令和5年9月29日
表題は昨年亡くなった近藤誠医師の著書である。2,022年7月5日発行だからほぼ最後の著作と思われる。内容は今まで主張してきたことをさらにわかりやすく書いているので、新しい知見はないけれど実のその通りだと思って読んだ次第である。
医者だけが知っている秘匿事例として、
「医者は人間ドックを受けたがらない」「血圧を無理に下げると脳梗塞を起こしやすい」「がん検診では、転移を防止できない」「子宮がん検診を導入したら、死亡率が増えてしまった」「胸部エックス線撮影は、発がん率を上げてしまう」「抗がん剤は効かないと知っている」「CT撮影はエックス線の300倍も被爆する」「早期がんの発見は欧米に比べて多すぎる」「手術すると癌の再発リスクは激増する」「病院では安楽な最期は迎えられない」など今までの常識をひっくり返すような記述が満載である。
それにしても惜しい人を亡くしたものである。再び合掌。
月別記事一覧 2023年9月
医者が「言わない」こと
N先生の閉院
令和5年9月22日
ほぼ同じ時期に開業されたN先生の診療所が今日で閉院となる。
出身大学が違うので開業してから知り合いになったが、素晴らしい人と知り合えたことを感謝している。1,997年に開業して26年余、診療上のことも含め色々お世話になった。ご一緒した飲み会は多かったが、いつも気持ちよく飲ませてくれる雰囲気があり、また一緒に飲みたくなる人柄である。
自分で決めたことは確実に遂行し、すべての責任を自分で背負う強さがあり、堅苦しいことは嫌いでお酒が大好き。
昨年コロナで重症化して入院せざるを得なくなった時もずいぶんお世話になった。患者さんをどうしようかと思っても隔離されていてどうにもならなかったが、N先生にお願い出来たので安心して療養することができた。
今後はもっと充実した人生があるようでうらやましいが、自分はもうしばらく診療を続けていくつもりである。
N先生、長い間お疲れさまでした。そしてありがとうございました。
忘れた
令和5年9月15日
最近、2つの講演をスルーしてしまった。一つは広大で行われた講演で、WEBで視聴する予定で、当日(日曜日)朝からクリニックに出かけパソコンを開いたが、視聴するための案内メールがなくなっている。間違えて消去してしまったようだ。あらかじめ「間違えて消去する人がいますので注意を」とのメールがあったのに…
昨日は夜7時からの講演で、これもWEBだけれどしっかり視聴できるように準備していたにもかかわらず、午後の外来が終わってほっとしてそのまま帰宅。食事を終えて入浴した時に、何か忘れていたような気がすると思っていて「そうだ!講演があったんだ」と気づいたが後の祭り。ボケが始まったのかと思ってしまった。カレンダーにはスケジュールを書いていて毎日見ているにもかかわらず失念するのはいかがなものか。困ったものだ。
「妻の肖像」
令和5年9月7日
表題はジャーナリストで作家の徳岡孝夫氏の作品である。愛妻家である氏の70歳で亡くなった妻・和子への思いが淡々と綴られていてしみじみとした感動を呼ぶ。大阪生まれの氏は京都大学を卒業後、毎日新聞社に入社するが卒業前から高松に配属され、木造二階建ての古ぼけた支局に赴く。そこで働いていた事務員が和子である。徳岡25歳、和子24歳で結婚し、以後45年間男の子2人を育て仲睦まじく暮らしてきたが、和子69歳のときに腎臓がんの骨転移が見つかり70歳で亡くなったのである。
徳岡氏は妻とのなれそめから結婚生活、子育て、やっと家を持てたことなど、たくさんのエピソードを交えて綴っているが、妻に対する深い愛情が大きな河のように底を流れていて暖かい気持ちになる。
臨終の和子夫人に徳岡氏は「和子、また会おう。近いうちに」と呼びかけているが心の底からの言葉であろう。氏は山代春日さんから贈られた油絵の板絵「徳岡和子像」を眺めるたびに「生きている」と感じて帰宅すると必ず「和子、ただいま」と声をかけている(石井英夫氏の解説)。愛しき人を持つすべての人に読んでもらいたい作品である。