謹賀新年(平成26年)

平成26年1月4日(土)
毎年1月4日から診療スタートすることにしている(4日が日曜日なら5日から)。今日は土曜日、明日は休みだけれど本日から診療開始である。いつもながら休み明けは心技体が整うまでに時間を要する。それでも午前中には完全復活、矢でも鉄砲でも持ってこいという心境である。
元旦は護国神社へ初詣、おみくじは末吉。3日は故郷へ帰る途中、山陽道が通行止めのため2号線を迂回したが故障車のため大渋滞、いつもの倍時間がかかった。新春からあまり縁起が良くないのがいささか心配ではある。昨年からの腰痛は完治していないけれど気持ちをいれかえて納得の年にしたいものである。

平成25年をふり返って

平成25年12月27日(金)
今年もあと1日、土曜日で診療終了になるのでこの1年のクリニックをふり返ってみた。
新患の人数は1年でほぼ千人でこれは開業以来多少の変動はあるけれども16年間変わらない。以前は電話帳を見てくる人が多かったが今はネットに替わってしまっている。恐るべしネットの力である。
産経新聞に連載している内科の医師によれば、患者さんで一番多いのは健康診断(人間ドック)だそうであるが、当院は産婦人科という科の性質上若い人が多く健康診断が少ないのはありがたいことである。というのは、健康診断による寿命の伸びが証明されていない現在、健診の一環で来院される人が気の毒だと思うからである。また、老化による変化は緩和することはできても元に戻すことは難しく、そういった患者さんが多いと治せないことのストレスがたまると思われるが、それもない。今年はやや中絶術が増えたが均すと例年どおりで、ピルを求める人は着実に増えている。
今年の最大のトピックは、近藤誠医師の理論が静かな広がりをみせていることである。彼の理論どおりの医療になると、大きく医療の内容が変わると思われる。当院の行っている医療は彼の理論に沿った部分が多く、このままのやり方でいくことができる。ありがたいことである。
いずれにせよ今年一年ありがとうございました。みなさまに感謝。

世界はだいたい日本の味方

平成25年12月20日(金)
表題は新潮45、1月号の特集である。日本に住んでいる外国人から見た日本という国と日本人について、14人のさまざまな国の人たちが書いている。さらに3人の中国人の若者が匿名で日本について話し合う。日本に対して好意的な人を選んでいるのだろうが、実際彼、彼女たちが言っていることは的を射ている。曰く「すべてがそろっている奇跡の国」「この国にいると心穏やかになれる」「日本はいい国である」「世界に誇る伝統文化とお出し汁の味」「スイスにはない楽しさと自由」「ありがとうとお互い様の心」「やさしい人々が住む安全な国」「緑豊かな自然、四季を感じる暮らし」など。
ロシア、欧米の国々が開国をせまり、それまで鎖国を貫いていた徳川幕府も外国と付き合わざるを得なくなった。レベルの高いこれらの国々に対処するために、明治以降日本人は一生懸命頑張ってきたと思う。それまでの日本の制度をいったん白紙に戻し、議会制民主主義を取り入れ憲法、民法などすべてを欧米にまねて作り上げ、さらに工業化も進めた。その後色々なことはあったが、世界の多くの人たちがうらやむような現在の国を作り上げてきたのである。
「世界はだいたい日本の味方」というのは、隣国の日本に対する敵意と仕打ちを苦々しく思っている多くの日本人への激励の言葉だろう。心強いことである。

製薬社員の子宮がんワクチンの論文

平成25年12月12日(木)
報道によると子宮頸がんワクチンを販売する外資系の製薬会社の社員が、同社の所属を示さず、講師を務めていた東京女子医大の肩書のみでワクチン接種の有用性を紹介する論文を発表していたことがわかった。この論文は、ワクチン接種の費用が多くかかっても、発症や死亡をおさえることによる利益が上回るとした内容である。これらの論文を参考にして厚労省はワクチン無料接種の方針を打ち出したという。
製薬会社が自社の製品を、たとえ法外な値段でも利益のために売ろうとするのはあたりまえである。問題なのは、このワクチンが本当に癌による死亡を減らすことができるのか不明のまま、学者や官僚、政治家がこのワクチンを導入したことである。さらに、万が一効果があるとしてもワクチンの法外な値段になぜ異を唱えないのか。国民の税金を使ってたいした効果も期待できないものを焦って導入したあげく、副作用が想像以上にあったので一時中止にするとは。二重の意味でスカタン(古い言葉です)である。
現在、ワクチン接種が中止されていることは同慶の至りである。

