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緊急避妊ピルと人工妊娠中絶

令和4年11月24日
緊急避妊ピルを希望して来院される人が多いが、いつもお話しするのは「緊急避妊ピルはそれほど効果があるものではない」ということと、「飲む必要のあるのは排卵前で、排卵後や排卵1週間以上前は飲む意味がない」ということである。妊娠可能なのは排卵日前の最大1週間と排卵後1日くらいで、それ以外の時期の性交では妊娠できない。緊急避妊ピルは排卵する前に飲むことによって、排卵を少し遅らせるか抑制するだけなのである。排卵日に性交した場合の妊娠率は3割ちょっとぐらいなのだが、それを1割ちょっとぐらいにする程度である。
緊急避妊ピルを飲んだけれど妊娠した場合は、産むか中絶するかということになる。どちらも大変なことである。だから毎日飲む低用量ピルはほぼ完ぺきに避妊できるのですばらしいのである。我が国でも人工妊娠中絶が減ってきたのは、ピルが少しずつ普及してきたからだと思う。当院で中絶手術をした人にはピルを薦めるようにしている。

産婦人科治療の変遷

令和4年10月13日
産婦人科の治療はこの40年でずいぶん変わってきた。例えば「切迫流産」、これは妊娠初期から中期にかけて出血などの流産兆候があった場合の病名であるが、40年前は安静・止血剤・子宮収縮抑制剤の処方、入院も薦めるのが標準治療だった。その後、超音波検査が開発され予後がわかるようになってからは何もせず経過観察するようになった。以前は入院して安静・止血剤などの点滴が普通で、病棟にはそんな患者さんが多かった。今から思えばさぞ大変だったと思う。
生理痛のひどい人に対して子宮後屈が原因だといって後屈を治す手術(欧米で始まった手術)も行われていた。今は後屈が原因説は否定されているので手術された人は気の毒としか言いようがない。
他にも同じような例はいくつもあり医学はそのような試行錯誤を繰り返して進んできたのである。現在行われている治療も後になって間違っていたということはいくらでもあると思う。だからこそおかしいと感じる検査や治療はすべきではないしいつもそのような視点でガイドラインを見ている。たとえ周りが行っていても本当に将来にわたって患者さんのためになると信じられること以外はしない。この姿勢は一貫している。

コロナは普通の風邪になった

令和4年9月29日
新型コロナ第7波もおさまってきてやっと終焉を迎えたようである。周囲の多くの人が感染し、ほとんどは普通の風邪でおさまっているのをみると、オミクロン株以降はまさに「普通の風邪」になったようだ。
母校の先輩で病理・感染症・分子病理学の井上正康名誉教授、現代適塾塾長はコロナ騒ぎの初めから、厚労省や専門家と称する人たちの振る舞い、マスコミのあおりなどに対して警鐘を鳴らしていた。ウイルスの感染は防げないし、集団免疫も獲得できるからインフルエンザと同じように対処するしかない、mRNAワクチンは危険すぎるので使うべきではないと。
我が国ではコロナが蔓延し始めた2,020年の超過死亡は18,000人少なかったのにワクチンを打ち出した2,021年は70,000人以上が多く亡くなっている。2,022年はもっと増えるだろうといわれているが、原因はワクチン以外には考えられないという。
ファイザー社のワクチンに関しては、その内部資料を米国FDAが75年間隠蔽しようとしたけれど、裁判で敗訴して開示せざるを得なくなった。5万5千ページに及ぶ資料によると、治験者総数4~5万人で亡くなった人が千数百人、治らない重篤な副作用があった人が数千人、回復しつつある人が数千人、副作用の種類が1,291件とのことで、これがその時点で発表されたらだれもワクチンを打たないだろう。それでFDAは75年間非公開にしたことは医学倫理では考えられないことである。これからはワクチン後遺症に対処することが大切で、心ある医師たちは勉強会を開いて情報交換をしているという。なぜ本当のことを言う人の言葉は無視されてしまうのだろうか。ファイザーの公開した資料はわが国でも議論すべきだろうし、8億8千万回分のワクチンの契約は反故にできない。またも政府と厚労省はうやむやにするのだろうか。

