月別記事一覧 2017年5月

新潮45特集「私の寿命と人生」

月刊誌新潮45は興味深い記事が結構見られるので注目しているが、6月号の特集「私の寿命と人生」は共感することが多かった。著名人たちの現在の状況や死生観などが述べられているが、医師で作家の久坂部羊氏による「実際の長生きは苦しい」は高齢者医療に携わっている氏の本音であり腑に落ちる内容である。元気のままで長生きできると思っている人が多いがそれは夢想であり、実際は体が弱り機能が衰え、生き物としてダメになっていくのを実感するのが長生きだという。がんにせよ心臓・脳血管障害にせよ老化によるものなので自然の寿命なのである。それをなまじ病院などに行けば無理やり死を遠ざけられ想定外の苦しみを味わうことになる。病院に1,2か月通っても良くならなければ医療は無力とあきらめたほうがいいという。作家で津田塾大学教授、三砂ちづる氏の「末期ガンの夫を家で看取る」も、昔から生まれるのも死ぬのもあたりまえのように家で行われていたことで、生も死も身近なものだったのだと実際に夫を家で看取ることで実感したという。夫は痩せてしまい食べられなくなっていたが、最後まで今日死ぬとは思っていなかったと思うし、亡くなるその日まで普通に話して心を通わせることができ、そしてふっと向こうに行くように死が訪れたという。
特集の最後に102歳で現役のフォトジャーナリスト笹本恒子氏を紹介している「100歳の肖像」という記事は、それまでの普通の人の老いの困惑、寿命についての記述と比べてあまりの違いに驚いた。笹本氏は100歳を超えても元気で仕事をしており、あの有名な現役医師、日野原氏と双璧をなす生命力があり、まさに持って生まれたものという他はない。寿命にはさからえないとあらためて思った次第である。

ER(緊急救命室)

平成29年5月19日(金)
アメリカのテレビドラマには面白いものが多く、このERも職業がらずいぶん楽しませてもらった。何年かに一度衝動的に見たくなることがあり、昨夜はブックオフで1シーズン分が3000円ぐらいで買い置きしていた中古DVDセットの第2シーズン第1話を見てしまったら次が見たくなって、結局遅くまで見る羽目になってしまった。
ドラマERはアメリカで1994年から2009年まで放映され全部で15シーズンあり、日本ではNHKなどで放送されて我々が見たわけであるが、テレビ番組をそのまま見るのは時間的に難しいことがあり当時はツタヤでビデオを借りて見ることが多かった。その後DVDになったが、一回借りると続きが見たくなって結局全部借りてしまうことになるので、ブックオフの中古DVDコーナーで安く売っているのを見つけて何シーズン分か買っておいた。あらすじはわかっていてもまた見たくなるのは内容・設定・登場人物の演技などすべてのレベルが高いからだろう。初回は廃院になった病院を使って撮影したらしいが、すぐにセットを作って長期にわたっての放映にそなえたようである。実際全米で視聴率1~3位を何年にもわたって獲得していたという。作品を通じて我が国とアメリカの医療内容や考え方の違いなどが見えてきて実に興味深い。実際にアメリカでERで仕事をしていた医師が「ほぼあの通りです」と言っているが、あんな激しい職場だったらやってられないと思うがアメリカ人はタフなものだ。また続きを見ようと思う。

「文豪の素顔」

平成29年5月12日(金)
表題の本は写真をふんだんに使って明治・大正・昭和の文豪と言われる作家たちのエピソードを紹介したもので、既刊の「文豪の家」「文豪の風景」に続くシリーズ第3作である。樋口一葉から山本周五郎まで31名の作家について掲載しているが、見たことのない写真がたくさんあり結構楽しめる。芥川龍之介自身が気に入っていた若き日の写真はテニスの錦織圭選手にそっくりだったり、宮沢賢治と妹トシの幼い頃の写真とその妹が教師になったころの写真(その後すぐに亡くなるのだが)など興味深いものが満載である。
現在では「文豪」という言葉は使われなくなったのでこの言葉に違和感のある人は多いと思う。「文豪」という言葉にふさわしい作家の筆頭は夏目漱石だろうが、確かに当時の最高の頭脳を持ったオピニオンリーダーであり、人生を深く見つめ身を削るようにして作品を発表し49歳で亡くなったがいまだに根強い人気がある。掲載されている31名の作家で長命の人は少なく、樋口一葉は24歳、石川啄木は26歳、宮沢賢治でさえ37歳で亡くなっている。当時は結核で亡くなることが多かったとはいえやはり文章を書く仕事は健康にはよくないのだろう。
自分がかつてこの本に載っている作家たちの作品を読んだ頃のことを思い出しながら写真とその解説文を見ると、何とも言えない面白さがある。

三連休

平成29年5月6日(土)
当院は暦通りなので4月29,30日は休みだが5月1,2日は開院、3,4,5日は休みで6日の今日は開けている。30日は休日診療の当番のため開院していたので長く休んだという実感がない。国内はいいけれど海外旅行に興味がないので大型連休にしてまで行こうとは思わないからこれでいいのである。1か月前に急に思い立って、是非見たい美術展が開かれている福岡・佐賀に行こうと思ったけれどちょうど博多どんたくと重なっていたため、JTBに行っても宿が取れなかったので、今回は近場でごろごろすることにした。
3日は半年ぶりに弥山に登ったが前回より足が疲れて日頃の運動不足を思い知ったわけである。それでも山頂からの眺めはすばらしく汗をかいた後のビールは最高でこのために登ってきたといってもいいぐらいだった。4日は息子も参加している高槻市ジャズフェスティバルを聴きに大阪に行ったが、趣味でやっている社会人バンドが派手なパフォーマンスをしていて面白かった。夜はかねてから再訪したいと思っていた店主が広島出身の「島之内一陽」の予約が取れたので大いに期待して行く。実はこの店の予約が取れたので高槻まで来る気になったわけであるが、期待にたがわずどの品も吟味工夫がなされていておいしい上に接客もよく、この店が広島にあればと思ったことである。5日はそれこそ近場でごろごろ、かくして連休は終わってしまったが十分リフレッシュできた。