平成27年9月26日(土)
浜松医科大学産婦人科・金山尚裕教授の「羊水塞栓症の救命法と予知・予防」と題した講演があった。現在、我が国の妊産婦死亡原因で1番多いのが羊水塞栓症だそうである。とは言っても妊産婦死亡率は、世界で最も低い国の中に入っているので一般医師が経験することはまれだろう。分娩(お産)は実に大変なことで、分娩の際はもちろんだが妊娠中・産後を通じて何が起きるかわからない。近代医学が広まるまでは、数百のお産で1人は亡くなっていたので、文字通り命がけだった。現在は2万~2万5千のお産で1人である。それでも大変なことに変わりはない。実は帝王切開も羊水塞栓症の大きなリスクになっているので、安易な帝王切開は控えるべきだろう。
講演では、酸素飽和度を調べるセンサーを指先に装着して内診し、生まれる直前の胎児の頭部に当てて測定する装置を考案してPRしておられたが、発想としては面白いと思う。胎児の状態が数字として簡単にわかる方法が新たに増えるのは有用だろう。お産をしている施設はこの装置を採用するのではないだろうか。
月別記事一覧 2015年9月
金山教授の講演
石原教授の講演
平成27年9月18日(金)
「月経困難症治療は何が変わったか?」という演題で、埼玉医科大学産婦人科教授の講演があった。月経困難症(生理痛)は鎮痛剤による対症療法が主体であったが、低用量ピルが我が国で承認されてからは非常に対処しやすくなった。子宮内膜症や子宮筋腫に対しても、ピルのおかげで症状は緩和され、手術しないでもよくなったケースは多い。
今回の講演では低用量ピルより更にエストロゲンの少ないピルとの比較や、最近の考え方などわかりやすく説明していただき大いに参考になった。ピルの連続内服による月経サイクルの延長についても何の問題もないという考えであり、当院での考え方と同じである。懇親会では日本でピルの承認が10年以上放置されていたことへの不満も話しておられ、共感をおぼえたことである。
開院18周年!
平成27年9月10日(木)
このささやかなクリニックを開いたのは18年前の今日である。開院した当初はすべてが初めてのことで不安と試行錯誤の連続であった。10年位経ったころから診療についてはあまり困ることはなくなったけれど、いつも何か心配するようなことはあった。それでも周囲の人たちのおかげで今日まで無事にやってこられたのは本当にうれしいことである。18年というとずいぶん長いようであるが、実際の感覚としては5~6年ぐらいであろうか。だから自分ではそんなに年を取ったとは思わないけれど、外から見れば確実に歳を重ねているのだろう。今日は気持ちのいい秋の日である。毎年、9月10日を迎える度にこの季節に開院してよかったと思う。
ええ加減でいきまっせ!
平成27年9月5日(土)
タイトルは医学雑誌「日本医事新報」に大阪大学病理学教授の仲野徹氏が連載しているエッセイの題名である。「日本医事新報」の歴史は古く、大正10年(1921年)発刊以来、今日まで続く息の長い雑誌で、中電病院に勤務していた頃から読んでいるので、もう20年以上親しんでいることになる。ずっと旬刊だったのが少し前から週刊になっているが、仲野氏が毎週エッセイを載せるようになってもう60回を超えた。毎回、興味深い話や日常感じたこと、氏の専門の世界でのトピックスなどが絶妙の筆致で描かれていて、いつも楽しみにしている。
興味深い本の紹介もあり、最近で最も面白かったのは「病の皇帝「がん」に挑む」で、氏が「これまで読んだ医学・生物学の本の中でベスト3に入る」とまで絶賛していたので早速アマゾンで取り寄せて読んでみた。著者のシッダールタ・ムカジー氏はインド出身の腫瘍内科医で、スタンフォードからオックスフォードを経てハーバードからコロンビアとすばらしいキャリアがあり、この本でピューリッツァー賞を受賞している。これまでに人類がどのように「がん」に挑んできたかあますところなく書かれていて、実に興味深く読んだ。もし仲野氏のエッセイ(仲野氏の尽力で我が国でも翻訳・発売された)を読んでいなければ知らなかったので感謝である。