人工妊娠中絶について

令和4年9月22日
人工妊娠中絶手術は産婦人科医が習熟すべき手術の一つである。まず掻爬術を習得しその技術を身につけたうえで手術に臨むが、お産と同じで何年たっても緊張する手術である。その後、吸引法が取り入れられてやや簡素化したようであるが、遺残した場合はやはり掻爬術の習熟した技術がないとだめである。掻爬の時に指先に感じる感覚が大切なのだ。
今から30年以上前にフランスのルセルという製薬会社がRU486という薬を作った。これは妊娠維持に必須のプロゲステロン受容体に作用して妊娠を止めてしまう働きがあり、妊娠初期なら動物実験ではほぼ完ぺきに妊娠を止めることができ、ヒトでもかなりの確率で効果が認められ、海外では使われるようになっている。我が国でも現在治験が行われていて近いうちに承認され発売されると思われる。問題なのは、いつ出血が始まるかわからないので、深夜あるいは仕事中に始まったらその痛みが強くても対応できる施設があまりないことである。24時間対応の分娩施設ならいいが、それも限られてしまう。また、遺残した場合は掻爬が必要になる。やはり、手術日を決めてきちんと麻酔をして掻爬か吸引した方が安心安全ではないだろうか。

更年期症候群

令和4年9月16日
閉経前後の10年間くらいに起きる更年期症候群は、のぼせ、ほてり、異常発汗、動悸、冷え性などの自律神経症状がメインであるが、精神神経症状や運動器症状も加わって、一人ひとり症状が異なる。女性全体では症状なく閉経を迎える人の方が多いけれど、深刻な症状のみられる人もいる。以前は漢方薬などを処方していたが、効果はあまりなかったので漢方の本を買い集め勉強してみたが、いっこうに効果がなかった。
その頃欧米ではホルモン補充療法が始まり、アメリカに留学していたD先生が帰国し、広島市民病院で治療を始められた。その時に薫陶を受けられたM先生が中電病院で始められ、その効果に驚いた自分も始めたわけである。
自律神経失調症は男性でも女性でも大人でも子供でもなるが、原因がホルモンの不安定によって引き起こされるのが更年期症候群である。ならばホルモンを補えばいいのは明白である。実際ほとんどの場合効果がある。我が国ではいまだに漢方薬が使われているようだが、欧米ではローカルドラッグとして承認されていない。日本人のホルモン怖い病も普及しない理由なのだろう。

低用量ピルの普及

令和4年9月8日
日本で低用量ピルが解禁されて20数年たった。初めは普及はゆっくりだったが、今では健康保険のピルも認められてそこそこ飲まれるようになった。とはいえ欧米に比べるとまだまだわずかなものである。
低用量ピルを初めて使ったのは今から30年以上前で、岡山市民病院に勤務しているときにピルの治験を担当したからである。希望者を募って同意を得てピルを1年間飲んでもらい、月経量の変化や生理痛の改善、副作用の有無などを調べたところ、全例副作用もなく生理痛は緩和し、生理の量も減り、避妊効果も万全だった。全国で行った治験をまとめた結果、我が国でも欧米と同じくピルが承認されるはずだった。子宮内膜症にも有効なことがわかっていたので早く患者さんに使ってあげたかった。なのによくわからない理由で承認が棚上げになり10年間据え置かれた。
今ではピルは普通に処方しているが10年の遅れは大きく、我が国でのホルモンに対する怖いと思う感覚からか、普及率はまだまだの感がある。

生理日の移動

令和4年7月28日
生理日の移動を希望する患者さんは多い。生理は排卵2週間後に始まるのでその3日前から中用量のピル(プラノバール)を1日1錠、延ばしたい日まで内服すればいい。問題なのは予測生理日が正しいかどうかである。排卵日は生理開始から14日目の人が比較的多いが遅れることもあるし早くなることもある。生理の始まる1~2日前から黄体ホルモンが減少し、子宮内膜の血管が破綻しはじめるので、そうなってからではピルを内服しても生理は始まってしまうのである。だから早めに(5~7日めから)飲み始めるといいが、それでは長く飲まなければならなくなってしまう。
中用量ピルは副作用(嘔気など)があったので低用量ピルがつくられたのである。問題は低用量ピルで生理をコントロールするためには、生理中から飲み始めなければならないことである。だから少し早めに受診して両方の利点・欠点を聞いて選べばいいというわけである。

