平成19年10月12日(金)
症状のない人に行う「がん検診」の有効性についてはさまざまな議論がなされてきたが、検診によりがんは見つかっても寿命はのびないという結論になる可能性が高いようである。
平成17年のわが国の前立腺がんによる死亡数は9千人超で、男性のがんの部位別死亡死因の7番目である。このため前立腺がんの検診にPSA検査を行うようになったが、厚労省の「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究班」は、綿密な調査と研究により「PSA検査は有効でない」と結論づけた。検診による死亡率の減少と、検診で発生する不利益とのバランスを考慮したわけである。当然のように泌尿器科学会からは強い反発が起こった。これと同じようなことは他の臓器のがんについても当てはまると思われ、それぞれの学会から反発が起こることは必至であろう。
それでもきちんとしたデータと研究による論文は、正しく受け入れねばならない。たとえその内容が、医療者や関連企業(製薬会社、医療機器の会社他)にとって不利益をもたらすことであっても否定してはならない。総合的にみて「がん検診」を含めた健診や医療行為が受診者に不利益をもたらすことが明らかになったなら、そのことを広く知らしめたうえで、それでも「がん検診」をするかどうかを一般の人たちや患者さんに決めてもらうべきである。