免疫システムと妊娠

平成26年3月7日(金)
生物のしくみは実にうまくできているが、その中でも免疫システムの精密さは驚異的である。我々の体に異物(細菌、ウイルス等)が侵入したら、即座に「貪食細胞」や「NK細胞」が反応する。これらは前線部隊で、後に控えた「B細胞」「T細胞」が救援に向かう準備を始める。「B細胞」は抗体を作り異物を無力化し「T細胞」はウイルスや病原体が入り込んだ細胞を攻撃する。準備には数日かかるがほぼどんな異物にも対応できるようになっている。
問題はこのシステムが精密すぎると「自己」を攻撃するようになることである。成人の細胞は変異遺伝子が貯まってくるので「変異ペプチド」ができて、これらのシステムに攻撃される可能性が起きる。そうなれば自分で自分を滅ぼすことになるので、寛容さも必要である。その代表的なものとして「制御型T細胞」があり免疫反応を抑制する。これらの絶妙のバランスで免疫システムは成り立っているのである。
妊娠するためには、精子という異物が免疫システムに攻撃されず体内に入り、卵子と結合(受精)しなければならず、その後も半分の遺伝子は異物なのに子宮内で胎児として育たなければならない。胎児を攻撃しないようにするために「制御型T細胞」が大きな役割を果たしているらしいが実にうまくできている。生命のしくみはまことに興味深いものである。