月別記事一覧 2006年7月

治療法の変遷

平成18年7月29日(土)
医療にも流行があり、当時はやっていた治療法だったけれども効果がないことがわかったり、もっと優れた治療法ができたためにすたれてしまったものも数多く見られる。
たとえば子宮後屈に行われていたアレキサンダー手術。かつては生理痛、腰痛の原因は子宮後屈にあるといって後屈を治す(子宮を支えている靱帯を引っぱりあ げるだけであるが)手術を行っていた。私が医者になった頃はまだ少しは行われていたが、後屈と腰痛は無関係と言われるようになってからは、あっという間に だれもこの手術をしなくなった。ではそれまでに手術をされてしまった患者さんはどうなのだろうか。後遺症などの実害はほとんどない手術とはいえ、そのため に入院した時間および手術をうけるストレスおよびお金はむだになったのである。
無論、当時は世界的にその治療法が正しいと信じられていて、欧米へ留学して彼の地で行われている治療法を学んで帰った優秀な先人が我が国に紹介し、広まっ ていったのだろう。そのことをあしざまに言うことは決してできない。なぜなら現在正しいと思われて行われている治療の中には将来になって無駄、あるいは間違った治療法であることがわかってやめてしまうものが必ずあると思われるからである。だからといって目の前に苦しんでいる人がいても、なにもせず手をこま ねいているわけにはいかない。だからいつも心がけておくことは、この検査は本当に必要なのか、この薬は出さなくても良くなるのではないのか、本当に手術を した方があらゆる点から得なのか、などを常に自問しながら謙虚に治療することである。

風水害

平成18年7月24日(月)
このところ雑用が多く日誌をさぼっていたが、ちょっと落ち着いてきたのでぼちぼち書いていくことにする。
梅雨がなかなか明けず各地で大雨が降っている。土砂崩れなどで何人もの人が犠牲になって気の毒なことである。昔から地震かみなり火事おやじ、といってどう しようもなく恐いことの上位は自然災害であった。「おやじ」の方はちっとも恐くなくなった昨今であるが、風水害は思いがけないときに起きるので実に恐いも のである。水がないと作物は育たないがありすぎても困る。日本は台風の被害も毎年多いが、地理的に大陸の端に位置していることと、きびしい日本海のおかげ で外敵から守られてきたことも事実で、いいこともあれば悪いこともあるということである。

妊娠に気付かない?

平成18年7月19日(水)
女性が妊娠していることに気付かないことが本当にあるのだろうか?
妊娠女性を診察するのはいつものことだが、妊娠の事実を告げると「えっ!うそでしょう」と心底おどろく人がいる。そういう人には超音波の画像を見せながら 説明するが、妊娠の画像を見てもなかなか信じられない様子である。ほとんどの人は生理が遅れてつわりが始まったりして妊娠かなと思っているのでやっぱりそ うかという反応なのだが、たまになかなか納得されない人がいるのである。中には妊娠5ヶ月で胎動があるのに妊娠に気付かず、それを指摘すると驚く人もい る。
こんな時に思うのが、本当に気付かないのか、うすうす気付いていても認めたくないのかどうなのかである。妊娠初期なら気付かないこともあるかもしれない が、妊娠中期まで普通の女性が妊娠に気付かないのは不思議である。以前四国の病院に勤めていた時、「お腹が痛い」とのことで内科を受診して妊娠のようだか らと産婦人科にまわされてきた人は、妊娠9ヶ月の終わりで遠からぬうちにお産になったが本人は知らなかったと言う。本当に気付かなかったかいまだ疑わしい が本人がそう言うのだから仕方がない。実際のところどうなのか謎である。

医者の匙加減

平成18年7月15日(土)
患者さんの状態に対して医者によってずいぶん対処の仕方が違うものである。
最近セカンドオピニオンを求めてきた患者さんが二人おられたが、二人ともまったく同じことを言われて意見を聞きに来られたのである。自分ならそこまでの検査と治療をしないだろうと思われるケースだが、それ自体は間違いではない。たとえて言えば、街中は危ないからきちんとした服装とついでに傘も持って出かけ るか、そこまでせずふつうの服装でいいのかということである(あまり良いたとえではないが)。本当に必要なら重装備も良いが毎回ではたまらないだろう。色々考えさせられたことであった。

英国発のテニスとサッカー

平成18年7月10日(月)
ウインブルドンのテニスが終わった。自分としてはW杯よりもテニスの方が見ていて面白かった。なにより華麗な技がわかりやすくショーとしても楽しい。男子 は大方の予想通りフェデラー、女子はモーレスモが優勝した。男子優勝戦は世界ランキング1位のフェデラー対2位のナダルのすばらしい戦いであった。トップ レベルの選手の技術、運動能力はまさに芸術である。
サッカーは戦いを前面に出して全身で戦う格闘技ともいえるゲームだがテニスは華麗な技術を楽しむスポーツである。一方が荒々しい男の闘争なら他方は上品な 紳士淑女のスポーツである。異説はあるがサッカーもテニスも英国が起源らしいが、異なった二種類を同時に生み出したのは興味深いことである。

北朝鮮のミサイル

平成18年7月5日(水)
朝から北朝鮮によるミサイル発射のニュースが飛びかっている。はじめは4発と言っていたのが最終的には7発発射したそうである。
近隣にぶっそうな国があるのはかなわないが、人間は太古よりいつも争ってきた。今も世界中のどこかで争いがおこっている。きっと人間を含め生き物は自分の テリトリーを守ったり広げたりする本能があり、そのために争わなければならない宿命があるのだろう。わが国は昔から他国と隔絶しており他国との争いは少な かったので、国内でどうしたらうまくやっていけるかが最も大切なことであった。そしてそれをうまくやってきた歴史がある。でもこのやり方は日本という独特 の社会があってはじめて成立したことで、国同士では絶対に無理だろう。いざとなれば我々も戦わなければならないだろうが、争いは大きな犠牲を生むだけであ る。どうすればよいのかわからないというのが正直なところだ。

激しい雨

平成18年7月1日(土)
なんと!もう7月(文月)である。朝から激しい雨で道路に水溜りができて川のようになり、横断歩道を足をぬらしながら渡っている人もいた。まことに迷惑な雨である。
尺八を吹いていると呼吸法がいかに大切かを感じるが、ジャズと尺八の名演奏家である中村明一氏が「密息」という呼吸法について紹介していた。西洋人と異な り日本人の昔からの呼吸法で、実に理にかなっている。機会があればここでも紹介してみたいが、しばらくはこの呼吸法を実践してみようと思う。