令和4年6月2日
人や物の名前が出てこなくて焦ることがある。数年前に開業されたT先生夫妻に、紀伊国屋書店で偶然出会ったとき、T先生は奥様を紹介してくださったのだが、T先生の名前が出てこなくて一緒にいたカミさんを「こちら〇〇先生、家内です」と言えずに焦った。なんとかごまかしたが名前を失念したことを気付いておられただろう。もっとも知り合ってまだ日が浅いせいもあったけれど。
20年以上前から薬を処方するときに、いつも使っている薬の名前が出てこないことがある。出てこないのはいつも同じ薬なので、いつでも見える場所に薬剤名をメモしておく。
昨日、Y電気店で買い物をしたときポイントカードを持参していなかったので、家の電話番号を聞かれた。ところが家の電話番号が出てこなかったのである。スマホを見てそうだったと思い出したが、ちょっとショックだった。大丈夫か?
大丈夫か
生活のリズム
令和4年5月26日
この4月から思うところがあって診療時間を一部変更した。今までは日曜・祝日を除いて木曜日だけ午後休診にしていたのだが、休診は水曜の午後と土曜日の午後に変更・増やしたのである。土曜日の午後は楽になったが、木曜日から水曜日への変更は、長年木曜日午後休診に慣れた身としてはなかなか馴染めない。生活のリズムがそうなってしまっていたからだろう。昨日(水曜日)午後休診だったが、今までの習慣で今日は金曜、明日が土曜日だとつい思ってしまう。25年近く体に刻まれたリズムは一朝一夕には変えられないのだろう。
一週間の流れで言えば日曜日はゆっくり休み(趣味・遊びなど)月・火と働いて水曜日は午後休む、木・金と働いて土曜日は午後休む、これが自然なリズムではないだろうか。体に馴染むまでにはしばらく時間がかかるだろうが、今後はこの診療時間でやっていくつもりである。
皆様よろしくお願いします。
普通の日
令和4年5月19日
ゴールデンウイークも終わり今まで通りの日常が戻ってきている。コロナの感染状況もあまり変わっていない。大阪の吉本知事も飲食の際の人数を4人から制限なしに緩和する方針だという。いいことだ。ほとんど意味のない飲食店への防止策強要はもうやめて欲しい。どの店も透明な衝立を立てさせられるのは意味がないのに。でも多くの店が営業を再開しているのはうれしいことである。
最近、福山のとんかつ店「豚笑」に行った。福山から広島に転勤してきた人が口を極めて褒めるので訪れてみたのである。こじんまりした店で数人がけのカウンターとテーブル席が少し、奥に座敷のようなテーブルが4つあり20人弱は入れるが、一杯人が並んでいるので待たないと入れない。おおよその待ち時間を教えてくれるのでそれまで時間をつぶすわけである。でも、待ったかいのある非常においしいとんかつであった。以前BSで「東京とんかつ会議」という番組があった。山本益博氏をはじめ食通のおじさんたちがそれぞれ一押しのとんかつ屋をレポートしていて、実に美味しそうだったが、その映像を思い出させるとんかつだった。福山にこんな店があるとは思わなかった。まだまだ知らないことが多いと思った次第である。
「人はどう死ぬのか」
令和4年5月12日
表題は医師で作家の久坂部羊氏の近著で、在宅での豊富な看取りの経験から「幸せな死を迎えるにはどういう心構えが必要か」をわかりやすく説明したものである。
阪大医学部出身の氏は外科・麻酔科で研修、指導医の後、思うところがあり終末医療に取り組んで悪戦苦闘し、自分の無力さと困難さに打ちひしがれてていた時に外務省の医務官募集の公募を見つけ応募し、サウジアラビア・ウイーン・パプアニューギニアの大使館で勤務した。その時に他国の人々の「死」に対する考え方を知り、我が国との違いを痛感した。我が国では「死」は病院でのことで、日常ではなく怖いものだということになっているが、それらの国では「あたりまえ」のことと受け止めている。我が国もかつてはほとんどの人は家で亡くなっていたので「死」は日常の出来事だった。それらを踏まえての経験から病院で死ぬことの弊害を説いている。
①善意の延命治療が悲惨な結果を招く②高齢者の場合は救急車を呼ばないほうがよいことも③在宅で看取った患者はほぼ例外なく「穏やかな死」を迎えた④下顎呼吸は臨終を告げる重要なシグナル⑤死に目に会うことを重視する弊害⑥医者たちが「がんで死にたい」と思うのはなぜ⑦自宅での看取りは決して難しくないなど、だれでも迎える死に対しての心構えを説いている。同時に医療への過度の期待を戒め、医療の行き過ぎや弊害も指摘して悔いのない終わりが迎えられるように著したもので、実にその通りだと思いながら読んだ。氏の医療に対する考え方は納得できることが多い。
いつもと同じ
令和4年5月6日
今年の連休は、5月1日(日)が広島市の産婦人科当番医のため、3,4,5日だけが休みで、今日から後はいつもと同じである。3日は孫の初節句で両家が集って祝うことができたのはありがたいことだった。あとはどこに行っても混雑しているから近場でごろごろしていた。休みが続くのでつい油断したら体重が増えてしまった。入院で10kg減っていた体重が7~8kg戻ってほぼ元の肥満になった。困ったものだ。
