月別記事一覧 2005年10月

産婦人科の危機

平成17年10月31日(月)
全国的に産婦人科医師のなり手が減っている。特にお産をする医療施設が減り、広島でもすでに数施設がお産をやめてしまった。これは大変な問題である。さらに新しく医師になる若い人たちが産婦人科を選ばなくなっているそうだ。お産をやめてしまった自分が言うのも何だが、24時間待機していてうまくいってあたりまえ、もし何かあったら責任を追及されるという、お産が本質的に持っている危うさを、これから医師になってどの科を専門にしようかという若い人たちが本能的に感じているからではないか。
お産は、新しい生命の誕生にかかわることのできる本当に大切なやりがいのある仕事であるが、年齢とともに夜起こされることが億劫になり次の日の仕事に差し支えるようになると考えてしまうのだ。
現在我が国では毎年8千人ずつ新しい医師が増えていて、どの科の医師数もどんどん増えているそうだが、産婦人科だけ!は医師の数が減っているのだ。このままでは、お産する女性は妊娠したらできるだけ早くお産のできる施設を確保しないと、病院や医院でお産ができなくなるかもしれない。実は一部の地域ではすでにその徴候があるという。

本川達雄著「おまけの人生」

平成17年10月28日(金)
「ゾウの時間ネズミの時間」を読んで以来ファンになった生物学者、本川達雄氏の最新エッセイ集「おまけの人生」を見つけた。読んで共感を得る部分が多くますますファンになったのであるが、その中に著者が永平寺が主催した「道元フォーラム」に呼ばれて講義した内容が載っていた。これがすばらしいもので、時間についての著者の生物学的思考と道元の「正方眼蔵」に述べられた哲学との重なるところを解説しており、あらためて曹洞宗の開祖である道元は偉大な哲学者でもあったのだと思った次第である。
歴史に名を残すほどの人物はやはりすごい。さらにそれを自分の言葉で解説している著者もただものではない。世の中には我々凡人にははかり知れない巨人ともいうべき人がいっぱいいるものだと思った次第である。

秋晴れ

平成17年10月25日(火)
今日も秋晴れのいい天気だ。朝夕は肌寒いが日中はちょうどいい気候である。四季の移り変わりは生活にアクセントをあたえてくれていいものだ。これから訪れる寒い冬の前に豊穣の秋があり、今日のような日がある。我が国で四季折々の自然を愛でた俳句や和歌をはじめ繊細な和文学が興った所以であろう。
夕方になるとさすがに秋の夕暮れとなる。「みわたせば 花ももみぢもなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮れ」我々はやはり、和に始まり洋を経験し、またいつのまにか和に帰るのだと思う。

重複

平成17年10月22日(土)
前回、セカンドオピニオンのことを書いたが、調べてみると9月にも書いていた。どうもボケているようだ。次第に脳細胞が壊れていっているのは年齢のせいなのかそれともアルコールのせいなのか。
壊れついでに、このところ昼休みにヒマがあれば枝雀の落語を聴いている。マクラに枝雀らしい理屈をいうのが面白く、聴いていてあきない。今でも根強い人気があるようで、本当に惜しい人を亡くしたと思う。天才は早死にする、美人薄命。憎まれっ子世にはばかる、合掌。

セカンドオピニオンの困惑

平成17年10月18日(火)
セカンドオピニオンを求めて来院する人がいる。初めからセカンドオピニオンですがと言って来る人と、診断結果をお話した後で「実は前の病院で○○と診断されたのですが、、、」という人がいる。もちろん最後まで黙っている人もいるだろう。当院の見立てが前医と同じならいいのだが、問題は診断が異なっている場合である。見解の相違ぐらいならそういう見方もあると説明できるのだが、どう考えても前医の診断と違う場合はどう説明しようかと悩んでしまう。
自分の診断が絶対正しいとはいわないが、それにしても違うものは違うのである。患者さんは心配しているわけだから、医者としては安心させてあげたいので診断どおりに答えるのだが、後で診るほど正しい診断ができる。だからそのことを話して説明し納得していただくのである。

あっという間の一週間

平成17年10月15日(土)
あっという間に一週間経ってしまった。今週はバタバタしているうちに土曜日になった。はじめの日曜と月曜が連休だったので、いつもより一日短かったからだろうか。たった一日でも短いと実に楽だと思った次第である。
今月の初めには体重を減らそうと思っていたのだが、なんと今までに経験のない体重の領域に突入してしまった。あと2週間で元に戻さねば○○になってしまう。

鍋焼きうどん

平成17年10月11日(火)
飲みが続いた時や胃が少しもたれるような時は、昼飯に「鍋焼きうどん」を食べることにしている。クリニックの近くにある讃岐屋はもう8年通っているが、な かなかいい味で飽きがこない。鍋焼きうどんには海老、しいたけ、卵、小海老のかきあげ、牛肉の薄切り、ねぎなどが入っていていい味のだしが美味しく、食べ 終わる頃にはすべての具から出ただしが混ざり合ってなんともいえないいい味になっている。十分満足するが次もまた食べようかという気持ちになる。にしんそばが食べたい時は別の店に行くが、これもなかなかいい味である。ニシンのやや濃い味付けと薄味のだしのバランスが絶妙である。
クリニックの近くに美味しい店が多いのはありがたいことである。

子供が減った

平成17年10月7日(金)
高齢化が進み、医療費が増えていくことが予想されるために、政府はさらに診療報酬を下げる準備を始めたとのこと。確かに医療費の3~4割を75歳以上の高齢者が使い、この年齢の人が増えていくと大変だろう。当院の患者さんの平均年齢は25~30歳ぐらいなので、診療報酬だけ減るという仕組みになっている。 今後は労働人口が減りお年寄りを支えることが難しくなることは、はっきりしているので仕方がないかとは思う。でも、戦後人口が爆発的に増えた世代の端っこで成長してきた私としては、どうしてこんなに子供を生まなくなったのかわからない。理由をつければいろいろあるのだろうが、少なくとも我々が子供の頃に比べれば今は本当に豊かで恵まれている。もっと皆が普通に子供をつくればこんなに人口が減ることはないだろうに。
民族の衰退は人口の減少が指標になるとしたら、確実に日本は衰退の道を歩んでいるのではないか。なにしろ自分の国を守るための武装さえ戦争につながるからだめだ、というような意見が堂々と新聞に載るような国だから。

オーストラリア女流演奏家のコンサート

平成17年10月3日(月)
2日の日曜日にオーストラリアの女流尺八演奏家のコンサートを聴きに行った。非常にすばらしい演奏で、古典の曲に対するこういう解釈もあるのかと感心した次第である。音楽はいかにいい音を出して正確に演奏するかが大切であり、それにどれだけその演奏家の音楽性を加えられるかが重要だと思うが、それぞれの曲に対して日本人的思い入れが感じられない分だけ素直に音楽が耳に入り快かった。演奏家自身が作曲した2曲の作品を広島の演奏家の人たちが演奏したが、曲想は彼女の演奏と同じように感じられたのでそれが彼女の個性だと思った次第である。同時に広島在住の日本人男性によるディジュリドゥ(オーストラリアの民族 楽器)の演奏もあって、それぞれの国の楽器を交換して演奏しているかのように感じた。
我が国では尺八などの和楽器はトキのような存在になっているが、彼の国では結構人気があるとのことである。古臭いと思うかもしれないが、尺八は歴史あるなかなか魅力的な楽器だと思う。