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メタボな日々

平成26年2月13日(木)
寒い日が続くが今がピークで一進一退しながら暖かくなっていくだろう。早く暖かくなってほしいものだ。腰痛が再発してからはほとんど運動をしていない。もっぱら歩くだけである。それでも昼の食事も夜の晩酌量も変わらないので、体重こそ増えてはいないが筋肉が脂肪に置き換わっているように感じる。まさにメタボである。
メタボ、高血圧といえば、東海大学医学部元教授の大櫛陽一氏による日本全国70万人の健診結果の分析から、血圧は年齢と共に上昇するのが正常であり、160/100mmHgまでの人は死亡率が最も低く、現在の基準値140/90mmHgまで下げると逆にリスクが上がる。治療が必要なのは180/110mmHgを超える場合で、それ以下で降圧剤を使うと脳梗塞のリスクが上がるので高齢者には原則として降圧剤を投与してはいけないそうである。
また、高脂血症でコレステロールを下げる必要があるのは、男性の家族性高脂血症の人(0.1%)だけで、それ以外の人は治療の必要がないとのことである。男性でも女性でも悪玉コレステロールと呼ばれるLDL-Cが高い方が脳卒中が減少し、死亡率が下がっている。さらに統計上、日本人はやせているより太っている人の方が長生きをしているという。このデータを知ればメタボも捨てたものではないと思うが、腹が出ているのはみっともないので少しでも減らしたいと思うものである。

緊急避妊ピルについて

平成26年2月7日(金)
当院には緊急避妊ピルを求めて来る人が結構いるが、いつも説明することは、緊急避妊ピルの妊娠阻止率はそれほど高くないことである。従来行われていたヤツペ法は、中用量ピル(プラノバール)を性交後72時間以内にまず2錠内服し、12時間後にさらに2錠飲むことにより妊娠を阻止するというものである。実際の阻止率は文献によってかなりの違いがあり、それほど高いものではない。最近ではLNG法といって、黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を2錠内服するだけでヤツペ法より阻止率がやや高く、副作用(吐き気)の少ない方法が承認された。
どちらの方法も機序は不明であるが、排卵を遅らせるか抑制するということなので、排卵後に内服しても効力はきわめて低下する。ヤツペ法で使うピルは値段が安いので負担が少なくてすむのだが、LNG法で使う薬はあまりに値段が高いので当院では扱っていない。いずれにしても確実な緊急避妊法はないということである。一方、低用量ピルを普段から内服していると非常に高い確率で避妊ができる。副作用も少なく副効用(生理痛の改善、生理の量の減少、生理の時期のコントロールなど)も多いので薦めている。

すばらしい発見「STAP細胞」

平成26年1月31日(金)
理化学研究所の若き研究員、小保方晴子氏による研究は世界中に衝撃を与えた。一旦分化した細胞が外からの刺激で初期化するということは、哺乳類ではあり得ないとされてきた。ところが小保方氏は、マウスのリンパ球を弱酸性の溶液に浸すだけで細胞の初期化が起こることを発見したのである。たしかに植物では挿し木や接ぎ木でも見られるように、切断という刺激により細胞が初期化する。動物であれ植物であれ細胞という「命」ということには変わりないので、刺激により初期化する可能性はあるのだろうが、柔軟な思考がなければ思いつかないだろうし確かめようとも思わないだろう。若き研究者の小保方氏は、世界の常識を覆して哺乳類での初期化を証明してみせた。素晴らしいことである。
医学も含め、生物学は未知なことだらけである。暗闇の中でゾウのしっぽを触るようなもので、生命の神秘は深くて大きい。