数年前までは連休は国内の名所旧跡を訪ねるべく、宿をとり旨い店を調べて予約したものだった。それが次第に新たな魅力的な場所もなくなり、コロナによる規制もあって早めに予約して出かける気分にならない。旨い店を調べ、予約できたら宿を探すのが基本だったが今は難しくなってしまった。だから連休でもいつもの休日と同じように過ごしている。まさにいつもと同じ日々である。
「まる ありがとう」
令和4年4月28日
表題は養老孟司氏と愛猫「まる」との関わり合いを、秘書の平井玲子氏が写真に撮り、養老氏が文章を書いて本にした作品である。NHKの番組「まいにち養老先生、ときどきまる」で、鎌倉の養老先生の自宅でくつろぐスコティッシュフィールドの雄猫「まる」と養老先生の姿を見ていて、ほっこりした気持になった人も多いのではないか。自分も大好きな番組であった。残念ながら「まる」は16年生きて亡くなったが、養老先生にとってはかけがえのない存在だったようで、文章を読むと喪失感の大きさが伝わってくる。さらっと書いているだけにその奥にある思いが感じられるのである。
養老氏の著作を愛読しているファンとしては、先生にとってはもちろんだが「まる」にとってもすばらしい猫生(人生ではなく)がおくれてよかったと思う。BSで今でも「養老先生」の番組をやっているが、「まる」がいなくなったことを思い出させるシーンがしばしば現れる。「まる」は養老先生と不思議な「縁」があったのだとしか思えない。
日常生活
令和4年4月21日
退院後、仕事に復帰して今まで通りの生活に戻り、日々普通に生活しているが、これがどんなにありがたいことか実感している。若い頃は元気なのが当たり前で、そのありがたさなど考えたこともなかったが、この年になり入院を経験すると強く思う。このブログを載せるようになったのは2,004年の4月なので今年で18年になるが、はじめの頃は健康はあたりまえで病気のことなど考えてもいなかった。だから思いつくまま好きなことを書いていたし、医療の世界での不都合なことや不誠実なことにもすぐに反応して思いを書いたり、社会のことにも意見を述べたりしている。今でも言いたいことはいっぱいあるが、言ってもどうしようもないと思って静観することが多い。世の中はなるようにしかならないから、普通の日常生活が送れることがありがたいことを実感しながら日々を過ごすことになる。
日常生活を普通に送れるのが一番ありがたいことだと思う。
4月より診療時間を変更します
令和4年4月1日より診療日・時間を下記のように変更します。
木曜日午後休診→水曜日・土曜日午後休診
木曜日午後は診療します。
よろしくお願い申し上げます。
更年期について
令和4年4月14日
今朝のNHKの番組で、更年期症候群のために仕事を辞めた人が症状の出た人の5%に及ぶ、と報道していた。更年期症候群は40代後半から50代前半の閉経前後の女性に、ホットフラッシュ(ほてり)・発汗・動悸など自律神経の失調が起きている状態で、原因は卵巣の機能低下によるものである。多くの人は、ほとんど感じないか軽い症状なのでやり過ごしているうちに閉経になり安定してくるので受診の必要はないが、仕事に差し支えるくらい症状の重い人もいる。
自律神経失調は男女を問わずあらゆる年代の人に起き、なかなかいい治療法がないが、更年期症候群は原因が女性ホルモンの低下・変動によるものなので、ホルモンを補えば治療できる。女性ホルモンは、元来卵巣が作っていたものだから補うのは自然である。手指のこわばりなどにも効果があり、リウマチかと思って散々調べたけれどわからず、婦人科を受診してホルモンを補うとよくなったケースも多い。
我が国はいまだにホルモンに対して「怖い」と言う人が多く、世界では常識のピルでさえ普及が遅れている。30年以上前から「ホルモンはちゃんと使えば安全で女性のためになります」と言い続けているのだけれど。
ウイルス学者の責任
令和4年4月7日
昨年11月に紹介した「京大おどろきのウイルス学講義」の続編である。著者は京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授の宮沢孝幸氏である。ウイルス学の専門家として一貫して訴えているのは、日本の自粛要請は過剰であり、スポーツイベントやコンサートの中止は不要だった、ルールを決めれば飲食店を休業にしなくてもよかった。そして、子供がワクチンを打つことには強く反対したい。個人の感染症対策としては「100分の1作戦」で充分であり、一般の医療機関で風邪やインフルエンザと同じようにコロナ感染者の診療をして、重症者のみ一部の専門医療機関で治療すればよい、ということだった。これらを訴えるのはウイルス学者の責任である、と考えての提言である。
宮沢氏はウイルス学の第一人者ともいうべき専門家で獣医師でもある。氏は専門家会議のメンバーはウイルス学については素人ばかりだと思ったというが、理由はガイドラインに「石鹸で手を30秒洗ってください」という項目があったからだという。感染経路として手を通じてウイルスに感染することは「ほぼない」と言えるくらいのレベルで、ざっと手洗いをするだけで充分であるそうだ。一事が万事ですべてにわたって過剰反応と、事なかれ主義が重なって今のコロナ対策になっていると看破している。一般の人だけでなく医師・役人・政治家も読むべき著作だと思う。