月別記事一覧 2014年6月

故宮博物院特別展

平成26年6月26日(木)
6月24日から東京国立博物館で台北国立故宮博物院所蔵の作品186点の公開が始まった。故宮博物院は一度は行ってみたいと思っていたが、なかなか機会がなくて気になっていた。10月7日からは福岡の九州国立博物館で行われるので、今回はそちらに行ってみようと思っている。
中国の歴史文化の粋ともいうべき作品のほんの一部でも、わが国で鑑賞できるのはありがたいことである。台北国立故宮博物院には、中国文化8千年の収蔵品があり、古代の青銅器から玉器、書画、陶磁、工芸品など65万点に及ぶという。北宋山水画、唐三彩、書、見たいものは山ほどある。今回の目玉というべき「翠玉白菜」は、写真でしか見たことがないが清・光緒帝の妃・瑾妃の嫁入り道具とされていて、白と緑の翡翠を材料に、キリギリスやイナゴを彫り込んでいる玉器である。残念ながらこの品は東京のみの展示で、九州では「肉形石」という玉髄と呼ばれる石の上面に毛穴のような点を刻して着色、トーロンポウそっくりの玉器が展示されるそうで今から楽しみである。

出生前遺伝学的検査の現状と課題

平成26年6月20日(金)
昭和大学の関沢明彦教授による表題の講演があった。わが国では結婚年齢の上昇に伴って高年妊娠・出産が増えている。母体年齢が上がれば流産率も増え、先天異常の割合も増えてくるので、出生前検査の確かさと安全性が求められる。かつては染色体の異常を見つける方法は羊水検査だけであった。この検査は、妊娠4か月の末頃にお腹から直接子宮に針を刺して羊水を採取し、羊水に含まれる胎児由来の細胞から染色体を抽出して調べるので、母体への負担が大きかったし時間もかかった。現在でも最終診断としてこの羊水検査は行われているが、その前にスクリーニングとして母体血による検査が開発されてきた。
妊娠時には母体血中(血漿中)に胎児由来のDNAが含まれていることがわかり、それを分析することにより遺伝子の異常がかなり正確にわかるようになった。血液を調べるだけなら羊水検査に比べれば負担が少ないので、希望者も増えると思われる。費用がかかることや100%の確かさはないことなど課題はあるが、技術の進歩は素晴らしいことである。

製薬会社と医師の関係

平成26年6月12日(木)
ノバルティス社の降圧剤のデータ改竄問題で、ノ社側から逮捕者が出た。東京地検特捜部が動いたためで、大学側も徹底的に追及されることだろう。製薬会社は薬を売るのが仕事だから、何とかして売ろうとする。今回のような問題は過去にもあったに違いないが、こんなインチキをしなくても本当にいい薬ならば使われるはずである。多くの医師は患者さんを治すために有効な薬を選んでいる。そしてベテランになればかなりの確率で良否を見分けることができるようになるが、今回のようにデータそのものを改竄した論文はタチが悪いと言わざるを得ない。
製薬会社と医師の関係は利益を共有する部分があるので深くなりがちである。医師側は、患者さんを治すために有効な薬を求めており、製薬会社は薬が売れれば儲かるという関係である。以前は薬価差益があったので薬を出せば医師も利益があったが、今はほとんどないのでその意味での利益の共有はないが、製薬会社にとっては売り上げを増やすことが一番なので宣伝・接待などの働きかけをする。医師にとってはいい薬かどうかだけがポイントである。だから製薬会社との付き合いは、できるだけ淡くすることが肝要である。

生理不順は病気ではない?

平成26年6月4日(水)
生理不順で来院される人が多いが、治療の必要なケースは少ない。かつては、生理不順だと妊娠しにくいから毎月生理が来るようにしなければならないと言われていたし、今でもその方針で治療している施設もある。確かに下垂体腫瘍や卵巣自体の異常など治療を要する場合もあるが、ほとんどは排卵自体が遅れる傾向のある卵巣か、ストレスなど精神的な問題によって起きていると思われる。
ストレス、うつ、摂食障害などによるものは、その原因を克服するしかないし、精神科の助けが必要になる。そしてこれらの原因がなくなれば自然に排卵は起きてくる。
排卵自体が遅れる傾向の卵巣をPCOタイプの卵巣(ガイドラインどおりではなく、そのいくつかの条件を満たすものである)と称しているが、このタイプの人の多いこと。排卵→月経は妊娠するために起きているので極端に言うと、年に1回しか排卵がなくても妊娠すれば問題ないのである。現に、ヒト以外の哺乳類は年に1~2回しか排卵しない種の方が多い。そしてPCOタイプの人がこれだけいるということは、生物学的に適者なのである。生物の世界はきびしくて適応能力のない種はすべて滅びている。だから体調に不都合なことがなければ、生理不順があっても治療しなくてもいい。適者に対して医者ごときが手出しをすべきでないという発想の転換が必要である。ムダなことはできるだけしない方がいい。