無痛分娩に思う

平成29年10月6日(金)
今日の新聞に、無痛分娩の際の麻酔ミスにより妊婦が死亡したとして大阪府の産婦人科医院の院長が業務上過失致死容疑で書類送検されたという記事が載っていた。そういえば少し前にも京都でも同じようなことがあり、夫が医院に対して莫大な金額の損害賠償請求をしているという記事もあった。
昔から「お産」は女性にとってまさに命がけの大仕事で、我が国でも70年前は600人に1人は母体死亡があったのである。当時は田舎では家に産婆さんを呼んでお産をするのが普通で、病院でのお産は少なかったこともあるだろうが「お産」とは本来何が起きるかわからないものであることは、産婦人科医なら肝に銘じていることである。今は母体死亡は20000人に1人になったが命がけであることに変わりはない。欧米では無痛分娩が結構行われているようであるが、我が国では6%でまだ少数である。「お産」という自然現象に伴う「痛み」はヒトが許容できる範囲内であるはずである。そして「痛み」はこれ以上だったら命が危ないよと知らせてくれる指標でもある。それを麻酔でなくすることがいいこととは思わない。もし無痛分娩をしたいのならその危険性を納得してするべきで、医師の側も万全の態勢で行わないといけない。そうすると高額になるのは必然でそうでなければ安全にできるはずがない。
「お産」がどんなに危険ととなり合わせか知っておいてもらいたいと産婦人科医は思っている。そしてどんなに技術も持ち誠意をつくしてもうまくいかないことがあることも。