生物には「むだ」がない

平成26年4月17日(木)
先日の新聞に、大阪大学の研究によれば、いままでは退化器官で必要がないと思われていた虫垂に腸内の免疫をつかさどる役目があることがわかった、という記事があった。学生時代には虫垂は退化器官でいずれ無くなるだろうと教わった記憶がある(ニワトリの虫垂は大きくて消化に役立っているようだとも教わった)。
必要のないものなら無くなっていてもいいはずの「虫垂」があるのは不思議であった。きっと何かの役割をはたしているはずだと思っていた。だから、帝王切開や子宮筋腫の手術の際、「これから先に虫垂炎が起きないように盲腸(虫垂)を取っておきましょうか」と好意で患者さんに話す先輩医師の言葉に違和感を持っていた。かつては虫垂切除は最もポピュラーな外科手術であり、多くの人が虫垂切除術を受けていたがこれからは慎重にならざるを得ないだろう。
生物が種として生き残る時、ムダなものをかかえられる余裕はないはずである。生存競争はそんなに甘くない。現在ある器官は、たとえそれがどんな役割を果たしているのかわかっていなくてもすべて必要なものであると考えられる。手術による器官の切除は慎重のうえにも慎重にするべきである。