二水会の講演

平成26年1月16日(木)
広島市を中心とした産婦人科医師の勉強会「二水会」で高知大学形成外科講師、栗山元根氏の講演があった。帝王切開などの手術の創部をきれいに縫合する技術の講演で、実際に豚の皮を使っての実演があり興味深く聞いた。
「二水会」は母校の大先輩が広島市民病院勤務の時に始めた勉強会で、毎月第2水曜日(第3水曜日のこともある)いくつかの病院が順番に当番幹事になって行われてきた。最近は2カ月に1回になっているが、今回で319回!という非常に長く続いてきた会である。興味深い話も聞けるし、講演の後の懇親会が情報交換、親睦を兼ねているのでできるだけ出席するようにしている。この会に参加してもう23年になるが、初めの頃は年上の医師が多かったのがいつの間にか自分が結構年配になってしまっている現実がある。まことに月日が経つのは早いものだと感じた次第である。

製薬社員の子宮がんワクチンの論文

平成25年12月12日(木)
報道によると子宮頸がんワクチンを販売する外資系の製薬会社の社員が、同社の所属を示さず、講師を務めていた東京女子医大の肩書のみでワクチン接種の有用性を紹介する論文を発表していたことがわかった。この論文は、ワクチン接種の費用が多くかかっても、発症や死亡をおさえることによる利益が上回るとした内容である。これらの論文を参考にして厚労省はワクチン無料接種の方針を打ち出したという。
製薬会社が自社の製品を、たとえ法外な値段でも利益のために売ろうとするのはあたりまえである。問題なのは、このワクチンが本当に癌による死亡を減らすことができるのか不明のまま、学者や官僚、政治家がこのワクチンを導入したことである。さらに、万が一効果があるとしてもワクチンの法外な値段になぜ異を唱えないのか。国民の税金を使ってたいした効果も期待できないものを焦って導入したあげく、副作用が想像以上にあったので一時中止にするとは。二重の意味でスカタン(古い言葉です)である。
現在、ワクチン接種が中止されていることは同慶の至りである。

妊娠中の蛋白尿について

平成25年11月29日(金)
北海道大学産婦人科教授、水上尚典氏の表題の講演があった。以前は妊娠中の蛋白尿、むくみ、高血圧を妊娠中毒症といっていたが、現在は妊娠高血圧症候群という病名になり、高血圧と蛋白尿を症状とする疾患として対処されている。この疾患の怖いのは、胎盤の早期剥離がおきることで、そうなれば胎児ばかりか母体の命も危いことである。
人間の体はバランスが大切で少しでもバランスが崩れると取り返しのつかないことになる。ある域値まではなんとか正常に働いているが、域値を超えて症状が進むと回復不可能になる。妊娠によるこれらの病態は妊娠を中止すること、つまりお産にもっていくことで治るのであるが、域値を超えてしまうとそれでも回復できなくなる。蛋白尿が先行して高血圧になる場合は妊娠高血圧腎症になりやすく、妊娠中の蛋白尿を軽く見てはダメである。
多くの妊娠は順調に経過するので、いたずらに心配することはないが一旦バランスがくずれてしまうと上記のような事態になるかもしれない。妊娠、出産は最も大切なめでたいことであるだけに危険と隣り合わせで、よりいっそうの慎重な対処が必要だと思ったことである。

ホルモン補充療法の勧め

平成25年11月1日(金)
東京歯科大学市川総合病院産婦人科教授、高松潔氏のホルモン補充療法(HRT)についての講演があった。氏はわが国のHRTガイドライン作成の責任者である。更年期を過ぎると女性ホルモンが出なくなり、自覚することは少ないかもしれないが全身さまざまな部位で老化が進む。これを防ぎQOLを高めるために、以前より女性ホルモンを補うHRTが欧米を中心に行われており、アメリカでは20世紀後半には600万人の女性が使っていた。
ところが、WHIなどの検定でその効果が疑問視され、一時使用が控えられていた。それでも更年期障害の治療には最適であり、骨粗鬆症を防ぐにも有効なので世界中で様々な大規模検定が行われその結果、使用開始時のきちんとした検査とフォローがあれば、QOLを高めるためにも使用を勧めるとの結論が出た。氏は大学の関係で歯科の医師たちともつながりがあり、HRTは顎骨の骨密度を増やし歯が抜けるのを防ぐという。
20年以上前からHRTは理にかなったすばらしい方法だと思い勧めてきたが、上記の流れで一時控えていた。これからは意を強くして大いにHRTを勧めていきたいと思う。

