日付別記事一覧 2007年7月10日

健診大国日本!

平成19年7月10日(火)
日本は定期健康診断大国で、職場健診は5千万人、住民健診は1千万人、人間ドックも2百万人以上の人が毎年健診を受けている。問題なのは定期健診を受けていても健康になったり寿命が延びるデータ的根拠がないことである。定期健診が有効かどうか確かめるためにはくじ引き試験が必要だが、残念ながら日本では行っていない。そこで、他国の試験を参考にしたらどうなるだろうか。
米国で1万人以上の35~54歳の男女を集め、無作為に二つのグループに分け、一方は日本の人間ドックとほぼ同じ健診を毎年受けるようにし、他方は何もせず放置したところ、7年間の両者の死亡数に統計的有意差はなかった。英国でも7千人規模で同様の試験を9年間行ったが、健診群と放置群の死亡数に差がなかった。その結果、健康診断には有効性がないと結論され、英国では日本のような定期健診は行われていない。
さらに、ライフスタイルを改善すると長生きできるのかというくじ引き試験がフィンランドで行われた。40~55歳の会社の管理職の男性で、みたところ健康だがコレステロール値が高いとか血圧がやや高いとかタバコを吸うとか何らかの問題のある1200人を選び、くじを引いて2つのグループに分け一方は何もせず放置するが、他方は医者がライフスタイルに介入した。介入グループには4ヶ月ごとに医者が面談し、食事指導、運動量を増やすためのプログラムをわたす、禁煙の指導をする、必要あれば降圧剤などの薬を出すなど、5年間にわたってフォローし、さらに10年間両グループの生死を調査した。その結果、心臓死は介入群の方が多く、がん死は介入群が少なく、総死亡数では統計的有意差はないものの介入群!の方が多かった。
これらの結果をみると、医師は健診などは極力ひかえ、症状のある人の治療に全力をあげるべきである。医師の本来の役目は病んでいる人を癒すことである。病む前に見つけた方がよいのではないかという予測で始まった健診が、実は意味がないことが次第に明らかになってきた以上、その事実を広く知らせて健診などにまわす人手があるのなら今病気で苦しんでいる人に集中する方がいい。行政や企業も健診に出すお金を介護に回せば今よりもはるかに人のためになるのである。