カテゴリー 日誌

男女間のトラブル

平成16年5月7日(金)
男女間でのトラブルが多いのは、妊娠が関係している時だ。人間の本質が見えるのは争いの時だろうと思うが、妊娠があるとそれが深刻になることが多い。それに加えてお金。こういう仕事をしているといやでも色々なことが目に入る。そういう時いつも思うのはそれぞれの立場での真実である。100%悪人もいなけれ ば100%善人もいない。それぞれのエゴと相手に対する思いやりの間で気持ちは揺れ動くのである。私としてはどうしても患者さんの方を好意的に見ようとするが、どう考えても相手の男性が気の毒なケースもある。
ただ、男であれ女であれ小ざかしく立ち回って得したように見えても、もっと大いなるものから見れば結局は損も得もないように思う。人をだませばかならず自分にかえってくると思っていたほうがいい。今日も多忙な一日だった。

北山修のコンサート

平成16年5月6日(木)
連休が終わってしまった。大阪でのコンサートはなかなかよかった。さすが北山修である。長崎や愛媛など全国から50台~60台のおじさんやおばさんが集まっていた。団塊の世代がほとんどだろう。かく言う私もそのはじっこにいるのだ。最近はこれらの世代の人達がいやに目立っている。さすがに人数の最も多い世代で、きびしい生存競争をくぐりぬけてきた人だけに、そのパワーには目を見張るものがある。
今日は半日なのだが、患者さんが多かった。深刻な話はなく、ごく普通の日常にもどったという感じである。

カレンダーどおり

平成16年5月1日(土)
世の中は連休に突入だが当院はカレンダーどおり。今日は思ったより患者さんが少ない。差し迫った人と妊婦さんなどがちらほら。こういう日は合間に本を読む。夏目漱石人生論集、読むほどにすごい人物だと思う。警世の言葉も現代にぴったりで全く古びてない。思うに真理は過去、現在、未来をとわず永遠なのだろう。そしてそれを知る事ができるのはそれらの人達が遺した言葉のおかげである。先人の到達した真理、心境をうかがう事ができるのも言葉(文書)があるからだ。言葉は本当に大切である。人を理解するのも信頼しあえるのも、同時に人と人との関係を破壊するのも言葉である。
今日もダイエット無月経の人あり。ダイエットは体に悪い。それもダイエットが必要な人はせず、十分スリムな人に限ってさらにダイエットして無月経になる。困ったことだ。
明日から4連休。何をするかまだ決めてはいないが、北山修(若い人は知らないだろうが「帰ってきた酔っぱらい」などをうたい、詩も一杯書いた伝説のフォークグループの一人、現在九州大学医学部教授)のコンサートには行くつもりだ。

高齢妊娠でトライアスロン完走!

平成16年4月30日(金)
連続10日間休みがなかったので、昨日の休みは貴重だった。今日は朝から流産手術。今月は流産がいつもの月より多い。流産は誰の責任でもなく運であることを一層感じたのは、2週間ぶりに来たCさんの話を聞いたからだ。あまりに驚いたので思わず「これは皆さんに公表してください」と言ってしまった。
Cさんは2週間前に高齢初妊娠とわかり、大いに喜んでおられた。まだ初期なので1週間後に来院するようお話するも来院せず、2週間後の今日来院され順調なことを確認したが、なんとこの2週間のあいだに宮古島トライアスロンに出場され完走したそうだ。3キロメートル泳いで155キロメートル自転車に乗り、42,195キロメートルのフルマラソンを走る、それも14時間以内に!す、すごい。お腹の中の新しい命はなんて強いんだろうと思った。正常な妊娠の極限の強さを見せられた気がする。トライアスロンを完走できる人はたとえ妊娠していなくてもほとんどいないと思うが、妊娠して挑戦した人は私の知る限りでは一人もいない。もし事前に相談されていたら、絶対ダメと言っていただろう。ただ本音を言うと、胎芽(赤ちゃん)が正常なら少々走ろうがどうしようが流産することはない、と思っているのでその確信が一層強くなったといえる。
なにはともあれ次回は彼女のパワーを分けてもらい、ついでに爪のあかをわけてもらい、自分の怠け癖を治す薬にすると共に、流産の予防薬として売ろうかしらん。ああ驚いた。

