月別記事一覧 2006年6月

磯田道史著「殿様の通信簿」

平成18年6月27日(火)
磯田道史著「殿様の通信簿」という本がある。ベストセラーとなった「武士の家計簿」の著者の作品であるが前作と同様に古文書をもとに江戸時代の各地の「お殿様」に対する幕府の評価と実際のところはどうだったのかなどを記していて面白い。
時代劇などで大奥で寝泊りして昼はあまりすることがないのでボーっとして過ごしている「バカ殿様」が描かれているが、それは事実だったらしい。無論全部の 殿様がそうではなく一部ではあったようだが、実際お家を存続させるためには「殿様」はお家の象徴であり、なまじ政治に口出したりせずそういうことは優秀な 部下たちにまかせて子作りに励んで習い事でもしておいたほうがよかったのである。だから「能」好きな殿様が実に多かったそうである。
考えてみれば「殿様」はあまり面白くなかったのではないだろうか。お家を創るまでは実力も運も必要で、うまく「お家」ができるのはまさに僥倖でありそれだ けに喜びも大きかっただろう。しかしひとたび「お家」が確立してしまえば「お家の存続」だけが必須となり、前記のようなことになるのである。これは武士の 世界に限らず商人の世界でも同じようで、「船場」のことを描いた山崎豊子の小説を読めば、戦前までの「老舗」の存続のさせ方は武家の「お家」の存続のさせ 方と実によく似ていると思うのである。

薬害C型肝炎

平成18年6月24日(土)
先日フィブリノーゲンによるC型肝炎の判決が出た。被害者救済はなによりも迅速に行わなければならないが、血液製剤による感染の問題は将来も起こり得ると思う。
エイズにしてもC型肝炎にしてもウイルスの存在そのものがわからない時期があった。その後それらのウイルスの存在と血液を介して感染することがわかったと きには遅かったのである。厚労省や製薬会社の対応が遅かったのは問題であるが、どんなに早く対応しても100%は防げなかっただろう。むろんエイズウイル スの感染をひきおこした非加熱製剤の問題は決して許されるべきでなく、慾と金のからんだ犯罪と同等であるがそうではなく誠心誠意治療していて知らずに感染 させていることがあるかもしれないのえある。たとえば私が小学生の頃はツベルクリンテストで一本の注射器を何人もの生徒に使いまわしていた。確率は低くて もウイルスの感染が起こっていたかもしれないが、当時はその可能性を考えたこともなかっただろう。
今我々ができることは、歴史に耐えていない薬や血液製剤を使うときはその製剤について常に新しい情報を取り入れ、絶対必要でないかぎり軽々しく使わないようにすることである。

アンケート(仕事と育児)

平成18年6月19日(月)
ここ数日は夏を思わせるような日差しである。梅雨明け宣言が出てもいいような天気が続いている。今年は季節の変わり目が短いように感じる。
最近、出身の医局から産婦人科の女性医師が増えているが仕事と育児の両立についてどう思うかとのアンケートを求める書簡が来た。男性医師に対して行われた もので、夫婦の間で育児をどのように分担しているか、家事その他はどうか、お産で夜呼ばれた場合どうするのか、などていねいな調査である。この問題は医師 に限らず全世界の女性にかかわる問題であり、育児の負担をいかに仕事に及ばないようにするかということである。基本的には子供が乳幼児のときは母親がより 必要だし、思春期以降の男の子には独立心をうながす意味でも父親の存在はより大切だろう。かつて一般的だった祖父母、両親、子供が同居していた時代には、 昼間はおばあちゃんが孫の面倒をみてその間母親は農業などで働き夜になると育児をした。おそらくこれがいちばん自然で無理のない方法だと思うが、今の核家 族では難しいだろう。なかなかうまい方法がないというのが現実ではなかろうか。

