平成19年10月31日(水)
救急でのお産の患者さんの受け入れ病院たらいまわしが問題になっている。
報道によれば救急で受け入れを5回以上断られた妊婦さんが増えているというが、実際のところは1回だけ断られたケースは増えていない。問題にすべきなのはなぜ5回以上断られたのかである。妊婦さんの救急でいちばん大切な情報は妊娠週数である。もし妊娠週数が若くまだ10ヶ月になっていないのなら未熟児医療のできる施設(NICU)でないと新生児に対処できない。だから、妊娠週数さえはっきりしていれば受け入れる病院はもっと増えるだろう。
報道のケースは妊娠7ヶ月になっていたのに一度も産婦人科を受診していない。真夜中に市街地で遊んでいて異常がおきたため、男友達が119番に電話したのが午前2時44分で、救急車が到着したのはわずか8分後の2時52分だそうである。これはすばらしいことである。そして妊娠週数がわかっていればもっと早く受け入れ病院を探すことができたと思われる。そこのところをきちんと報道しないと有効な対策はたてられないと思う。
月別記事一覧 2007年10月
受診者にも問題あり
食品偽装問題
平成19年10月26日(金)
このところ食品の偽装問題が次々に報道されている。「ミートホープ」の社長の逮捕をはじめ、有名な「赤福もち」の製造日のごまかし、「比内地鶏」として売っていた鶏肉が実は安い排鶏(卵を産まなくなった雌鶏で一羽数十円で取引される)を使ったものであったとか、枚挙にいとまがない。こんなばれやすいインチキをしていて、次々に告発されているのにどうして改めようとしなかったのか不思議である。
どれも命に関わるような実害がなかったことはよかったが、輸入食材のなかには危ないものがかなりあると聞く。わが国の食料自給率はカロリーベースで40%であるから、信頼できるところから輸入しないとそれこそ命に関わる。安全性の検査を国だけに任せておいても難しいだろうから、民間できちんと検査して安全性、素性などを保証するようにしたら少々割高でも安心できるというものである。
地球温暖化
平成19年10月18日(木)
秋も深まってきて朝夕に肌寒さを感じるようになった。今年はいつまでも暑く、いつになったら涼しくなるのかと思っていたが、あっという間の季節の変化である。地球温暖化が進み、北極圏の氷も大幅に解けているというが、いったいどうなっていくのだろうか。
地球全体でみると温暖化の時代には恐竜が繁殖し、第四期氷河期の後で人類が誕生して地上にはびこって現在に至っているそうだが、今後どうなるかは気候次第というところである。地球温暖化を防ぐ努力をしよう!とかオゾン層の破壊をくい止めよう!とか世界中で運動が起こっているが、自然の変化の前では何をしてもどうしようもないと思われる。
わが国では昔から怖いものとして「地震、雷、火事、親父」という言葉があるが、初めの二つは自然現象であり、三つ目も一旦起きてしまえばどうしようもないこと、最後のは理不尽なことの代表というほどの意味だろう。自然現象こそ理不尽の塊である。だから人間がいかに智恵をふるって立ち向かってもむだであるという先人の思想である。じたばたせず、なるようにしかならないと思うほかはないようである。
がん検診は無効?
平成19年10月12日(金)
症状のない人に行う「がん検診」の有効性についてはさまざまな議論がなされてきたが、検診によりがんは見つかっても寿命はのびないという結論になる可能性が高いようである。
平成17年のわが国の前立腺がんによる死亡数は9千人超で、男性のがんの部位別死亡死因の7番目である。このため前立腺がんの検診にPSA検査を行うようになったが、厚労省の「がん検診の適切な方法とその評価法の確立に関する研究班」は、綿密な調査と研究により「PSA検査は有効でない」と結論づけた。検診による死亡率の減少と、検診で発生する不利益とのバランスを考慮したわけである。当然のように泌尿器科学会からは強い反発が起こった。これと同じようなことは他の臓器のがんについても当てはまると思われ、それぞれの学会から反発が起こることは必至であろう。
それでもきちんとしたデータと研究による論文は、正しく受け入れねばならない。たとえその内容が、医療者や関連企業(製薬会社、医療機器の会社他)にとって不利益をもたらすことであっても否定してはならない。総合的にみて「がん検診」を含めた健診や医療行為が受診者に不利益をもたらすことが明らかになったなら、そのことを広く知らしめたうえで、それでも「がん検診」をするかどうかを一般の人たちや患者さんに決めてもらうべきである。
野田弘志展
平成19年10月3日(水)
先日、ひろしま美術館で開催されている「野田弘志展-写実の彼方に-」に行ってきた。リアリズムを追求したその作品群は、一つひとつが思わず足を止めていつまでもじっくり見たくなる作品ばかりである。まともに鑑賞したら一日ではすまなそうである。以前、田中一村の作品集を見たとき以上の驚きがあった。この作品展は全国5箇所で行われてきたそうだが、その最後の開催地が広島だったことは、野田氏の本籍が広島県でありさらに広島市立大学の教授をしていた関係だろうが、ありがたいことである。これだけの作品を一堂に集めることはなかなか難しいのではないだろうか。今度はいつ見られるかわからないので、開催最終日10月21日までにもう一度行ってみようと思っている。