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ウイルス学者の責任

令和4年4月7日
昨年11月に紹介した「京大おどろきのウイルス学講義」の続編である。著者は京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授の宮沢孝幸氏である。ウイルス学の専門家として一貫して訴えているのは、日本の自粛要請は過剰であり、スポーツイベントやコンサートの中止は不要だった、ルールを決めれば飲食店を休業にしなくてもよかった。そして、子供がワクチンを打つことには強く反対したい。個人の感染症対策としては「100分の1作戦」で充分であり、一般の医療機関で風邪やインフルエンザと同じようにコロナ感染者の診療をして、重症者のみ一部の専門医療機関で治療すればよい、ということだった。これらを訴えるのはウイルス学者の責任である、と考えての提言である。
宮沢氏はウイルス学の第一人者ともいうべき専門家で獣医師でもある。氏は専門家会議のメンバーはウイルス学については素人ばかりだと思ったというが、理由はガイドラインに「石鹸で手を30秒洗ってください」という項目があったからだという。感染経路として手を通じてウイルスに感染することは「ほぼない」と言えるくらいのレベルで、ざっと手洗いをするだけで充分であるそうだ。一事が万事ですべてにわたって過剰反応と、事なかれ主義が重なって今のコロナ対策になっていると看破している。一般の人だけでなく医師・役人・政治家も読むべき著作だと思う。

3月のWEB研修会

令和4年3月18日
いつきウイメンズクリニック理事長、城田京子医師による「プロゲスチンによるエストロゲンコントロール月経困難症治療選択肢の分岐点」と題する講演がWEBで行われた。広島市臨床産婦人科医会が主催する講演会は年に4~5回開かれていて今回が295回目になる。もう60年くらい続いている勉強会である。広島市、その周辺の多くの産婦人科の医師が参加する勉強会で、日本中の大学、病院などの先生方に講演をお願いしている。中には何回も来ていただいた講師もおられる。今回の城田先生は、初めてだったけれど、同じ開業医という我々と同じ視点から黄体ホルモンと女性ホルモンの種類、調合の割合などで、最適の量を考察した考え方を示していて興味深く聞いた。
例年なら講演会の後は講師と座長、会長、幹事がお礼の食事会をしてもてなすのであるが、コロナ以降はすべて無くなってしまった。食事会の時には講師の先生といろいろな話ができるので、楽しみであった。ひょんなことから20年間幹事を務めていたので、100人近い先生方と親しく話をすることができた。講演するような先生はそれぞれ魅力的で、またいろんな考え方があることもわかった。思うところがあって幹事は今年度で辞めさせてもらうが、いい経験になったと思う。

WEB研修会

令和4年1月26日
「今さら聞けないコロナとワクチンの話」と題した長崎大学医学部小児科、森内浩幸教授の講演があった。ウイルスの基本の話からコロナウイルスについての説明、新型コロナウイルスの変異、ワクチンの効果、現在流行っているオミクロン株についてなど、タイムリーな話で興味深く聞いた。自分の理解していることと違いがあるかどうか考えながら聞いたが、あまり変わりがなかった。
武漢コロナ~新型コロナについての本はいろいろ読んでみたがウイルス感染は防ぐのは難しく、変異して弱毒化して皆が抗体を持つまでは収まらないようである。アジア人、日本人は昔からコロナウイルスにさらされ続けてきているので、しっかり抗体を持っている。だから欧米であれほどコロナによる死者が出ているにもかかわらず、インフルエンザ並みの死亡数で済んでいる。ここへきて感染力の強いオミクロン株に置き換わってきたが、この株は肺炎を引き起こす率はインフルエンザ並みなので、ある意味自然のワクチンのようなものだと思う。最後にフロアからの「実際のところどうなるとお考えか」に対して「2月いっぱいで自然に収まるのではないでしょうか。ワクチンの追加接種は間に合わないかもしれません」と言う言葉には大いに賛同した。