腰痛再び

平成25年12月6日(金)
11月の初め頃の朝、イスから立ち上がろうとしたら腰に違和感がある。持病の腰痛を予感させる違和感、その日はとにかく腰に負担をかけないようにした。それから1カ月、日常生活に問題はないがスポーツは無理なので運動は歩くことだけである。情けないが仕方ない。
腰痛とのつきあいは長く、30代のぎっくり腰以来ゴルフが自分にとって最悪だったと思う。40代でゴルフの練習に熱中していた頃、コンペの最中に歩けなくなり仕事は這うようにしてなんとかこなしたが、治るのに半年かかった。ゴルフは二度とやらないと思っていたのに、のど元過ぎればなんとやらで数年後ちょっとやってみたが、やはり腰に違和感があったので一旦中止。遊びのテニスをやっていたが、このスポーツは無理をしない限り問題なかった。
一昨年、またもや懲りもせずゴルフを始めようと思い立ち、道具をそろえ練習をしコースに出ることにして半年後、うたた寝の姿勢が悪かったのか腰痛再発、ゴルフどころではなく仕事の合間はすべて横になって過ごさざるを得なくなった。自業自得である。心底ゴルフを始めたことを後悔して、生涯二度とゴルフはしないと誓ったが、もう遅いのかもしれない。神様も「おまえみたいな何度も凝りないアホはこらしめてやる」とばかり、腰痛という魔の手からのがれられなくなるのかもしれない。

妊娠中の蛋白尿について

平成25年11月29日(金)
北海道大学産婦人科教授、水上尚典氏の表題の講演があった。以前は妊娠中の蛋白尿、むくみ、高血圧を妊娠中毒症といっていたが、現在は妊娠高血圧症候群という病名になり、高血圧と蛋白尿を症状とする疾患として対処されている。この疾患の怖いのは、胎盤の早期剥離がおきることで、そうなれば胎児ばかりか母体の命も危いことである。
人間の体はバランスが大切で少しでもバランスが崩れると取り返しのつかないことになる。ある域値まではなんとか正常に働いているが、域値を超えて症状が進むと回復不可能になる。妊娠によるこれらの病態は妊娠を中止すること、つまりお産にもっていくことで治るのであるが、域値を超えてしまうとそれでも回復できなくなる。蛋白尿が先行して高血圧になる場合は妊娠高血圧腎症になりやすく、妊娠中の蛋白尿を軽く見てはダメである。
多くの妊娠は順調に経過するので、いたずらに心配することはないが一旦バランスがくずれてしまうと上記のような事態になるかもしれない。妊娠、出産は最も大切なめでたいことであるだけに危険と隣り合わせで、よりいっそうの慎重な対処が必要だと思ったことである。

現地同門会

平成25年11月22日(金)
岡山大学の平松教授を迎えてシェラトンホテルで産婦人科広島同門会が行われた。毎年、この時期に開催され、平松教授による大学での最近の話題などの講演がある。かつて岡大は中四国に関連病院をたくさん持っており、教室から医師を派遣していた。どの県にも多くの同門の医師がいて、広島県では広島市、福山市の2か所で現地同門会が行われていた。そのほか各県でもこの時期に会が開かれるので、教授は大変だっただろうと思う。現在も同じように開催されてはいるが、医局制度が変わり産婦人科の入局者数も減って、今までのように各地の病院に医師を派遣できなくなってしまった。その結果、若い医師が減って会員の高齢化が進んでいる。
広島市では広島市民病院、広島赤十字病院、逓信病院、中電病院は岡大から医師を派遣していた。今は広島市民病院と逓信病院だけになってしまった。これは時代の流れであるが、かつて自分が高知県、香川県、兵庫県などの病院に派遣され、貴重な経験ができたことが現在の診療につながっていることを思うと、医局制度を含めた体制のうつろいがさみしい。

