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生理不順は経過観察でいい

平成17年1月27日(金)
当クリニックは場所がらか、生理不順を訴えて来院される若い女性が多い。生理不順の原因の多くは下垂体ー卵巣にあり、卵巣が一個だけではなく複数の排卵を起こすタイプの場合によくみられる。以前はこのタイプの生理不順を治療していたし、今でも治療しているケースもあるようだが、疑問である。まず、排卵は妊娠を希望していないときは絶対に必要というわけではないし、排卵がないからといって体に悪いわけではない。次に、このタイプの生理不順は根本的には治すことはできないし、治す必要もない。排卵が不定期の場合には排卵誘発剤を使えばその時だけは排卵させることができるかもしれないが、次の月は前の状態にもどり排卵が不定期になるのである。だから妊娠の希望がないかぎり治療の必要はない。多くの女性は「生理は毎月あるものだから自分の生理が毎月ないのは異常だ」と考えているかもしれないが、心配することはない。たとえばピルを飲んでいる人は毎月生理様の出血があっても排卵は原則おこっておらず、その状態が何年続いても(ピルを何年飲んでも)特に問題があるわけではない。
人間も哺乳類なので排卵するわけだが、他の哺乳類の多くは年に数回の発情期にまとめて排卵するだけであり、その時に一度に複数の卵を排卵し、複数の仔が生まれるのである。だから、たまたまヒトが月に一個だけ排卵するように進化?しているのだとしても、複数排卵するという本来の多くの哺乳類のなごりがあってもおかしくはないだろう。実際複数の卵を排卵するタイプの生理不順の女性の多いこと。むしろそちらの方が本来の姿かと思うくらいである(ちょっと言いすぎか)。だから生理不順であってもこの場合は心配ないので、時々経過を見てもらうようにするだけでいいのである。

アナフィラキシー

平成17年1月7日(金)
午後の診療開始早々、抗生物質を1錠飲んでアレルギー反応の出た患者さんがおられた。今我が国で最も広く使われている抗菌剤のひとつで、10年以上多くの人に処方しており特に問題なく、今回も午前中の外来で処方したのであるがこのようなことは初めてであった。内服後顔が紅潮し、気分が悪くなり呼吸音に軽い喘鳴が認められた。この症状は内服30分後ぐらいで起こり、すぐに来院されたのだ。血圧・脈拍は正常であったが、内科の先生に診察を依頼したところ、念のため救急車で市民病院の救命救急へ移送することになった。その後移送先のドクターから「おちついてきてもう大丈夫と思うが念のため一晩入院してもらいます」との知らせがあった。そして翌日の午前中に問題なく退院となった。
アレルギーは恐い。たとえ10万人に問題なくても10万1人目に起こることがあるのだ。今まで一度もなかったからといって、今後もないとはいえないのである。アレルギーにはいつも注意しているつもりであったが、今回はまさかと思うような出来事であった。実は私自身アレルギー体質があって同じような経験をしたことがあるが、その時は解熱鎮痛剤で同じような症状が出て本当に苦しかったが、5~6時間するとおさまって事なきを得た。初めての薬であればその薬に対するアレルギーの有無は、使ってみないとわからないのである。
今後は薬の処方に対しては一層注意していくつもりであるが、アレルギーは恐いと改めて感じた年頭であった。

国民衛生の動向

平成16年11月13日(土)
「国民衛生の動向」という本がある。厚生統計協会から毎年この季節に刊行されるのだがこれが実にすぐれもので、保健医療や生活環境などがよくわかる。たとえば「戦後における平均寿命の推移」という欄をみると、昭和22年の平均寿命は男50,06女53,96で10年後にはそれぞれ63,24と67,06さ らに10年後の昭和42年には68,91と74,15とすばらしい伸びを示している。前回書いた「人生わずか50年」はつい50年前までの話だったのである。ほかに離婚率の国際比較だとか人口動態職業別総覧だとか、よくぞここまでというほどなんでも統計を出している。手元に置いておくと結構便利だ。
土曜日なので夕方5時までであるが結構疲れた。まっすぐ帰ることにする。

