月別記事一覧 2014年1月

すばらしい発見「STAP細胞」

平成26年1月31日(金)
理化学研究所の若き研究員、小保方晴子氏による研究は世界中に衝撃を与えた。一旦分化した細胞が外からの刺激で初期化するということは、哺乳類ではあり得ないとされてきた。ところが小保方氏は、マウスのリンパ球を弱酸性の溶液に浸すだけで細胞の初期化が起こることを発見したのである。たしかに植物では挿し木や接ぎ木でも見られるように、切断という刺激により細胞が初期化する。動物であれ植物であれ細胞という「命」ということには変わりないので、刺激により初期化する可能性はあるのだろうが、柔軟な思考がなければ思いつかないだろうし確かめようとも思わないだろう。若き研究者の小保方氏は、世界の常識を覆して哺乳類での初期化を証明してみせた。素晴らしいことである。
医学も含め、生物学は未知なことだらけである。暗闇の中でゾウのしっぽを触るようなもので、生命の神秘は深くて大きい。

不思議なこと

平成26年1月24日(金)
長いこと診療していると、どう考えていいのか不思議なことが起きることがある。患者さんを診る場合、症状に対してその原因を見つけ治療するが、ストーリーが納得できるのが普通であり、そうでなければ診断も治療もできない。妊娠に関して言えば、排卵があり受精し着床すればHCGというホルモンが分泌され、このホルモンに反応するように作られた妊娠検査薬が陽性になる。正常妊娠ならHCGの分泌量は日ごとに増えていき、受精後3週間経てば子宮内に直径1センチ弱の胎嚢とよばれる袋が見えてくる。4週間経てば心拍が確認できるようになる。一方、受精卵の細胞分裂がうまくいかなくなったらその時点で妊娠の進行が止まり、一定の期間を経て流産が始まる。だから正常妊娠でも子宮外妊娠や流産でもその一連の流れが理解できるように進行するものである。
最近この流れがどうしても理解できないケースがあり、一体どう解釈したらいいのかわからないことがあった。30年以上診療していて初めてのことである。もう少し時間がたてばわかってくることもあるかもしれないが、現時点ではストーリーが納得できない進行である。いつも思うのだけれど生物のしくみはうまくできているが、わからないことだらけである。

二水会の講演

平成26年1月16日(木)
広島市を中心とした産婦人科医師の勉強会「二水会」で高知大学形成外科講師、栗山元根氏の講演があった。帝王切開などの手術の創部をきれいに縫合する技術の講演で、実際に豚の皮を使っての実演があり興味深く聞いた。
「二水会」は母校の大先輩が広島市民病院勤務の時に始めた勉強会で、毎月第2水曜日(第3水曜日のこともある)いくつかの病院が順番に当番幹事になって行われてきた。最近は2カ月に1回になっているが、今回で319回!という非常に長く続いてきた会である。興味深い話も聞けるし、講演の後の懇親会が情報交換、親睦を兼ねているのでできるだけ出席するようにしている。この会に参加してもう23年になるが、初めの頃は年上の医師が多かったのがいつの間にか自分が結構年配になってしまっている現実がある。まことに月日が経つのは早いものだと感じた次第である。

沢木耕太郎著「無名」

平成26年1月10日(金)
著者は20代の頃からノンフィクションの分野で佳作をいくつも著し、当時から注目し愛読していたライターである。「若き実力者たち」「敗れざる者たち」「人の砂漠」「テロルの決算」など夢中で読んだものである。最も面白かったのは「深夜特急」で、著者が書くという仕事を始めて4年目にユーラシアからパリへの長い旅に出た時の体験を書いたものだった。特に旅を始めたばかりの香港、マカオ、インドなどでの体験は、当時の自分も若かったのでまるで自分がそこにいるかのように感じられ興味深く読んだ。
その後、著者のエッセイなどを時々読んでいたが、デビューの頃の鮮烈さは薄れていた。そうしているうちに壇一雄未亡人の一人称話法に徹した作品「壇」を発表し、改めて注目するようになった。そして2003年にこの作品「無名」が刊行された。これは無名の、一市井の人として亡くなった著者の父親の人生の軌跡を、病床の父を見守りながら、幼少時からの記憶を掘り起こして書き綴ったものである。著者の父親に対する心情と父親の息子に対する気持ちが伝わってきて、心が洗われる思いがする。まことに稀有な作品である。

謹賀新年(平成26年)

平成26年1月4日(土)
毎年1月4日から診療スタートすることにしている(4日が日曜日なら5日から)。今日は土曜日、明日は休みだけれど本日から診療開始である。いつもながら休み明けは心技体が整うまでに時間を要する。それでも午前中には完全復活、矢でも鉄砲でも持ってこいという心境である。
元旦は護国神社へ初詣、おみくじは末吉。3日は故郷へ帰る途中、山陽道が通行止めのため2号線を迂回したが故障車のため大渋滞、いつもの倍時間がかかった。新春からあまり縁起が良くないのがいささか心配ではある。昨年からの腰痛は完治していないけれど気持ちをいれかえて納得の年にしたいものである。