出生前遺伝学的検査の現状と課題

平成26年6月20日(金)
昭和大学の関沢明彦教授による表題の講演があった。わが国では結婚年齢の上昇に伴って高年妊娠・出産が増えている。母体年齢が上がれば流産率も増え、先天異常の割合も増えてくるので、出生前検査の確かさと安全性が求められる。かつては染色体の異常を見つける方法は羊水検査だけであった。この検査は、妊娠4か月の末頃にお腹から直接子宮に針を刺して羊水を採取し、羊水に含まれる胎児由来の細胞から染色体を抽出して調べるので、母体への負担が大きかったし時間もかかった。現在でも最終診断としてこの羊水検査は行われているが、その前にスクリーニングとして母体血による検査が開発されてきた。
妊娠時には母体血中(血漿中)に胎児由来のDNAが含まれていることがわかり、それを分析することにより遺伝子の異常がかなり正確にわかるようになった。血液を調べるだけなら羊水検査に比べれば負担が少ないので、希望者も増えると思われる。費用がかかることや100%の確かさはないことなど課題はあるが、技術の進歩は素晴らしいことである。