妊娠中絶について

令和4年7月1日
日本では人工妊娠中絶は合法になっているが世界ではそれぞれ異なった取り決めがある。たとえばマルタは全面的に禁止されている。アイルランド、スペイン、ポルトガルは基本的に禁止だけれど条件付きで可能になっている。アメリカでは州によっては禁止なので正式な統計は出ていないが年間130万件ぐらいと推定されている。妊娠中絶の率が最も多いのがロシアでスエーデン、フランス、英国も多い。我が国はかつては多かったが今は最も少ない国の仲間入りをしている。その理由はコンドームの普及のおかげだといわれている。
たしかにピルの普及している欧米に比べて我が国のピルの普及率は最低である。現在3%といわれている。でも、我が国より一桁ピルの普及率の多い欧米がなぜ人工妊娠中絶が多いのだろうか。欧米の人の方が性的に活動的なのかもしれない。
妊娠中絶を決めるのは女性であるべきで、男性はオブザーバーにすぎない。妊娠を継続し命がけで産み、育てるのは女性である。中絶という心身ともに大きな負担をこうむるのも女性である。それを男性社会が合法だとか非合法だとかいうのはおかしな話で、女性が真剣に考えて決めたことを尊重すべきである。

更年期について

令和4年4月14日
今朝のNHKの番組で、更年期症候群のために仕事を辞めた人が症状の出た人の5%に及ぶ、と報道していた。更年期症候群は40代後半から50代前半の閉経前後の女性に、ホットフラッシュ(ほてり)・発汗・動悸など自律神経の失調が起きている状態で、原因は卵巣の機能低下によるものである。多くの人は、ほとんど感じないか軽い症状なのでやり過ごしているうちに閉経になり安定してくるので受診の必要はないが、仕事に差し支えるくらい症状の重い人もいる。
自律神経失調は男女を問わずあらゆる年代の人に起き、なかなかいい治療法がないが、更年期症候群は原因が女性ホルモンの低下・変動によるものなので、ホルモンを補えば治療できる。女性ホルモンは、元来卵巣が作っていたものだから補うのは自然である。手指のこわばりなどにも効果があり、リウマチかと思って散々調べたけれどわからず、婦人科を受診してホルモンを補うとよくなったケースも多い。
我が国はいまだにホルモンに対して「怖い」と言う人が多く、世界では常識のピルでさえ普及が遅れている。30年以上前から「ホルモンはちゃんと使えば安全で女性のためになります」と言い続けているのだけれど。

ウイルス学者の責任

令和4年4月7日
昨年11月に紹介した「京大おどろきのウイルス学講義」の続編である。著者は京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授の宮沢孝幸氏である。ウイルス学の専門家として一貫して訴えているのは、日本の自粛要請は過剰であり、スポーツイベントやコンサートの中止は不要だった、ルールを決めれば飲食店を休業にしなくてもよかった。そして、子供がワクチンを打つことには強く反対したい。個人の感染症対策としては「100分の1作戦」で充分であり、一般の医療機関で風邪やインフルエンザと同じようにコロナ感染者の診療をして、重症者のみ一部の専門医療機関で治療すればよい、ということだった。これらを訴えるのはウイルス学者の責任である、と考えての提言である。
宮沢氏はウイルス学の第一人者ともいうべき専門家で獣医師でもある。氏は専門家会議のメンバーはウイルス学については素人ばかりだと思ったというが、理由はガイドラインに「石鹸で手を30秒洗ってください」という項目があったからだという。感染経路として手を通じてウイルスに感染することは「ほぼない」と言えるくらいのレベルで、ざっと手洗いをするだけで充分であるそうだ。一事が万事ですべてにわたって過剰反応と、事なかれ主義が重なって今のコロナ対策になっていると看破している。一般の人だけでなく医師・役人・政治家も読むべき著作だと思う。