての大原則に完全に逆らっている。
性の多様性を認めることは必要であるが、欧米に合わせての性急な法案提出はいかがなものかと思う。

広島G7サミット

令和5年5月24日
広島G7サミットが無事終わった。岸田首相をはじめ関係各位は心からほっとしたことだろう。サミットのだいぶ前からクリニック周辺に警官の姿が増えてきて、私服の警官と思しき人も見られるようになった。毎日自転車で往復する平和大通りは警察車両がびっしり並び、バイデン大統領が泊まったヒルトンホテルの周囲は警官がびっしりで、まさにアリの子一匹通さないとの気構えを感じさせられた。
日曜日は車で出かけると規制にかかると思ったのでカミさんと京橋川をさかのぼるウオーキングをおこなった。どの橋にも警官の姿が見られ、いろんな県から応援に来ていることがわかり「ご苦労様です」と声をかけるとにっこりあいさつしてくれて、ほっこりした気持になる。縮景園を対岸に眺めながらさかのぼると、園内の川沿いに警官が50メートルごとに立って警護している。園の周辺は警察車両や白バイが見られ、警官の数もびっしりで園に要人が来ていることを思わせる。猿猴川を下って駅前を通って帰ったが、パトカーに先導された要人の車が通過するのを見た。
広島県警が3,000人、警視庁を含め他県からの応援が21,000人、合計24,000人の警官による警備は史上初ではないだろうか。こんな光景は二度と見られないだろう。いい経験をさせてもらったと思う。

第4支部「春の会」

令和5年5月17日
サミットが近づきクリニックの周辺には警察官の姿がいっぱい見られるようになった。通勤の道にも交差点にも必ずいて、広島の街は今が一番安全なのではないだろうか。コロナも5類に変更になってマスクも不要になった。暑い日が続くのに意味のないマスクをするのは身体によくないのでいいことである。そうした中で3年ぶりに中区医師会第4支部「春の会」がアンデルセンで開かれた。
久しぶりに会う先生方ばかりでそれぞれの近況を話すのを聞いていると、このような会合は必要だと思った次第である。驚いたのは出席者の中で自分は上から4番目の年齢になっていることだった。今から25年前に初めて参加した時は一番若手のグループの中にいたのにいつの間にかこうなってしまった。そのころ先輩だった先生方は亡くなられたり、子供さんが後を継いだりでほとんど来られなくなってしまった。そう思うといっそう感慨深い会になった。

ジブリパークとジブリ展

令和5年5月9日
連休には甥の結婚式があったので神戸に行き、ついでに神戸市立博物館で開催されていたジブリ展に行ってみた。「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」などのキャラクターの実物大の展示があり楽しませてもらった。特に湯婆婆(湯バーバ)の迫力には圧倒された。
宮崎駿氏の子息、宮崎吾朗氏が中心になって「三鷹の森ジブリ美術館」を作り、愛知県長久手市で行われた愛・地球博のパビリオンとして「サツキとメイの家」の建築を手掛け、さらに引き続いてジブリパークとして展開し始めている。2,022年11月「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」の3エリアがジブリパークの第一期としてオープンしている。「もののけの里」「魔女の谷」は今年の秋から来年の秋にかけてオープンする予定だそうだ。いずれにしてもぜひ一度は訪れてみたいテーマパークである。
甥の結婚式も終わるまでは雨も降らず楽しいひと時を過ごすことができていい連休になった。

「なぜ私たちは存在するのか」

令和5年4月27日
表題は京都大学医微生物研究所の宮沢孝幸准教授の最新の著作である。「京大おどろきのウイルス学講義」「ウイルス学者の責任」に次ぐ第3冊目のPHP新書で、これまでの氏の学者として生きてきた軌跡をなぞりながらウイルスとはどういうものかを丁寧に述べている。難しい部分も多いが全体でみると「ウイルスと生物との関係」が少しずつ理解できて面白く読ませてもらった。本物の学者はすごいなと感心させられたのもうれしいことであった。ウイルスはなぜ存在するのか、生物はなぜ生まれたのかという根源的な疑問を考えさせられる。ウイルスを作ることはできるが排除することは難しいことが理解できる。
武漢ウイルスが広がり始めたころから、氏は「これを防ぐことはできないし日本人にとってはそんなに恐ろしいウイルスではない」と述べていた。また、「新型ワクチンは危険だから使うべきではない」とも述べていた。その言葉通りワクチンを打っていなかった2,020年は超過死亡がマイナスだったのに、ワクチンを打ち始めた2,021年から超過死亡が増えてきて2,022年には信じられない超過死亡になっている。そのことについては厚労省は知らんふりをしているし、マスコミも何も言わない。あれだけコロナが怖いと煽りまくり、ワクチンを打たないのは罪だと言わんばかりに打たせまくり、人々の行動制限や無駄なマスクをさせまくった責任をだれも取ろうとしない。氏の著書ではそのことに一切触れていないが、行間から強い怒りが読み取れる。氏はウイルス学者として人々のために適切なことを言ってきたけれど、声の大きい人たちやマスコミ、委員会などの前では正しいことが通らず結果的に多くの人が犠牲になったことに対する深い悔しさが感じられる。
太平洋戦争に突入した時も、一部の知識人や一部の軍人は「戦争はすべきでない」と訴えていたけれどマスコミをはじめ声の大きい多くの人に押し切られて多大な犠牲を払った。同じ図式である。この国は変わらない。

