治療法の変遷

平成18年7月29日(土)
医療にも流行があり、当時はやっていた治療法だったけれども効果がないことがわかったり、もっと優れた治療法ができたためにすたれてしまったものも数多く見られる。
たとえば子宮後屈に行われていたアレキサンダー手術。かつては生理痛、腰痛の原因は子宮後屈にあるといって後屈を治す(子宮を支えている靱帯を引っぱりあ げるだけであるが)手術を行っていた。私が医者になった頃はまだ少しは行われていたが、後屈と腰痛は無関係と言われるようになってからは、あっという間に だれもこの手術をしなくなった。ではそれまでに手術をされてしまった患者さんはどうなのだろうか。後遺症などの実害はほとんどない手術とはいえ、そのため に入院した時間および手術をうけるストレスおよびお金はむだになったのである。
無論、当時は世界的にその治療法が正しいと信じられていて、欧米へ留学して彼の地で行われている治療法を学んで帰った優秀な先人が我が国に紹介し、広まっ ていったのだろう。そのことをあしざまに言うことは決してできない。なぜなら現在正しいと思われて行われている治療の中には将来になって無駄、あるいは間違った治療法であることがわかってやめてしまうものが必ずあると思われるからである。だからといって目の前に苦しんでいる人がいても、なにもせず手をこま ねいているわけにはいかない。だからいつも心がけておくことは、この検査は本当に必要なのか、この薬は出さなくても良くなるのではないのか、本当に手術を した方があらゆる点から得なのか、などを常に自問しながら謙虚に治療することである。