内診台の入れ替え

平成25年6月7日(金)
木曜日の午後は休診なので、内診台の入れ替えを行った。当院には内診台は2台あり、1台は主に手術に使うので使用頻度はそんなに多くないが、毎日の診療に使う方はさすがに不備が生じてきたので買い替えることにしたのである。
なにしろ250kgの重量なので入れ替えも大変であるがそこはプロ、うまいやり方があるものだと感心していたら新台を入れる時に問題発生。古い台より横幅が3センチ広いためドア(当院は使いやすいように引き戸にしている)を通らないことがわかった。本来は業者があらかじめ調べておくべきなのだろうが気付かなかったのである。仕方がないので当院の内装をしてくれた業者の人に連絡、たまたま近くにいてすぐに来てくれて引き戸をバラして台が通るようにしてくれたので事なきを得た。業者の人が神様に見えた。
木曜日の午後はそれでなくても忙しいのに、こんなことで予測以上の時間をとられるのは困る。歯科にも緊急予約しなければならず(歯が痛いのである)、夜は尺八の練習会がある。結局予定を一つ取りやめて一日を終えた。
今日から新しい台、使い心地はなかなかよさそうである。

子宮がん検診のサイクル

平成25年5月30日(木)
米国では子宮がん検診は3年に1回を推奨し、子宮がんの原因となるウイルスがいなければ5年に1回でよいとのガイドラインを発表した。このことは従来の常識から考えると重大な意味を示している。
今まで「がん」は早期発見早期治療が最良であるとの強い思いがあり、そのために検診が推奨され症状のない「がん」が発見され治療されてきた。それで生命予後が伸びれば確かにいいことに違いないだろう。ところがいくら早く発見・治療しても、総死亡率が改善したという証明は世界中になく、むしろ治療によるダメージや後遺症などに苦しめられる人が多くみられることに気付かされるようになった。そのことに対して10数年前から近藤誠医師は「むだな検査・治療をすべきではない」という医学会から総スカンを食うような孤高の戦いをしてきたが、がんを切除すれば切除しないよりも長生きできる根拠がないという彼の主張は実証レベルでは結論が出ているのである。
今回の米国のガイドラインはこの主張の正しさを認めることになっていて、今後世界的には近藤氏の主張の方向に進むと思われる。天動説が正しいと信じられていた時代にガリレオが「それでも地球が太陽の周りをまわっている」とつぶやいたように。

マイブーム

平成25年5月24日(金)
文芸春秋9月号の「ジブリ名作の舞台裏を話そう」という記事を読んで、宮崎駿監督の作品は後世に残るすばらしいものだと改めて思った。そこで、「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」の3本のDVDを手に入れ、寝る前にウイスキーの水割りをちびちび飲(や)りながら鑑賞することにした。それまでは桂枝雀にはまっていたのだが、ある日ふと興味が薄れてきていたのである。
ところが初めの場面をしばらく見たあと気が付いたらエンディングマーク、いつの間にか眠ってしまっている。今日こそは最後まで見ようと思ってもなかなか難しく、結局1本見るのに何日もかかってしまった。それにしても良くできたアニメだと思う。小学生の頃、ディズニーのアニメを見た時の感動とは少し異なるが、どこかなつかしい気持ちにさせてくれる。とくに「トトロ」は小さい頃育った田舎の風景そのものである。
今回のジブリブームはあまり長くは続かないだろうが、いつも何かマイブームがあるのは楽しい。

広島ミシュランに思う

平成25年5月17日(金)
昨年からうわさのあったミシュラン広島編が発売されることになった。まだ詳しくはわからないが、三つ星は一軒だけで、季節料理「なかしま」だそうである。この店をはじめ二つ星のてんぷら「天甲本店」など、いずれも何度か訪れている。どの店も確かに美味しく総合的に見ていい店だとは思う。店主も励みになるだろうしミシュラン効果で客は増えるだろう。実際、発表の翌日には「なかしま」の予約は来月まで埋まったそうである。
ただ、自分も長いこと広島で食べ歩いていると、自分の好みの店はいつの間にか決まってくる。それらの店を基準にして、人から聞いた店や新たにできた店を訪れて評価するわけであるが、1回だけでは難しく3回行ってお気に入りになるかどうか決まるように思う。1月に「天甲本店」に行った時店主からミシュランの調査員が来たことを聞いたが、1度は一人で、2度目はフランス人と二人で来て掲載の許可を求めたそうである。いろんな店を調べるのだから何度も訪れるのは難しいかもしれないが…
掲載された店はいずれもいい店だと思うが、他にもいい店はたくさんある。行きつけの店が載ってしまうと客が押し掛けるので予約がとれなくなる。当然、自分を含め常連客の足が遠のく。せっかく長い時間を通していい感じで通っていた店に行きにくくなるのはまことにつらいことである。ミシュラン、良し悪しである。