WEB講演会

令和3年11月17日
「女性外陰部における潰瘍性および腫瘍性病変の鑑別ー性ヘルペスと梅毒を中心にー」と題した愛知医科大学の野口靖之准教授のWEB講演があった。例年なら県医師会館に行って講演を聞くところであるが、講演の出席の可否を問う時期がコロナ第5派の最中だったので、WEBになったわけである。ヘルペス感染症はごく普通に見られるが、梅毒は以前はほとんど見たことがなかった。それが最近はずいぶん増えてまれな疾患ではなくなった。でも発見できればペニシリンが効くので治療できる。細菌に抗生物質を投与していくと耐性ができて効かなくなることが多いが、梅毒にはしっかり効くのである。
ヘルペスはウイルス感染症なので、発症して治癒するまでの経過はわかっている。薬は一応あるがあまり効かないけれど、一定の日数が過ぎれば風邪と同じように自然に治る。再発するが2度目以降は数日で自然に治るので、あわてて医療機関を受診しなくてもいい。これらの疾患は開業医が一番診ているだろうなと思った次第である。

「京大おどろきのウイルス講義」

令和3年11月4日
表題は京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授、宮沢孝幸氏の著書である。氏は東大農学部畜産獣医学科で獣医師免許を取得し、大学院で動物由来ウイルスを研究、東大初の飛び級で博士号を取得、一貫してウイルス学の研究を続けている。ウイルス学は学生時代に習ったが、せいぜいヒトに感染するウイルスと予防や治療についてで、本質的なことは理解していなかったが、この本を読むと実にわかりやすくウイルスの由来、生物との関わり合い、歴史などが簡潔に書かれていて目からうろこが何枚も落ちた。近年まれな名著だと思う。
この2年間はコロナで大変だったが、ウイルスについてのこのような本質的な情報を教示されると、政府はこのような人物の意見こそ取り入れるべきで、○○の一つ覚えのような意見しか言わない(言えない)O委員長は解任すべきだったのではないだろうか。マスコミも同罪で、なんちゃって専門家を並べて人々に不安をあおりまくった。氏の著書を読めば、基本的にウイルスは生物発生とともにあり、ウイルスのおかげで人類が生き延びることができたこともあり、簡単には対処できないことがわかる。表層海水1ccに1億のウイルスが含まれているそうだが、あらゆるところにいるウイルスをどうこうできないだろう。

「出生前診断における超音波検査の活用」

令和3年9月8日
表題は広島産婦人科学会での香川大学産婦人科、金西賢治教授のWEB講演である。このところ講演はほぼすべてWEBになっていて楽ではあるが、先生方と顔を合わせることがないのが寂しい。
妊娠中の超音波検査は毎回行われているが、ポイントは妊娠12週、18~20週、28~30週の3回きちんと行うだけで十分だとの話は、まさにその通りだと納得。現在行われている妊婦健診では超音波検査は毎回行われていて、胎児の成長・異常の有無、さらに表情や手足の動きなどを見てもらいながらDVDに録画して渡すところもあるという。サービスの部分が大きいので診療する側の時間的な負担は大きく、実際大変だろうと思う。
超音波検査が3回だけになれば、診療する側の負担は少なくなり実質的な仕事がもっとできるようになる。諸外国ではそうなっていて、わが国だけは毎回ほぼサービスで行われていると思われる。妊婦さんの喜ぶ顔が見たいというモチベーションはあるが、実質的なことが変わらないのなら上記のようなやり方に変えていくのがいいのではないだろうか。

久しぶりの研修会

令和3年7月2日
「いのちを繋ぐ女性のライフサイクルと漢方~特にこころの症状、こころからの症状に~」と題した香川大学医学部塩田敦子教授の講演があった。WEBであるが会場に行くことも可能なので今回は出席することにした。さすがに役員など世話係以外は少人数の参加者だけだったが、久しぶりの講演会出席だった。内容は漢方薬についての詳しい説明と有用なことの講演であったが、座長の工藤教授の「私は漢方薬についての知識が全くありませんので一つ聞きたいのですが…」の言葉には思わず笑ってしまった。教授も自分と同じ考えなのだなと。
更年期症候群はホルモン変動によって起きる自律神経失調なのであるが、かつては「当帰芍薬散」「加味逍遙散」などで治療することが当たり前であった。自分もその昔は「証」などを勉強して処方していたが効かないので困っていた。そこへ「ホルモン補充療法」の登場である。これは非常に効果があった。原因に対する的確な治療でなければ効果がないのは当たり前である。以後、漢方に対しては距離を置くようになった。我が国ではどういうわけか漢方薬が女性に受ける現象がある。欧米そのほかの国々では「ローカルドラッグ」という位置付けで正式な薬だとは認められていないのに。