近藤理論への反響

平成25年10月25日(金)
近藤誠医師の「医者に殺されない47の心得」は100万部のベストセラーになり、同時期に出版された「余命3カ月のウソ」「抗がん剤だけはやめなさい」「がん放置療法のすすめ」なども合わせると今、最も影響力のある本である。近藤氏が1996年に著した「患者よ、がんと闘うな」以来、一貫して世界中の論文、データ、自身の診療からの経験を通して訴えていることは、患者さんを治そうとすることがかえって苦しめることになっている事実に警鐘を鳴らしていることである。医学界からは反論はあったが、近藤氏の緻密な理論を論破できず「無視」をきめこんでいた。
最近、新潮45、11月号に掲載された西智弘医師の「近藤誠はなぜ売れるのか」という文章を読んだ。西氏は近藤理論をほぼ否定しており、「抗がん剤は効く」と主張しておられる。問題なのはその根拠が、自分の経験では○○さんには効いたという実例をあげての理論で、近藤氏のデータと論文をきちんと分析したうえでのそれと比べると説得力がないことである。
新潟大学名誉教授岡田正彦氏の「医者とクスリの選び方」を読むと、近藤氏とほぼ同じことを述べていることがわかる。曰く、「がん検診は有効でない」「抗がん剤は効かない」「健康診断、ドックは長生きに無関係」「薬をたくさん出す医者は要注意」など、近藤氏の主張を代弁しているかのようである。真実というものは変わらないものだと思った次第である。

子宮内膜症にはピル!

平成25年9月12日(水)
滋賀医科大学、村上節教授の講演があった。子宮内膜症の治療が難しかった症例について、反省をまじえながら検討されていて興味深い話であった。最近では子宮内膜症を手術した後は、ピルを含めたホルモン投与が勧められるようになったが、少し前は術後にピルの投与は行われていなかった。せいぜい高価な6カ月しかつかえない月経を止める注射・点鼻薬を投与するぐらいであった。わが国でピル(低用量ピル)が解禁されて15年になるが、当院では初めから子宮内膜症にはピルが最良だと考えて処方していた。その頃からずっと病院で子宮内膜症の手術をしたのに内膜症が再発した患者さんを見るにつけ、なぜ術後にピルを勧めないか歯がゆく感じていた。やっと術後のピルが一般的になったのは喜ばしいことである。
子宮内膜症の本質から考えれば、ホルモンレベルを下げて月経の量を減らすことが大切である。それを達成するためにいくつかの方法があるが、安全・手軽・経済的負担の少ないのはピルであることはだれが考えてもわかることだと思う。わが国でなぜもっと早く奨励されなかったのか不思議である。

子宮頸がんワクチンの副作用

平成25年6月27日(木)
厚労省は「子宮頸がんワクチンの接種を勧めることを控えるように」との勧告を出した。めでたいことである。
そもそもこのワクチンについては不確かなことが多いにもかかわらず、バックにWHOを従えた巨大外国製薬会社のロビー活動と相まって世界の国単位で接種する流れになっているものである。国が接種を決めれば毎年数百億円の税金が外国製薬会社に支払われる。以前にも書いたが、わが国のワクチンのプロが有効性を疑問視しているにもかかわらず、ワクチンの効果を一途に信じているこころ優しき医師を含めた専門家たちが値段が法外であることに気付かず接種を推進している。喜ぶのは外国製薬会社だけである。
以前、インフルエンザ騒ぎの時にわが国は世界中のタミフルの大半を買って備蓄した。タミフルにも色々問題はあるが、買い占めた薬のほとんどは使われず期限切れになることがわかり、なんと使用期限を5年から7年に延した。おそまつな話である。この費用も税金からで莫大なお金が外国製薬会社(スイス→アメリカ)に支払われた。わが国からお金を吸い上げようと考える外国企業にとって、赤子の手をひねるようなものだろう。実に歯がゆいことである。