おならについての考察

平成25年5月10日(金)
広大感染症科、大毛宏喜教授の「腸内細菌との上手な付き合い方」というタイトルのユニークな講演があった。ヒトは飲食の際、同時に空気を飲み込みその一部が腸を経ておならとなる。教授が米国に留学していた時に、腸内細菌とおならの関係、においの原因、においの消臭法など研究したことを面白おかしく講演された。
一日のおならの量は男女共に約700ml、なぜ臭いかというと、食物に含まれるイオウと腸内細菌が関係している水素により産生される硫化水素が原因で、同時に出るメタンガスなどは無臭だとのこと。硫化水素はシアン化合物と同じくらい猛毒でほんの少量でも強烈な悪臭がするという。
大毛教授のユニークなところは、この強烈なにおいを消すためにさまざまな実験をした結果、活性炭をブリーフ型パンツにつけるとほぼ完全に消臭できることを発見し、商品化を考えたことである。帰国後、国内のメーカー50社以上にあたったところ、活性炭を織り込んだ布は技術的に作れないと言われた。それでもあきらめずに調べていたら、活性炭より効果は落ちるけれど消臭できる特殊な樹脂を作っているメーカーがあり、試行錯誤の末めでたく消臭パンツが誕生した。その応用で消臭靴下、消臭カバー布、介護の消臭グッズなどが全国に出回っているが、教授は公務員なので1円もお金は入らないという。でもアイデアを出すのが好きなので色々なことを考えているそうで、柔軟な考えの人の話は面白い。

鹿児島から博多

平成25年5月2日(木)
連休の前半に、かねてより乗ってみたかった九州新幹線さくらで鹿児島へ行った。2時間半の旅であるが、車内は1列4席なのでゆったりとして快適である。維新ふるさと館で鹿児島の歴史を学んだ後、レンタカーで城山に登り市内から桜島を一望、フェリーで桜島へ。フェリーのうどんが美味いとの情報で1杯550円の天ぷらうどん、だしが効いてじつに美味であった。島内をドライブ、絶景ポイントがいくつもあったが、なんといっても噴煙を上げている桜島の姿は活火山だと実感させられる。
大隅半島経由で霧島神宮を訪れる。やたら若者のカップルが多いのが不思議だったが、九州一のパワースポットとのことで納得。夕刻本日の宿、妙見温泉「石原荘」に到着、早速温泉に入る。今回の鹿児島行きはこの宿の予約が取れたからでもあるが、天橋立の文殊荘とは違ったもてなしと美味しい料理であった。敷地内の山中に「熊襲の穴」と呼ばれる巨大な洞窟があり日本書紀に記載されているとか…
翌日は車で九州自動車道から阿蘇へ、火口まで行くことができたが、なるほど九州が「火の国」と呼ばれるわけである。夕方博多着、阪急デパートの地下で干物を仕入れてお薦めの居酒屋「ひろ家」で一杯飲んで新幹線、目が覚めると広島だった。気候もよく絶好の旅日和であった。また行こう。

木曜日の午後

平成25年4月26日(金)
木曜日の午後は休診にしているが、日曜・祝日以外での休診はここだけである。唯一の完全にフリーになれる時間。他院の受診や官公庁の用事などはこの時間でないとできない。いきおい、ちょこまかと忙しくなる。
昨日は午後1時に診療を終え、グランドタワーの「三嵋」で昼食、隣の部屋に大声でしゃべる初老の女性の集団が…あまりのうるささに部屋を変えてもらったが、同窓の集まりとか。その後ウオーキングシューズと服を買ってスポーツクラブでテニス。クラブの風呂に入り着替えてアステールプラザで尺八の練習、9時前に帰宅し晩酌兼夕食。もう一度入浴し、水割りをちびちび飲みながらGAORAでウイリアムス姉妹のテニスを見て12時就寝というやや動きの多い一日であった。
移動はすべて楽チャリで行ったが、電池の残量が少なくてやきもきした。結局、自宅まであと500メートルで電池切れ。急に重くなった自転車を漕いで帰宅、楽チャリは実に便利であると実感した。

