平成19年3月12日(月)
以前「米国医療の現場から」というタイトルでアメリカの病院からブログを発信していた岩田健太郎医師が帰国し、その内容をまとめた著書を著した。「悪魔の味方」というひねった題名の本であるが、さすがにロンドン、中国、アメリカ(ここが最も長い)で働いた経験に基づいて書いており、なかなか興味深かった。
その中で何度も強調していることは、日本はなんでもアメリカと比較しすぎるということであった。アメリカで認められることは世界で認められることと同義と思っている人が多いのでは、と看破している。ヨーロッパをはじめ他の国々はアメリカを含め他国をもっと冷静に見ており、なんでもアメリカがいいとは思っていない。特に医学の世界ではそれが顕著であるという。さらに、著者は日本の医療は総合的に見て世界の中でかなり良いと経験に基づいて述べている。
思うに、日本は孤立した島国のせいなのか、昔からどうしても力のある国々に認めてもらいたいという意識が強く、昔は中国一辺倒であり、今はアメリカがすべてになっているのではないか。イラク問題にしてももっと冷静に対処すべきで、アメリカの忠犬ハチ公になってどうするのだろう。そういえばヤンキースの松井選手やマリナーズのイチロー選手、今年入団した松坂選手などのアメリカでの動向が逐一伝えられるのも同じ心理的構造の所以だろう。
かつて日本の医師は「カルテ」にドイツ語の単語を書き連ね、病名はドイツ語で言い交わすことがアカデミックと考えた。今は英語がドイツ語に置き換わっただけで構造は同じである。明治以前は漢方が隆盛を極めていた。つまりいつも自国の言葉をそのまま使って「カルテ」を書いていないのである。それらの言葉を知らない一般の人には医師の言葉が何か高度なことを行っているように見えるからだろう。たいしたことがないものほど権威をつけたがる。欧米の医師は自国の言葉でわかりやすく「カルテ」を書いているというのに、わが国はそれではありがたみが少ないかのように横文字を使う。
これらの他国に対する孤立感、劣等意識をなくするのは難しいことだと思うが、もしモンゴル帝国、ローマ帝国、大英帝国、などのように我が国が他国と覇を競い勝ったことがあればもっと自信を持てたのではないだろうか。正邪はどうであれ勝つことは必要である。