うれしい出産の知らせ

平成16年4月28日(水)
世間はそろそろ大型連休に入る。そのためか今日は患者さんが多かった。1年ぶりとか2年ぶりの人もちらほら。今日クリニックに来たはがきに無事に生まれた赤ちゃんの写真があった。なかなか妊娠せず根気よく治療をしてうまく妊娠したのに、中期に流産して落ち込んでいた人。でも気を取り直して再度チャレンジして妊娠、今度は早くから総合病院を紹介していたのだ。本当に良かったと思う。喜んでいる顔が目に浮かぶようで、一番うれしい時だ。
明日は祝日で休みなので診療日誌もお休み。ちなみに予定はテニスらしきもの1、尺八の合同練習1、娘とバイクを見に行く(これは危ないからダメという意見が強く中止になるかも)ぐらいだ。

尺八を習い始めた

平成16年4月27日(火)
今日はこれといって問題のない日であった。そこで趣味の話。尺八を習い始めた。はじめは音が出なかったが、次第に音が出るようになり面白くなってきた。問題は練習する場所である。けっこう音が大きいのでたとえば自宅で吹いていると、4~5軒向こうのまがりかどのあたりから聞こえるそうだ。前後両隣の家はきっと迷惑だろう。かといって、近くの公園も人が多くてちょっと恥ずかしい。山の中に行くのは時間がかかるし、面倒だ。というわけで今はおそるおそる自宅で吹いている。吹いているとじつに気持ちがいい。昔、虚無僧が深編み笠をかぶって吹きながら門付けをしたそうだが、気持ちがわかる。もう少し上手になったらやってみたいと思うのだが、どうだろう。そのうち、本通りあたりを吹きながら歩いていたりして。

大切な問診

平成16年4月26日(月)
57歳のBさんは昨年の秋ごろから体重が減った。内科を受診して1ヶ月に渡って検査したが、異常は見つからなかった。それでも体重は増えず、夜はなかなか寝付かれない。担当医は「しっかり食べてください」と言うが、あまり食べたくないし友人が「婦人科でホルモン注射をうけたら太った」と言うので当院を受診した。ご主人が1年半まえに亡くなって、はじめの1年ぐらいはそうでもなかったが、半年前から食欲が落ちて体重が減っている。日中よりも夜の方が落ちつくが、なかなか眠れない。明け方まで起きていることもある。娘は嫁いでおり現在一人暮らし。
こういう書き方ををすると、医師であればまず「うつ病」を考えるだろう。そしてカウンセリングや抗うつ剤などを使い総合的に治療しようとするだろう。また精神科に紹介してきちんと診断治療を仰ぐだろう。でもそういう視点で診ていなければ、背景もわからないし身体的な病気の有無ばかり探して、患者さんにとっては検査はいっぱいしたけどちっとも良くならないことになる。実はこういうことはよくあり、問診だけでかなりのことがわかるのである。要はどういう視点で人を見ているかに尽きるのだろう。人を見る目を鍛えるということは、自分を鍛えるということである。自分はまだまだ全然だめだと思うが、少しづつでもわかるようになっていきたいものだ。今日はまじめなことを書いてしまった。