保険の審査

平成25年4月19日(金)
国民健康保険(国保)の審査員を命じられて2期4年、来月でやっと任期が終了となる。うれしいというよりほっとしている。県内の医療機関より提出されるレセプトを毎月専門の係員が点検し、病名に適応のない治療・薬剤などが使用されていると減点するが、これらが適正に行われているかまた医療機関が適正な医療を行っているか審査する仕事である。広島県の産婦人科では国保の審査員は2名である。レセプト枚数は社会保険より少ないとはいえ、わずか2名で県内全医療機関の外来・入院の国保のレセプトを点検するわけで、正直しんどい仕事である。
それぞれの医療施設の医師が真剣に行っている治療に対して、自分ごときが審査することなどできるはずもないが、だれかがやらねばならないので仕方なく引き受けたわけであるが、毎月この数日は気が重かった。この4年間は毎月、レセプトの審査が終わるとほっとするけれど、あっという間に次の月の審査が巡ってくる。それも終わると思うと本当にせいせいしているのが本音である。
審査員をしていると、それぞれの医療機関の方針や医師の治療に対する考え方、治療の姿勢などがレセプトを通じて伝わってくる。さまざまなことを考えさせてくれた貴重な4年間であった。

吹雪の「ファーム・ノラ」

平成25年4月10日(水)
広島市内の桜は盛りを過ぎたので、県北の桜はどうかいなと休日に北へ向かうことにした。予報では市内は雨50%とのことだったが、出発時は晴れており天気予報ははずれたなと思っていた。191号線を、桜を愛でながら森のレストラン「ファーム・ノラ」を目指して北上した。ここは冬の間は雪に閉ざされているので営業せず、春になったらぼちぼち始める趣味のような手造りのファームレストランである。
戸河内インターから191号線に入った頃から小雨となり、三段峡あたりでは外気温も下がってきた。そのうちに小雨はみぞれに変わり、花街道から深入山にかけて雪となってきた。見ればまだ根雪が残っていて道は完全に雪道になっている。外気温は0℃~1℃、滑らないようにわだちの跡を慎重に運転し、やっと目指すレストランに着いた。まわりは一面雪景色で、営業はしていたが客は自分たちだけで、あまりの寒さに店主がストーブの他手かざしにと七輪に炭をおこしてテーブルに置いてくれた。この時期の雪は珍しいそうで、次々にかかってくる問い合わせの電話に対応していたが、さすがに来店を断念する人が多いようだった。
料理を待つ間も外は吹雪のように風が舞い、無事に帰れるだろうかと心配したことである。久しぶりの石窯ピザ、鴨の燻製、ボルシチなど美味しくいただき店を後にしたが、市内からわずか2時間でこれだけの気候の違いがあるのは面白い経験であった。

「解剖学はじめの一歩」

平成25年4月3日(水)
表題は東大医学部の超人気講座をそのまま本にしたもので、13章で構成されており実にわかりやすく簡潔にまとめられたすぐれものである。たまたま見つけて読んでみたがその面白さと内容の深さに脱帽した。
著者は坂井建雄教授で、あの養老孟司教授のあとを引きついで東大医学部健康総合科学科で解剖学を教えて18年、他学部の学生まで聴きに来る超人気講義となり、請われて講義を録音してそのまま本にしたものである。人体の仕組みを簡潔にまとめているが、その背景には膨大な知識と研究成果が感じられ、優れた人は難しいことをわかりやすく説明できるものだと思ったことである。遥か昔、学生時代の解剖学の講義にこのような講座があったら、ちっとも面白くなかった解剖学が好きになっていただろう。人体の関するさまざまな知識の断片がみごとにつながり、人体が動き出すようなそんな気持ちになったに違いない。医療職をめざす人だけでなくそれ以外の人でも必携の書物である。