平成28年11月18日(金)
九州大学の田口智章教授による「新生児外科における出生前診断の役割と産科医の連携」と題した講演があった。小児外科専門医は外科専門医の5年以上の研修から2年間の初期臨床研修を引いた期間に加えて小児外科専従研修3年以上が必要だという。小児外科学会は、私が所属している日本産婦人科学会の68年に近い53年の歴史があるそうで、この分野のことをあまり知らなかったが、そうなのかと思った次第である。産婦人科と関連のある新生児の疾患は出生前に診断できるものも多く、胎児超音波検査のレベルが上がった現在では小児外科医と連携して、生まれる前から準備して時を移さず手術を行うこともある。
それにしても生まれると同時に手術しなければならないような異常があるとは、なんと過酷な運命を背負っていることだろう。受精して1つの細胞が分裂し60兆の細胞からなるヒトになっていく過程では、細かいことを含めれば何らかのミスが起きて当たり前である。むしろ無事に生まれてくることが奇跡だと思わなければならないのではないだろうか。
明るい話題としては、自然に抜けてしまう乳歯から幹細胞が採取できることがわかり、臨床応用に向けて研究しているということであった。臍帯血移植は実用化されているが、捨ててしまう乳歯がまさか役に立つとは驚くと同時によくぞ見つけたと思ったことである。研究成果に大いに期待したいものである。