平成19年4月27日(金)
さわやかな日が続く。昨日などは午後河べりを歩けば、五月のようなさわやかな風を感じて実にゆったりとした気持ちになった。一年中で今がいちばんいい季節ではないだろうか。
こんな時節には腰に酒を入れたひょうたんをぶら下げて、尺八を持って桃源郷をめざして山に分け入るのがいいだろう。周囲は静かで木々の新芽の息吹が感じられる。適当なところで腰を下ろして酒を含み、尺八を吹く。心が洗われて浮世のしがらみなどすべて忘れ去る。その場所がすなわち桃源郷である。
月別記事一覧 2007年4月
桃源郷
筍と梅
平成19年4月21日(土)
先日、田舎の父親から「たけのこがとり頃になったので帰ってこないか」という電話があった。ありがたいことである。
田舎にいた頃はこの季節になると日曜日には筍を裏山に掘りに行くのが慣わしだった。くわを持ち、ネコ車を押して山の畑のそばにある小さな竹やぶに行くと、あるわあるわ、地面からちょっとだけのぞいた竹の子がいっぱい見られた。鍬を筍より少し離れた地面に筍に向かって深く打ち込み、てこのように鍬の歯を起こすときれいに掘れる。慣れてくると一回の打ち込みで掘れるのであっという間にあたり一面筍だらけになる。筍を掘るのは楽しいが回収するのは大変である。あちらこちらにある掘ったばかりの土のついた筍を集めてまわるが、袋はすぐに一杯になるし、重い。その袋をネコ車のところまで運んでネコ車が一杯になったら山道を持ち帰るのである。持ち帰った後は米ぬかをまぜて茹でたりしていたようだが、毎日食卓には筍の料理が載っていていいかげん閉口した。
竹は繁殖力の強い植物で、油断していると周りの畑はすぐに竹やぶになってしまう。地下茎が伸びていっていつの間にか離れた畑から竹が生えてくるのである。中学時代には、竹やぶのそばに使っていない畑があったので、父親に「梅の木を植えてもいいか」と頼んで承諾してもらい、6本ばかり植えて育てたことがある。将来は梅林にして梅を収穫し、大儲けしようとたくらんだのである。幸い?うまくいかなかったが、梅の木は残った。でも今はその畑はすっかり竹やぶになってしまい、梅の木は枯れてなくなってしまっている。
医師の責任
平成19年4月18日(水)
生理不順で来院される患者さんは多いが、ほとんどの場合治療の必要はなく経過観察で問題ない。それでも時にはうつ病またはうつ状態のために排卵がなくなっている人もいる。
先日もそういう患者さんが来られたのだが、聞いてみると近くの(産婦人科ではない)クリニックを受診していて数ヶ月前から薬をもらっているとのこと。クリニックの医師はうつ病ではないと説明しているそうだが、抗うつ剤が処方されており、自覚症状がいっこうに良くならずつらそうである。
ひと目でうつ病もしくはうつ状態だと判断して、すぐに信頼できる精神科に紹介したところ、「重症のうつ病で、現在処方されている薬は効果がないようなので薬を変えて治療してみます」とのことであった。それまで治療していたのは精神科が専門ではないクリニックであったが、処方されていた薬の副作用で乳汁分泌も起こっておりそのフォローもしていなかった。
私の同期のY先生は、10年間産婦人科の修練をして非常に優秀であったが、思うところがあって産婦人科をやめて内科に変わった。そして新たに内科の研修医から始めて約10年修練して「内科医院」を開業した。「産婦人科」の看板を同時に出しても何ら問題ない、むしろ産婦人科医としての技術を使わないのはもったいないと思うのに。彼にとってはあれもこれもなどとは考えられないことだったのだろう。
どの分野もそれぞれ深いものがあるので、自分がきちんとやったという自信のない分野には手を出さず、それぞれの専門家に任せるのが患者さんのためになると思う。特に精神科はセンスがなければ難しい分野だと思うので、医師だからといって何でも治療すればいいというものではないだろう。自分も含め医師はもっと自分の専門を大切にすべきである。それがひいては他の専門分野を尊重することであり、患者さんのためになるのだから。
フレンチパラドックス
平成19年4月14日(土)
フランス人は食いしん坊が多く、他の先進国と比べて破格に多くの塩分と脂肪、アルコールを摂取しているにもかかわらず成人病の罹患率が低いそうである。しかも喫煙率も高いという。従来の考え方からいえば通説と反対のために、世界中の学者が説明に苦慮して「フレンチパラドックス」という言葉が生まれ、赤ワインが健康に良いという説もここから出たそうである。
確かに「健康」という概念からは、美味しいものもアルコールも刺激的な生活も排除されるべきものであろう。でもそうなれば生きているだけということになって、なんのテイストもない人生ということになってしまう。「健康」という概念と、実際の健康とは別のものである。やはり美味しいものを食べ、面白いこと、楽しいことをしたほうがいいに決まっている。健康はすばらしいことだが「健康」という概念からは離れた方がいい。
広島県が1位!
平成19年4月10日(火)
暖かい日が続く。日曜日には近くの比治山へ行ってみたら桜が散り始めていて風情があった。やはり桜は散る時がいい。桜吹雪の中で飲むビールは格別である。
この10年間の妊産婦死亡率の最も低い県は、なんと!広島県である。出生10万件あたり1,84人(全国平均6,39人)で最も多い京都府(10,70人)に比べて6分の1である。これは周産期死亡率も全国一低いことと合わせて誇るべきことである。広島県の産科が我が国で最もうまく機能していることを表していて、産科に関わる医師・スタッフにとって実にうれしい結果である。この成果をさかなに飲むビールはいっそう美味しく感じられる。
頭の固い看護協会
平成19年4月4日(水)
看護協会の会長が全国の協会支部に、「助産師以外は内診をしてはならない」との通達をあらためて出したそうである。保助看法に基づいた通達だと思うが、全国でお産がどうなるかわからない時になんという視野の狭い、かたくなな姿勢であろうか。医師が責任をもって指導している看護師の内診・介助は戦後60年にわたって行われてきており、安全性に問題がないことは明らかになっている。米国では病院でのお産はほぼすべて産科専門の看護師が内診・介助しており、わが国と同様うまくいっている。さらに、医師法という上位の法律では看護師の内診はなんら問題ないのに、である。
看護師と助産師の地位向上をはかるためとしか思えないこのやり方は、ナイチンゲールの精神から遠く離れた我執としか思えないことである。彼女達は目の前に苦しんでいる患者さんがいても、「私の仕事はここまでです」と言って自分達で決めた看護の仕事以外は何もしないのであろうか。そうではあるまい。やはりどうしたら患者さんのためになるのかと考え、そのためなら何でもできることはしようとするのではないだろうか。私が今まで接してきた看護師さんたちは皆、患者さんのために一生懸命頑張っていて、こんなややこしいことをいう人はいなかった。
看護協会のえらい人たちは感覚が違うのだろうか。現状を見ていると、自分達の権利のみ主張して戦後60年営々と築きあげてきたお産のシステムをぶち壊そうとしているとしか思えない。困るのはお産をする患者さんなのである。