日々是好日

平成25年11月15日(金)
今年は秋が短くもう冬支度が始まったかのようである。先週の連休には名古屋に行き、熱田神社、名古屋城、徳川美術館を巡った。名古屋観光ははじめてだったが、圧巻はトヨタ博物館とトヨタテクノミュージアムで、その規模と内容に圧倒された。結構歩き回ったせいか休み明けの朝、イスから立ち上がろうとしたら腰に違和感を覚えたので大事を取り、テニスも2週連続休んでいる。
先日、市内主要病院の外科部長の大腸がんについての講演があった。術後、抗がん剤を使うとのことであったので、いい機会だと思い「巷では抗がん剤は効かないという本が売れていて、読んでみると実に説得力があると思うが見解はどうなのか、また、間違っているならなぜ反論しないのか」質問してみた。それについての回答は、現在、抗がん剤を使うのは標準治療になっている、20人に1人は延命効果があるので、本人に決めてもらっている、とのことだった。答えにくそうだったので懇親会の時に話してみたら、「抗がん剤は効かない」という近藤誠医師への共感ともいえる本音などが聞けて有意義であった。
寒くなればお酒がいっそうおいしくなる。おでん、鍋、燗酒がたまらない季節になってうれしい。

どんな病気でも後悔しない死に方

平成25年11月8日(金)
表題は緩和医療医、大津秀一氏の著書である。氏は千人を超える人たちの緩和医療に携わってきた経験から、終末の医療について述べている。人は必ず死ぬので、最期を迎える時にどうしたら後悔しなくてすむのか、病気ごとにわかりやすく説いている。一貫した主張は「ほとんどの病気には治療が効かない段階が来る、そこからの苦しいだけの延命治療は控えて、自分のため家族のための最後の時間は大切にすべき」と説く。
氏はやすらかな最期が迎えられるように本人、家族と真剣に話し合い方法を探る。一人ひとり状態が異なるわけだから、それぞれの解決策は異なるわけである。じつに考えさせられる内容である。確かに自分たちもいずれ必ず死ぬのだから、日頃からどのようにするか考えておくことは必須である。そのための参考書としてすぐれた本だと思う。尤も氏の本音だと思われるが、「自分の理想とする死に方は、平均年齢まで生きて普段から皆に、ありがとうな、おじいちゃんはそのうち死ぬから後は頼むな、と言い含めある夜心疾患で寝ている間に苦しまず亡くなる」というものだが、これは宝くじに当たるぐらい難しいだろう。

ホルモン補充療法の勧め

平成25年11月1日(金)
東京歯科大学市川総合病院産婦人科教授、高松潔氏のホルモン補充療法(HRT)についての講演があった。氏はわが国のHRTガイドライン作成の責任者である。更年期を過ぎると女性ホルモンが出なくなり、自覚することは少ないかもしれないが全身さまざまな部位で老化が進む。これを防ぎQOLを高めるために、以前より女性ホルモンを補うHRTが欧米を中心に行われており、アメリカでは20世紀後半には600万人の女性が使っていた。
ところが、WHIなどの検定でその効果が疑問視され、一時使用が控えられていた。それでも更年期障害の治療には最適であり、骨粗鬆症を防ぐにも有効なので世界中で様々な大規模検定が行われその結果、使用開始時のきちんとした検査とフォローがあれば、QOLを高めるためにも使用を勧めるとの結論が出た。氏は大学の関係で歯科の医師たちともつながりがあり、HRTは顎骨の骨密度を増やし歯が抜けるのを防ぐという。
20年以上前からHRTは理にかなったすばらしい方法だと思い勧めてきたが、上記の流れで一時控えていた。これからは意を強くして大いにHRTを勧めていきたいと思う。