令和6年1月26日
表題は養老孟司氏が1994年から2,000年にかけておこなった7題の講演をまとめて掲載したものである。氏の物事の本質を捉え、わかりやすい言葉で伝える力は素晴らしく、いつも感心しながら読んでいる。
なぜ解剖学を選んだかから始まって、物事を深く考える習慣ができ、引っかかったことがあれば徹底的に考え続け、それまでの膨大な知識を使って納得する答えを出す。氏の書いたものを読むといつも納得させられることが多く、新しい本が出ればすぐ買って読むことにしている。
氏は考えるだけでなく身体を動かすことも同じように大切で、自然に触れることをいつもおこなっている。東南アジアに虫捕りに行くのも趣味であり氏にとっては大切な時間だろう。小学生たちと虫捕りに行って、子供たちに自然と触れ合う経験をさせることもしている。
世界の宗教の成り立ちとその意味についての考察では、都市化が進んだから宗教が必要になったのだいうが、なるほどと大いに納得した。
氏の名前は孟子から採ったそうだが、まさに多くの人々を啓蒙した孟子のように現代人に大いに影響を与える偉大な思想家だと思う。
月別記事一覧 2024年1月
「自分は死なないと思っているヒトへ」
緊急避妊ピルについて
令和6年1月18日
今まで医師が処方しなければ手に入らなかった緊急避妊ピルが薬局で簡単に買えるようになるという。ユーザーにとっては便利になったと思うだろうが、ちょっと待ってもらいたい。
緊急避妊ピルはレボノルゲストレル(黄体ホルモン)を1.5mg飲むことで、排卵を遅らせるか少し抑制することで避妊をはかるものである。だから排卵後はもう飲む意味がないし、排卵が1週間以上先なら飲む必要がない。妊娠する可能性が一番高いのは排卵日、排卵の1日前、2日前でおよそ30%と言われている。3日前、4日前と次第に妊娠率は下がり、1週間前でほぼ0%、さらに排卵後数日で妊娠できなくなる。なので薬局で買えるようになると、飲む必要のない女性も飲むようになりムダが増える。
加えて緊急避妊ピルの避妊効果は一番危ない3日間の30%を10~20%程度に抑えるだけなので、失敗することも起きる。でもユーザーは緊急避妊ピルを飲めば大丈夫と思っている。
排卵が近いのかもう排卵してしまっているのかは、経腟超音波で見ればわかる。だから受診すればその判断をしてあげられるのにと思うわけである。
「南海トラフ地震の真実」
令和6年1月12日
表題は中日新聞社の記者、小沢慧一氏の著書で昨年本書で菊池寛賞を受賞した。静岡県から九州沖にかけてマグニチュード8~9の巨大地震が30年以内に80~90%の確率で起きるとされている「南海トラフ地震」、実はこの地震の発生する確率の根拠がいい加減なものであることを、綿密な調査と検証で突き止めたのがこの著作である。
昔から政府は防災の観点から地震予知の研究に予算をかけ続けてきたし、世界中の研究者も研究を続けてきたが、残念ながらはっきりしているのは現時点で予知は出来ないことである。「南海トラフ地震」については、確立が高いという方が防災の予算もおりるから行政はそのように考え、それを忖度した地震学者は黙ってしまう。そもそも時間軸モデル自体が仮説であるし、土地の隆起の値があやふやなのにそれを基に計算しているために正しい予測とは言えないという。時間軸モデルを使っても20~80%と幅があり、答申ではそれを出そうとしたけれど行政側に止められた?経緯がある。
実際は寺田寅彦の「天災は忘れたころにやって来る」が正しいのである。
謹賀新年
令和6年1月4日
明けましておめでとうございます。
初詣も終えて夕方から早々とアルコールを嗜もうと思っていたら能登の地震の速報が入った。なんということだろう。マグニチュード7,6という大きな地震、正月早々大変なことが起きている。少しでも被害が少ないことを祈るしかない。
1月2日は長女一家と長男一家がわが家に集まって宴会、孫たちが一緒に遊ぶのはいいものである。コロナの軛が消えてよい一年になることを喜んだ次の日、羽田での旅客機と海上保安庁の飛行機の衝突事故が発生。TV画面での火を噴いて陸走する旅客機を見ると、これはダメだと思ったが全員無事に脱出できたと。よかった。でも海上保安庁の乗員は一人を除いて全員亡くなったという。なんだか今年の我が国の運勢を予言しているようで暗い気持ちになる。
気を取り直して今日から診療開始である。皆さん今年もよろしくお願いします。