ハイブリッド研修会

令和3年2月10日
広島県で毎年行われる産婦人科研修会が、今回は関係者の尽力で会場とWEBのハイブリッドで開催された。演題は岩成治島根県産婦人科医会会長による「子宮頸がん征圧のための最適な検診」と山田秀人元神戸大学産婦人科教授による「最新の母子感染対策:トキソプラズマ、サイトメガロウイルスほか」の2題である。今回はWEBで受講したが、やはり講演そのものは分かりやすく快適だった。会場で受講する場合、後ろのほうだったらスライドの小さな文字が読めないことがあるし、前に座っている人が邪魔で見えないこともある。WEBではこれらのことはすべてクリアされるし、講演の先生も仕事場や自宅(島根県と北海道)から講演できる。普段なら広島までの往復の旅費、滞在費、講演後の接待などかなりの負担がかかるし、講師の先生も1時間の講演なのに1日以上の時間を費やさなければならない。これらがすべて必要なくなるので合理的である。問題なのは人と人とのつながりが希薄になることである。やはり実際に会って話をしたり、食事をしたりすることで共感できることが大切である。コンサートなどは臨場感がいいのであって、CDやDVDでは限界がある。でも研修会についてはコロナ終息後もWEBと半々になっていくのではないだろうか。

「子宮内膜症、その謎に迫る」

令和2年11月20日
ほぼ1年ぶりに厳重な感染予防策のもとに上記の演題の講演が行われた。普段なら会場は一つで、それでも余裕があるのだが、4つに増やして一部屋当たりの人数を制限して行われた。第1会場のみ演者と座長がいて、他はリモートである。幸い第1会場に入れて直接講演を聞くことができた。高知大学医学部産婦人科教授、前田長正氏による講演で、子宮内膜症の原因、経過、治療への新しい視点でのアプローチをしたユニークで素晴らしい講演であった。
子宮内膜症は月経血の腹腔内への逆流が原因で起こるのがメインであるが、免疫応答の違いが発症の差になっていることを実際の映像を通して見せてくれた。基本に最近の第1子出産年齢の上昇と、出産回数の減少が大きな原因になっていることである。50年以上前は平均出産回数は5回で流産もあり、一生を通じて月経は50回だったが今は平均出産回数は2回、月経は450回だという。子宮内膜症が増えるわけである。
それならば月経の回数を減らせば防げるわけで、ピルを連続で内服して月経を起こさないようにすればいいのである。自分がいつも言っていることの整合性が一層強化されたと思った次第である。

不妊治療が保険診療になる

令和2年10月16日
菅総理の提案で不妊治療が保険診療になるらしい。もっとも普通の不妊治療は今までも保険診療だったし、当院も保険診療の不妊治療は行っているが、不妊専門施設で行っている体外受精、顕微授精など今までは保険外で自由診療だったものが保険になるという。
そもそも体外受精などの専門治療は、卵管不妊が原因の患者さんに行っていたもので、初めは手術室で全身麻酔のもと、腹腔鏡を使って卵子を採取し精子と混ぜ合わせて受精させ、子宮に戻して妊娠させていた。設備と人員など費用がかかるので患者さんの負担は大きかった。その後、経膣超音波装置による採卵技術が広まり、普通のクリニックで簡便にできるようになったが、費用はその頃のままで患者さんの負担はあまり変わらなかった。保険診療になれば費用はもっと安くなる上にその3割負担でいいので患者さんにとってはうれしいことだろう。
体外受精などの専門治療は本来、卵管不妊のためのものだった。それが今では原因不明の不妊(これが最も多い)にも適用されるようになっているのが現実である。かつては体外受精を行う場合は、病院内で倫理委員会を立ち上げ、命を作るような行為に対して本当に適応なのかと議論して決めたものである。今は昔の話ではあるが…