日付別記事一覧 2019年11月15日

「人体誕生」

令和元年11月15日
表題はブルーバックスから出版された北里大学名誉教授、山科正平氏の著書である。ブルーバックスは日進月歩する科学の分野を一般の人にもわかりやすく紹介するシリーズものである。「人体誕生」は直径わずか0.1ミリの受精卵が猛烈なスピードで分裂・増殖し37兆個からなるヒトになる。その過程をすべての見開きの片側のページにきれいなイラストを載せて、本文と合わせて一般人にもわかるように丁寧に説明してある。かつて学生時代に習ったけれどあまり興味を持てなかった「発生」が実にわかりやすく、当時この本があったらもっと興味を持って学習したことだろうと改めて思った。以前、順天堂大学教授、坂井健雄氏の「解剖学はじめの一歩」でも思ったことだが、優れた講義・解説は内容が難しいことをやさしく興味を持たせる力がある。「発生」も「解剖学」も医療職には必要不可欠のものであるが、無味乾燥な教科書では興味深いどころか試験があるので無理やり覚えなければならない鍛練のようなものになってしまう。それが山科教授や坂井教授の手にかかれば魅力的な講義、すばらしい本になる。「人体誕生」は歴史に残る名著ではないだろうか。