最近のHRT(ホルモン補充療法)

平成16年10月9日(土)
40代後半から50代にかけて、のぼせやほてり発汗などがおこって気分の落ち込みも見られるのを更年期障害というが、この治療にHRT(ホルモン補充療法)が行われてきた。以前から日本では漢方薬なども用いられていたが、いまひとつ切れが良くなかった。欧米では女性ホルモンを使用することにより、更年期障害の著しい改善がみられたので広く使用されるようになった。我が国ではホルモンに対してなんとなく拒否反応があったが、医師が勧めマスコミでも有用性が言われるようになると次第に広く使われるようになってきた。
ところが、最近米国と英国でおこなわれた大規模な検査で、長期間のHRTは乳がんになる可能性が2倍になるとの結果が出たため、HRTは短期間で使用するという申し合わせになった。ただし大腸がんは3分の2になり、骨には有効で総合的に見て寿命は変わらないとのことであった。
以前はHRTの長所ばかりが喧伝されて、おもに欧米で使いまくられていたのに一転してあまり使わないようにとのことだが、生命予後が変わらないのであればHRTによって症状が改善して快適に過ごせるなら使うべきだろう。

手術と放射線治療

平成16年9月27日(月)
10年以上前に子宮がんの手術をされて、現在再発もなく過ごしておられるCさんは足が腫れており、やや不自由でなんとかならないだろうかと言われる。以前から(今もそうだが)少し進行した子宮がんは子宮を取る際に周辺のリンパ節を切除することが一般的で、そのためにリンパの流れが滞り下肢がぱんぱんに腫れることがあった。これに対してはいい治療法がなく、本人にとってはまことにしんどいことで、一生その状態でいるのは苦痛であろう。じつに気の毒である。
欧米では手術よりも、放射線による治療の方が主な国もあり、治療成績も手術とほとんど同じようである。どちらの治療も一長一短があるが、やはり治療する側としては両者の良い点と悪い点をきちんと説明して選んでもらうしかないだろう。日本ではがんの治療は手術だとの思い込みがあり、ドラマ「白い巨塔」でも手術の名手をカリスマの如くあがめているようである。
放射線科の医師と協力し合って治療をするようになればよいのだが、現実にはなかなか難しい。患者にとってどうするのが一番いいのかだけを考えていれば、妙な縄張り意識なくうまくいくとおもうのだが。

ドックや検診には近づかない

平成16年9月18日(土)
ドックや検診で何か異常を指摘されて来院される人がいる。ほとんどの場合、問題ないことが多いのでその旨をお話しすると安心される。異常を指摘されてからずっと心配されており、かなりストレスだったようである。無理もない。だれでもそう思うのは当然である。
私はいつも「体調が良く、どこも何ともない人は医者に近づかない方がいいですよ。痛かったり、不都合があれば来て下さい」と言うことにしている。どんな健康な人でも探せば少しぐらい不都合な部分は見つかるものである。昔、経済状態も悪く労働条件もよくない時代は健康診断も必要であったかもしれないが、今はどうだろう。栄養状態は良く、快適な生活を営んでいる人が多いなか、いたずらに検診を受けるのは(?)と思う。私自身、体調が悪くなければ一切検査しない。治る病気は少々遅れても治るだろうし、その逆もまた真なりと思うからである。
そのかわり、信頼できる相性のいい医師を見つけておいて、心配なことがあれば相談に行き、そこから色々な科に紹介してもらうのがいいだろう。

だれがこんなバカなことを言うのか

平成16年9月15日(水)
最近産婦人科のメーリングリストで、内診やNSTなど分娩の監視を、医師の責任のもとで看護師や准看護師がすることを禁止される可能性が起こってきたことについての議論がおこなわれている。
法律が制定されて57年にわたって行われてきたことを、厚生労働省の役人がダメだと言ったために起こってきた議論である。よく訓練された看護師であれば、 内診もNSTの報告も問題ないし、助産師でなければならないというわけではないと思う。助産師には助産師でなければできない大切な仕事がある。難しいといえば、心電計のモニターや未熟児のモニターの方がより難しいこともあるのではないか。要は医師の裁量をどこまで認めるかであろう。お上は医師の権限をできるだけ分散させたい、言い換えればおさえたいのであろう。
いずれにせよ何十年にわたって安定して行われてきたことにケチをつけるには、それなりの理由がなければならないが、どうも納得できる説明はないようである。現場を知らないお役人が、頭だけで考えた判断のように思える。

