令和2年4月10日
初婚年齢が上がったので不妊の率もやや増えているが、今のような不妊治療のない時代からカップルの1~2割は不妊であった。原因は男性の場合は精子の数や運動率が悪いこと、女性の場合は最も多いのは卵管の通過障害と卵のピックアップがうまくいかないことである。排卵障害もあるけれど、ポイントは卵管である。さらに年齢が上がるほど妊娠しにくくなる。他にもいろいろな要素はあるが、まず卵管を調べることが大切である。
以前は卵管通過障害に対しては、卵管通気と卵管通水が行われていた。卵管通気とは子宮口よりCO2などの気体を送りこんでふさがった卵管を通そうとすることで、卵管通水は生理的食塩水を使う。通気法は今では行われなくなったが、通水は有効なので行われている。当院でも行っているが、できるだけ痛みを少なく素早くできるようにしている。それでも通過障害が改善しなければ体外受精(IVF)のできる施設に紹介することになる。
生物学はまだまだ不明なことが多く、不妊に関しても原因不明が5割もあるといわれている。不妊専門クリニックで行われているIVFは本来は卵管通過障害の場合に、卵を採りだして体外で授精させ、子宮に戻すことによって妊娠を期待する、いわば卵管の替わりを人工的に行うことである。卵や精子を扱って授精させることは神の領域と考え、IVF黎明期には院内で倫理委員会を開いて体外受精の適応かどうかを判断したうえで行っていた。現在は卵管に異常がなくても妊娠しない場合にはIVFを行っているようであるが、今から思えば隔世の感がある。