マイナンバーカード

令和5年4月20日
遅ればせながらマイナンバーカードを取得した。健康保険証と銀行口座が紐づけされて、それにより2万ポイントのご褒美がついた。政府はよほどマイナンバーカードを作らせたいらしいが、国民のほとんどは必要性を感じていないためいっこうに普及しなかった。そこで①作った人にはお金を2万円(2万ポイント)やる②健康保険証はなくしてマイナンバーカードのみにするというアメとムチ作戦で普及を図っている。
最も困るのが我々医療機関で、顔認証カードリーダーを義務付けられてしまった。それがイヤで閉院した施設もあるという。
時代の流れはマイナンバーカード必須になっていくのだろうが問題は個人情報の流出である。どんなにセキュリティーを厳重にしてもハッカーは情報を盗む。今後はいつもそのことを念頭に過ごさなければならないだろう。尤もSNSなどから情報がたどれるし、ヒトは承認欲求が強いから自ら情報公開することも多いので何とも言えないけれど。インターネットによって時代は大きく変わって行くのを目の当たりにしているのが我々の世代である。

会合の復活

令和5年4月13日
コロナの5類感染症への移行に合わせて様々な会合が復活している。「広島の産婦人科を考える会」という元産婦人科医会会長を中心にした集まりがあり、年に数回集まって飲み食いしながら語り合っていたが、コロナのためにほとんど行われなくなっていた。この度久しぶりに行われたがやはりこのような会合は必要だと思ったことである。情報交換は必要だし何より顔を合わせて話すのは楽しいことである。
地区の会合も復活するようだし、今までと同じように直接コミュニケーションができるのはありがたいことである。昨年の日本人の過剰死者数は最大だったというが、ワクチンの副作用のせいだと言われ始めている。マスクに手洗い、三密を避けろというまったく意味のないことを提唱した「専門家」は反省し国民に謝罪すべきである。まして飲食店に「アルコール禁止」を言い出した某知事などは重罪である。厚労省はすべてきちんと検証して有用だったことと無効だったこと、間違っていたことを報告して今後に生かさねばならない。そうでなければ存在意義がないと思う。
マスクをして外を歩いているのは日本人だけで、最近いっぱい見かけるようになった外国人旅行者はみんなノーマスクである。恥ずかしいと思うのは自分だけだろうか。

朝晴れエッセー

令和5年4月6日
表題は産経新聞の一面に毎朝載っているエッセーで、一般読者からの作品であるがなかなか面白いのでいつも初めに読んでいる。600字くらいの文章に投稿者の人生が詰まっている内容のものがみられ、しみじみ考えさせられることが多い。
今日のエッセーは66歳の男性の書いた「お古」という題の作品で、三男に生まれた作者は小学1年から高校卒業まで新しい制服を買ってもらったことがなく、いつも兄たちのお古を着ていたという。中学生の制服もみなと並んでみると自分だけ色が剥げたようで、いやだったらしい。「お古」という言葉は自分にはトラウマのように響くという。自分も男ばかりの三男坊であるがあまりお古を着た記憶はないけれど、学校にあがる前の普段着はお古だったかもしれない。
別の日の「母の贈り物」は72歳の女性の作品で、自分たちの金婚式を祝って母が大きな花束を贈ってくれたことを母の人生をサラッとなぞりながら書いている。いずれも含蓄のある内容でこのコーナーの一層のファンになった。

桜満開

令和5年3月30日
暖かい日が続き桜満開になった。平和公園でも昼は弁当を広げて花見を楽しんでいる人が多く見られる。川沿いの桜も咲き誇って道行く人を楽しませている。比治山も黄金山も桜満開である。まことに我が国は春の訪れを桜で祝うことができてうれしいことである。桜をテーマにした歌は数多くあるが大抵はヒットしているようだ。森山直太朗の「さくら」福山雅治の「桜坂」スピッツの「チェリー」コブクロの「桜」ケツメイシの「さくら」などが人気の曲だそうだが、我々の世代ではやはり「さくら、さくら、やよいのそらは…」が懐かしい。
そういえばかつて大学入試の合格発表はキャンパスに番号を書いた紙が掲示されて、それを見ないと合否がわからなかった。だから地方から東京や京都の大学を受験した人は、合否を知らせてもらう学生アルバイトに頼んでいたものである。電報で知らせてもらうが合格なら「サクラサク…」という文言が多かったし、不合格なら「サクラチル…」だったようだ。桜は我が国にとってなくてはならないものになっている。