大敗のW杯第1戦

平成18年6月14日(水)
残念ながらと言うかやはりと言うべきかW杯第1戦は大負けだった。次回からなんとか頑張って欲しいが、サッカーの時だけ応援してもパワーが出ないのは当然 である。竹島問題、尖閣列島問題、基地の問題、北方領土問題など国民が本来憤るべきことに何の関心も示さないでスポーツだけ頑張れなどできるはずがない。 これらの問題に対して他国はどれほど激しい反応を示すか。かつて英国がフォークランド紛争に対してどれほど反撃したか。まさに国を挙げて戦う姿勢を見せ た。これが本来の国のあるべき姿だろう。もちろん日本は「和」を大切にする国だからそれを掲げて独自の道を進めばいいが「強さ」は絶対に必要である。なん とか少しでも本来の国の姿に近づいて欲しいと思う人も多いと思うのだが。

W杯は代理戦争

平成18年6月10日(土)
W杯が始まった。こういった世界の大会の時になるといつも日本と他の国の違いを感じてしまう。
オリンピックにしても「参加することに意義がある」などの言葉を半分以上まじめに考えているのは日本ぐらいなものではないだろうか。そもそもオリンピック が、国家間の争いがあまりにも多いので少しでも緩和させようとして創られたいわば国家間のガス抜きであることは常識である。だからお祭り的な要素は大きい が同時に国家間の代理戦争の面があるのも否めない。かつてのソ連をはじめ東欧諸国はメダルを多く取るために国家を挙げてあらゆることをした。代理戦争の面 があるのだから勝たねばならないから当然のことである。今でも世界の国々や選手はそういう意識で戦っているのではないだろうか。ドーピングチェックがあれ ほどきびしいのもそれだけどんなことをしても勝とうとする選手、コーチが多いということである。
わが国ではおそらく親睦第一でメダルがとれたらうれしいが頑張ったんだからいいぐらいの意識ではないだろうか。W杯にしても他国の応援のすごさはまさに代理戦争であることを感じさせる。「和をもって貴しとなす」わが国としてはどうしても代理戦争であると意識できないのは当然である。

病気になった時に

平成18年6月7日(水)
人は病気になったとき、それが悪いものや治りにくい場合は特に、いい医師に見てもらいたいと思うのは当然である。たとえ信頼している医師からその病気につ いてのエキスパートを紹介されてもその医師の腕は本当にいいのか、人柄はどうか、自分のことをきちんと診てくれて過不足のない最良の治療をしてくれるのか など、不安はつきない。さらにその病気の予後はどうなのか、一般的には5年生存率は○○%というが自分についてはどうなのか、手術をすることになったら失 敗しないだろうかなど、不安は雲のように広がる。
私自身も以前手術を受けたことがありその時にいろいろ考えることがあったから、その気持ちはよくわかる。でも医師の側から見ると誰に対しても全力で治療をするし、紹介状があるから、付け届けがあったから、知り合いにたのまれたから、などの理由で差をつけることは絶対にない。医師は人の体を診るプロであり、 職人的な要素を持っていて、職人の部分では特に目の前の仕事は絶対に手を抜かずに全力でいい仕事をしようとする性(さが)があるので、相手がたとえ犯罪者であったとしても同じように手を尽くしてしまうのである。私の知る限り、まともな医師は全員そうだと思う。
ところが、日頃からそう思っている自分がいざ手術される立場になると、前記のような不安を感じるのであるから普通の人が不安を抱くのは当然のことだろう。だからこそ強調しておきたい、まともな医師は情実で差をつけないしつけられるはずもないことを。

今年もとうかさん

平成18年6月3日(土)
今年も「とうかさん」のゆかた祭りで、午後からは道行くゆかた姿の若い女性たちが増えてきた。天気もいいし今日あたりは最高の人出になるに違いない。ゆかた姿というものはなかなかいい。日本人にはいちばん合った装いではないだろうか。でもせっかくゆかた姿がきまっていて風情があるのに、女性同士大声でわめ くように話しながら歩いているグループもいていっぺんに興ざめする。やはり装いとマッチした雰囲気がいいのにと思う。
明日は当番医なので一日クリニックを開けておかねばならない。結局休みは来週の日曜日までお預けであるが、これはこれでけっこうきついことである。本当は休みたいのだが回り持ちなのでそうもいかないのである。