平成18年5月31日(水)
早いものでもう5月も今日で終わりである。一ヶ月など瞬く間に過ぎ去ってゆく。
精神科医の書いた「狂気の偽装」という本によれば、「多重人格」「アダルトチルドレン」などの概念は北米を中心とした医学会の説であり、欧州では否定的見解も多いとのことである。さらに、PTSDは唱えられだした当初は「心的外傷症候群」だったのがいつのまにか「外傷症候群」と「心的」が抜けて本来の意味 からはずれたものをマスコミが使っていることなどを書いていて、なかなか興味深く読むことができた。また、フロイトの学説は疑問点が多いにもかかわらず、 いまだに精神医学の世界では影響力があることも述べられており、納得することが多かった。精神の領域は数値化も映像化もできないので、解明が難しい分野で ある。むしろ機械文明のない昔の方が精神については今よりもよくわかっていたのではないだろうか。
月別記事一覧 2006年5月
岩波明著「狂気の偽装」
尺八はトキか
平成18年5月27日(土)
昨日は近くで行われた尺八の演奏会に行ってみた。20~30人ぐらいの小さな演奏会であるが、そもそも尺八の演奏会自体がほとんどないので、見つけたらで きるだけ行ってみるようにしている。今回のは新聞のイベント欄で見て行ったが、集まっていたのはほとんど関係者ばかりで一般の参加者は私だけではないだろ うか。尺八はまさにトキ状態だと改めて感じた。たとえそうであっても自分としては少しでも魅力的な音を出せるように研鑽しようとしみじみ思った次第であ る。
梅雨の晴れ間
平成18年5月22日(月)
昨日は晴れて気持ちの良い一日だったが、今日はまたしても曇天である。それでも午後からは青空が顔を出して五月だというのに「梅雨の晴れ間」のようだった。
このところ食べ過ぎなのですこし控えようと思っているがなかなか難しい。腰痛もいっこうに良くならず、このままではテニスどころか歩けなくなってしまうか もしれない。整形の先生の話によれば、この腰痛は腹筋を鍛えることによって改善するとのことで一筋の光明を見出した気持ちである。腰痛があるときは安静に して、おさまってきたら腹筋を鍛えるといいそうである。そうは思っていても調子がよければつい忘れるのが人間の性(さが)であり、意志の弱さをその所為に しているのも毎度のことではずかしいが今度ばかりは腰痛が治まってきたら腹筋を鍛えるつもりである。
福田和也著「悪女の美食術」
平成18年5月17日(水)
このところ雨の日が続く。梅雨に入ったのかと錯覚しそうだが、気象庁は「プチ梅雨と思ってください」とのこと。いずれにせよ雨が続くとうっとうしい。
評論家福田和也氏の「悪女の美食術」を読むと、評論家という人種がいかに凝り性で興味のあるものに対してしつこく追求するのかがわかって面白い。福田氏は じつにりっぱな食いしん坊であり、食に対するこだわりを極限まで追求している。酒に関してもソムリエよりも知識と経験が豊富なようである。加えて「うつ わ」に対する造詣も深く、フランス料理、中華料理、日本料理などの文化的背景については評論家だけあって詳しい。世界中どこにでも食べに行く行動力もたい したもので、総合的に見て彼に対抗できる食通はなかなかいないのではなかろうか。
松井選手の骨折
平成18年5月13日(土)
ヤンキースの松井選手が手首を骨折したそうである。あれだけ頑丈で怪我を避けるセンスのある選手でもこんなことになるのだ。せっかくの連続試合出場記録も途絶えてしまった。世の中何が起こるかわからない。
昔から言われているように「世は無常」である。平家物語の「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」はどんなに安定しているように見えても、一寸先は闇で あることを知りつくした先人たちの心からの叫びであろう。そしてこのような考えが日本人の根底にあるから般若心経の「色即是空、空即是色」の思想が我々日 本人の血肉と化しているのではないか。そしていくら「世は無常」であっても、無常であるからこそ日々を大切にしなければならないのである。
稲作の危機
平成18年5月10日(水)
朝から雨が続き、さすがに患者さんの出足がよくなかった。その分、診察の合間に書類書きや紹介状作成その他雑用仕事がはかどるのは喜ぶべきか悲しむべきか。
先日の連休に鳴門まで車で行ったがもう田植えの準備をしているところがあった。私の田舎では梅雨の頃に田植えをするのが普通なので、ずいぶん早いと思ったものだが今から植える種類もあるのだろう。この頃は田舎ではもう稲を植える人がいなくなり、田を持っている人はその処置に困っているという。放置すれば雑草が生えて他の田の持ち主に迷惑がかかるし、そうだからといっても稲作をするには年を取ってしまっている人が多いのである。これは私の田舎だけのことでは なく、全国的なことだと思う。日本の伝統、日本たる所以である稲作が消えつつあることは由々しき問題である。
やたらと増えた休日
平成18年5月6日(土)
今日はまだ連休のところが多いが当院は暦どおりなので、いつもの土曜日と同じで午後5時まで営業した。
このところやたらと祝日や休日が増えて、我が国の休める日は世界で最も多いとか。ところが有給休暇の消化率は世界最低で、フランスやドイツなどはほぼ 100%使うのため祝日が少なくても結果的には多く休んでいるという。日本人は休むのは罪悪だと考える伝統があるので、休日や祝日を多く作って罪悪感なしに休めるようにしたのだろうか。昔から盆と正月は文句なく休めたし、戦後はゴールデンウイークができて横並びに休んでも許されるようになったからこうなっ たに違いない。
健康な人が休むのは罪悪であるという考え方は、我が国のような資源の少ない国には必要なことだったのだろう。
メーデーに思う
平成18年5月1日(月)
今日はメーデーなので、診察室の窓をほんの少し開けると、風に乗ってスピーカーからの演説の声が聞こえてきた。
元来、共産主義、社会主義は資本家や独裁者にしいたげられた人々への平等な富の分配のために考えられた思想であった。主にインテリ層が中心となって信奉してきた。問題は、この思想が一個人の頭脳から興ったものであり、自然発生ではなかったことである。人間観察、人間理解が足りなかったというしかないが、世界中でその思想は破綻した。わずかに残っているその世界は、一党独裁で人々を武力で抑えることによって存続しているにすぎない。人々を幸せにするために考えられた思想が、その思想に反対する多数の人々を粛清しなければならないとはなんと不幸なことであろうか。それこそが、その思想の致命的な欠陥というべきであろう。さらに、粛清して権力を得た人もいつのまにか私利私欲に走るようになる。歴史を見れば必ずそうなっている。だからそういうこともすべて織り込ん でどういう社会にしていくのかまで考えて作らないと、結局世の中を不幸にする。社会制度は一朝一夕にできるものではないし、それぞれの民族の歴史の延長に あるものだからだれかがどうかしたからといって変えられるものではない。
ありがたいことに我が国には共産主義も、独裁主義も根付かなかった。元来、合議によって政治が行われてきた世界でもまれな安全でレベルの高い国だったので、すんなりと議会制民主主義が根付いたのである。もちろん欧米のそれとは少し異なり日本風にアレンジしてあるが。じつにすばらしいことである。