日付別記事一覧 2017年1月20日

「人はどうして老いるのか」

平成29年1月20日(金)
表題は京都大学教授などを歴任された動物行動学者、日高敏隆氏の著書である。副題が「遺伝子のたくらみ」でヒトがなぜ老いるのか、老いとはどういうことなのかを遺伝子を基にして考察している。氏は以前から興味深い著作を多数出されているが、どれも面白いものばかりである。「チョウはなぜ飛ぶか」、ローレンツ著「ソロモンの指輪」の翻訳など、すでに古典的名著となっているものも多い。
動物たちはそれぞれの個体が自分の遺伝子を持った個体を多く残すことを「目指して」生きている。ヒトも例外ではなく適応度が高いほど多くの子孫を残せるが、適応度が高いことは「多産」であっても長生きできることとは別であるという。遺伝子集団は自分たちが生き残れるように、進化の途上で周到なプログラムを組み立ててきた。それぞれの個体はプログラムどおりに成長し、子孫を残して死んでいくが、このプログラムは固定的なものではなく「選択」によって変化するため最終到達点までいかないこともある。これについて氏はロールプレイングゲームを例にとってわかりやすく説明している。ゲームはすべてプログラミングされていて、個々のプレーヤーの選択によっては最後まで進めないことがしばしばみられるが、遺伝子のプログラミングもこれと同じだという。
実にわかりやすい説明で、すべて遺伝子集団のプログラムどおりなら「老い」はどうしようもないことである。もっとも、難しく考えなくても昔から皆あたりまえのことと思っていることではあるが。