令和6年2月9日
群馬大学の佐藤健教授のグループと東京医科歯科大学の松田憲之教授との共同研究で、卵母細胞(卵子)がただ1つの精子とのみ受精する仕組みの一端を明らかにしたと発表した。
受精の際、卵子の周りには多数の精子が取り囲み、1つの精子のみが中に入って受精する仕組みがどうなっているのか不思議だった。哺乳類などの卵では受精数十分後には卵を覆う透明体が変化して他の精子を拒否することが知られていた。
精子は多数取り囲んでいるので、もっと素早く拒否しなければ多精子を受精してしまうことになる。
多精子を受精すると雄由来の余分なゲノムDNAが受精卵内に持ち込まれてしまい、適切に細胞分裂できず、異常な発生をしてしまう。これを拒否する仕組みがあるだろうとは思われていたが、実体はわかっていなかった。
研究グループは線虫C.elegansにおいて、受精後に卵子の表面で働いたタンパク質が受精後に細胞の中に取り込まれて選択的に分解されて、新たなタンパク質に置き換わっていく現象に着目し、この過程に働く因子としてMARC-3(ヒトではMARCH3)を見出した。この因子を欠損させた卵子では多精の状態になることがわかり、現在MARCH3遺伝子を欠いたマウスを作成中だという。
実に興味深い研究で生命の謎がまた一つ解明されていくことが楽しみである。