月別記事一覧 2019年2月

計画分娩の論文

平成31年2月21日
医学雑誌を整理していたら「計画的日中分娩法開発への道程」と題した、防衛医大初代教授、加藤宏一氏の論文が出てきた。これは「産婦人科治療」2009年10月号から3回にわたって掲載された非常にユニークな優れた論文である。
産科医にとってお産を昼間に計画的にできることは、安全性の面からも肉体的な疲労の面からも望ましいことである。もちろん妊婦さんにとっても産む日がわかれば予定も立てやすいし、昼間に生まれれば安全で深夜料金などの加算もなくなる。いいことずくめなのだが問題は安全にちゃんとできるかである。従来から行われている方法では、時間がかかったりうまくいかないこともあり結局帝王切開になるなどいろいろ問題があった。
加藤教授は陣痛開始から分娩終了までのプロスタグランディン(PG)の子宮組織内の変化を調べた結果、子宮頸管を熟化させるのはPGE2でその後PGF2αが陣痛に関与することを突き止め、PGE2座薬→PGF2αによる分娩誘発を試み、分娩までに時間も短く、痛みも少なく安全に行うことができたことを論文にして、氏の在職中すべて計画分娩がうまくいったことを発表した。
PGE2については産科医の間では非公式であるが、局所的使用で非常に効果があることは知られていた。ただ、この薬を製品化する製薬会社がなくてせっかくの研究もお蔵入りになっているのは実に惜しいことである。薬として認められるためには煩雑な手続きが必要で、製薬会社も無理だと思っているのだろう。妊婦さんにとっても分娩施設にとっても素晴らしい方法なのに惜しいことである。

伊武雅刀のCD

平成31年2月14日
YMOスネークマンショーのCDを聴いていたら伊武雅刀のCDを聴きたくなった。「伊武のすべて」のタイトルの2枚組を持っているので久しぶりに聴いてみた。20代のころ初めて聞いたスネークマンショー「咲坂と桃内のごきげんいかが123」での小林克也との掛け合いの面白さに惹かれ伊武雅刀のファンになったが、氏は声優よりも俳優としての地位を固めていい味を出している。声優としては「宇宙戦艦ヤマト」のデスラー総統、「こち亀」では大原部長、テレビ番組の「空から日本を見てみよう」ではくもじいを担当しているが、声の良さと何とも言えない味はぴか一である。
CDのトップは1983年に発売された「子供たちを責めないで」で、サミー・デーヴィスJrの同名の曲を日本語に吹き替えたものであるが、そのままでは面白くないということで、当時の若手の放送作家に作詞してもらいラップ風にして評判を得たものである。冒頭の歌詞は「私は子供が嫌いです。子供は幼稚で礼儀知らずで気分屋で~甘やかすとつけあがり放ったらかすと悪のりする…」なので初めはシャレのわからない人たちから「本当に子供が嫌いなのか」と言われたらしいが、よく聞くとそうでないことがわかる。一度聞いたら忘れられない名ラップであるが、この若手放送作家の名前は秋元康だった。さすがであるが当時いろいろやって楽しんでいる空気が伝わってくる楽しいCDである。

向き不向き

平成31年2月7日(木)
何事にも向き不向きはある。スポーツでいえば概して運動神経のいい人はなんでもうまくできるけれど、どうしても苦手な分野もあるだろう。ボクシングでは国体に出られるくらいの能力があるのにゴルフは苦手な友人もいたし、他のスポーツはあまりできないのにゴルフはうまい人もいる。学問についても理数系は抜群でも人文系は苦手な人もいるしその逆もある。
楽器の演奏でも向き不向きは当然あるだろう。下手な尺八を吹いているが一向に納得する音が出ない。他の楽器はどれもこんなにとっつきにくいことはなかった。でも始めたからには「石の上にも三年」なのでもう少し頑張ろうと思いながらやってきたが、なかなか上達しない。向き不向きのせいにしたくないので努力してきたけれど最近、自分はこの楽器に向いてないのではと思い始めていることに驚いている。楽しむために始めた楽器であるが、楽しめないのは努力不足なのか向いていないのか。

産婦人科研修会

平成31年2月1日
血管エコー検査の専門家、松尾汎医師による深部静脈血栓症についての講演と大阪大学の上田豊講師による子宮頸がんについての講演があった。産婦人科の講演や勉強会は実に多く、毎月何回も行われていて広島の産婦人科医はよく勉強しているものだと感心している。ただ、これだけ回数が多いと話題も限定されてきて同じような話が繰り返されるのは仕方ないことである。
今回の深部静脈についてのエコー検査の話は、血管の専門家によるものなので非常にわかりやすくためになった。子宮・卵巣・胎児などのエコー検査はいつも行っているのでいいのだが、血管については専門でないのでよくわからなかった。深部血管エコー検査のやり方を実際にやって見せてくれたので、後で自分でやってみた医師も多かったのではないだろうか。このように自分にとって新しい知識を得ることは有益で刺激になり、毎日の診療に生かせるのでありがたいことだ。講演会の多くは診療後の夜にあることが多いので、疲れているときは億劫になるけれど、できるだけ出席するようにしようと思っている。