ダイエット考②

平成16年8月23日(月)
ダイエットの続き。
ダイエット食は3ヶ月が限界でそれ以上は難しくなるという。3ヶ月だから頑張れると言える。この期間は砂糖菓子は止める。おやつは果物を少量にする。油の使用は極力おさえ、食前にキャベツなどの生野菜をどんぶり一杯10分かけて食べる。ご飯は茶碗に3/4杯でたんぱく質70グラムに野菜を多く取る。運動は毎食後15分より20~30分散歩をする。カロリー摂取量は男性で1500Kcal、女性で1200Kcalにすると1ヶ月で2~3kg減り、3ヶ月で 6~9kgの減量になるそうである。
ここまで書いて実際に減量をするとなったら大変だと思った。なにしろビール飲めないし、うまいつまみも食べられないからだ。おまけにキャベツをたくさん食べて食後に散歩だと。おまえはヤギか。私は今の所減量する気はさらさらない。頑張ってみようと思う人はやってみたらいいと思う。

ダイエット考①

平成16年8月20日(金)
ダイエットの話。
日本人と欧米人では肥満の程度が違うようだ。日本人で超肥満の人はあまり見かけないが、欧米人(ハワイも含む)の肥満はケタが違う。コニシキを見よ、曙を見よ、太りすぎで動けなくなって部屋から出られないためにクレーンで運び出される人をアメリカのローカルニュースで時に見かけるぐらい、あちらの肥満はすごい。遺伝子が違うとしか思えない。
最近の知見では、日本人に超肥満者が少ないのはインスリンの分泌能力が欧米人より弱いためらしい。日本人は高血糖が持続すると、糖尿病その他さまざまな疾病がおこり結果的に太れなくなるが、欧米人は高血糖に強く、発病するまでに20~30年耐えられるという。したがってその間に超肥満になってしまうわけである。日本人にとって超肥満になりにくい(なれない)ことは良いことなのだろう。
さらに、日本人には「倹約遺伝子」が欧米人の2~3倍あるということである。この遺伝子を持つ人は安静時代謝量が1日あたり200~300Kcal少なく てすむので、同じ物を食べてもその分太るわけである。なぜ、私がたいして食べているつもりはないのに(?)体重が増えていくのか納得した。おそらく、食料の少ない時代に生き残ってきた祖先たちからこの「節約遺伝子」が受け継がれてきたのであろう。日本人の肥満傾向の人の1/3にこの遺伝子があるらしい。現代の飽食の時代では、困ってしまう遺伝子ではあるが。
この遺伝子を持つ人は、ダイエットをする時に遺伝子を持たない人よりも一日200~300Kcal少なくしないと同じ効果は得られないという。なんと気の毒なことか。食べることが特に好きな人にとって、我慢することは大変だろうと思うが、もっと我慢しなければならないとは!
ダイエットの方法についてはまた後日。

ピルの処方をすすめる会

平成16年8月18日(水)
ピルの処方をすすめる会が中央で発足されるらしい。会を主催する先生から、会議に出席してくれるように打診があった。当院が広島ではピルを多く処方しているためらしい。全国から30人位東京に集まって話し合うとのこと。日曜日に日帰りはきついのと、その日は広島で産婦人科の地方部会があるために丁重におことわりした。趣旨は賛成であるが。
確かに日本ではピルの普及率が極端に低い。中には生理痛がひどくて、仕事を休まなければならなくても「ピルは怖い」と言って、鎮痛剤をたくさん飲んでじっ と耐えている人もいる。どちらの薬が副作用が強いかといえば文句なく後者であるのに。第一仕事ができず寝込むのは困るだろうに。こういう人に限って、漢方薬ならなんでも安全と思っている。いつも客観的なデータを示して説明するのだが、まだまだ難しいようである。