妊娠中の風邪

平成16年4月25日(日)
今日は日曜なので本来は休診なのだが、広島市の産婦人科当番医のため開院した。当番医は各科の開業医が休日診療を順番に行うもので、半年に一度まわってくる。いつもどんな急を要する患者さんが来るかとてぐすねひいているのだが、ごく普通の患者さんばかりで、ほっとするような、拍子抜けするような。産婦人科で最も多い緊急を要するのは妊娠・お産関係で、何か起こればお産を予定している病院へ行くだろうから当番医の所へは来ないのだろう。
実際妊娠中にはさまざまな心配があるようで、電話相談などもよくある。妊娠初期なら出血の心配が多い。あとは風邪をひいたので薬をどうしたらいいかの問い合わせも。出血については色々な場合があるので、状態によっては受診を勧めることが多いが、風邪についてはひどくないかぎり、「あったかくして安静にしてください」という。知り合いの内科の先生は「風邪?寝ときゃあ治る」とおっしゃる。私も全くそのとおりだと思う。オランダなどでは風邪をひいて受診しても、熱があれば家で冷やして様子を見て3日たってもよくならなければ来院するように話して薬も出さないそうである。日本人は薬好きの人が多く、風邪でも薬を出さなかったら、もう来てくれなくなると聞く。また、妊娠初期は薬の副作用も気になり、風邪も心配だが薬も心配だという人が多いのである。でも風邪をひいたからといって胎児に影響があるわけではなく、(ウイルスによる影響があるとしたら感染した時点で影響がありどうしようもなく、薬を使うのは有害無益である)まさに「寝ときゃあなおる」と言いたいのだが、そう言ってしまうと身もふたもないので同じようなことをやんわりと言う。もっとも、どうしても薬が欲しいという人には、さからわずに薬を処方する。開業医は患者さんのニーズを優先するのだ。
そうこうするうちに夕方6時になり、休日診療は終わりとなった。明日は月曜日でいつもと同じ診療日だ。早く帰ってビールを飲もう。

性病の患者さん

平成16年4月24日(土)
場所がらか性病の患者さんが多い。どちらかというと、性病を心配して来る人の方が性病がなくて、心配してない人の方がほんもののことが多いようだ。性病で多いのはクラミジア、淋病、コンジローマ、ヘルペスなどで、誰から染されたかわからないこともよくある。結婚している場合は、相手は配偶者のことが多いが、そのことがよくわかってない人もいて、「どうしてこうなったんでしょうね」とのんびりしている。うつした相手がよそで病気をもらってきたことに気が付いてない(?)様子。こういう時は当方もとぼけて、「うーん、まあ相手のひとも治さなければいけないから、必ずお医者さんに行くように言ってください。そうしないとあなたもいつまでも治らないからね」と言う。後で聞くと、だんなさんもすぐに医者に行って治療したとのこと。良かった。これからも夫婦仲良く暮らしていって欲しいと思う。
今日は土曜日なので夕方5時で終了。明日は当番医なので休めない。

患者さんの要求

平成16年4月23日(金)
医者は患者の要求をどこまで聞くべきなのだろうか。神戸の不妊治療の病院での男女産み分けのことで新聞報道があった件である。膣内をアルカリ性にしたり、排卵日にセックスをするなどの方法ならどこからも文句は出ないようであるが、妊卵を調べると問題らしい。こういうことはだれが決めるのか、だれの許しを得て決めるのか、その決定は正しいのか、本当に難しい問題である。これらのことは、昔からキリスト教をはじめ宗教による規制、歯止めがあった。今の日本ではマスコミを中心とした集団のコンセンサスが大きいようである。医者は科学者の面もあり、科学的な真実を知っていると思われているので、その立場から発言しているようであるがかなりあやしい部分もある。
私自身は患者さんの要求を全部かなえてあげたいが、一方ではそこまではやりすぎだという思いもある。今回の件とは違うが、たとえば進行がんで手術しても直る見込みはきわめて低いと思われる時に、患者さんが手術を要求してきた場合どうするかである。手術しても治る可能性は低く、手術による負担でかえってよくないと話しても納得しない場合どうするか。美容整形で患者さんの要求どおりにしたら、医学的に良くない時には、あるいは民間療法に過大なお金を使っていて、どうみてもだまされているとしか思えない場合にはどうするか。また、いくら思いをかなえてあげたくても、医学ではどうしようもないこともある。
今日は以上の事を考えさせられるようなことがあった。また機会があれば具体的に書いていきたい。