平成16年4月30日(金)
連続10日間休みがなかったので、昨日の休みは貴重だった。今日は朝から流産手術。今月は流産がいつもの月より多い。流産は誰の責任でもなく運であることを一層感じたのは、2週間ぶりに来たCさんの話を聞いたからだ。あまりに驚いたので思わず「これは皆さんに公表してください」と言ってしまった。
Cさんは2週間前に高齢初妊娠とわかり、大いに喜んでおられた。まだ初期なので1週間後に来院するようお話するも来院せず、2週間後の今日来院され順調なことを確認したが、なんとこの2週間のあいだに宮古島トライアスロンに出場され完走したそうだ。3キロメートル泳いで155キロメートル自転車に乗り、42,195キロメートルのフルマラソンを走る、それも14時間以内に!す、すごい。お腹の中の新しい命はなんて強いんだろうと思った。正常な妊娠の極限の強さを見せられた気がする。トライアスロンを完走できる人はたとえ妊娠していなくてもほとんどいないと思うが、妊娠して挑戦した人は私の知る限りでは一人もいない。もし事前に相談されていたら、絶対ダメと言っていただろう。ただ本音を言うと、胎芽(赤ちゃん)が正常なら少々走ろうがどうしようが流産することはない、と思っているのでその確信が一層強くなったといえる。
なにはともあれ次回は彼女のパワーを分けてもらい、ついでに爪のあかをわけてもらい、自分の怠け癖を治す薬にすると共に、流産の予防薬として売ろうかしらん。ああ驚いた。
月別記事一覧 2004年4月
高齢妊娠でトライアスロン完走!
うれしい出産の知らせ
平成16年4月28日(水)
世間はそろそろ大型連休に入る。そのためか今日は患者さんが多かった。1年ぶりとか2年ぶりの人もちらほら。今日クリニックに来たはがきに無事に生まれた赤ちゃんの写真があった。なかなか妊娠せず根気よく治療をしてうまく妊娠したのに、中期に流産して落ち込んでいた人。でも気を取り直して再度チャレンジして妊娠、今度は早くから総合病院を紹介していたのだ。本当に良かったと思う。喜んでいる顔が目に浮かぶようで、一番うれしい時だ。
明日は祝日で休みなので診療日誌もお休み。ちなみに予定はテニスらしきもの1、尺八の合同練習1、娘とバイクを見に行く(これは危ないからダメという意見が強く中止になるかも)ぐらいだ。
尺八を習い始めた
平成16年4月27日(火)
今日はこれといって問題のない日であった。そこで趣味の話。尺八を習い始めた。はじめは音が出なかったが、次第に音が出るようになり面白くなってきた。問題は練習する場所である。けっこう音が大きいのでたとえば自宅で吹いていると、4~5軒向こうのまがりかどのあたりから聞こえるそうだ。前後両隣の家はきっと迷惑だろう。かといって、近くの公園も人が多くてちょっと恥ずかしい。山の中に行くのは時間がかかるし、面倒だ。というわけで今はおそるおそる自宅で吹いている。吹いているとじつに気持ちがいい。昔、虚無僧が深編み笠をかぶって吹きながら門付けをしたそうだが、気持ちがわかる。もう少し上手になったらやってみたいと思うのだが、どうだろう。そのうち、本通りあたりを吹きながら歩いていたりして。
大切な問診
平成16年4月26日(月)
57歳のBさんは昨年の秋ごろから体重が減った。内科を受診して1ヶ月に渡って検査したが、異常は見つからなかった。それでも体重は増えず、夜はなかなか寝付かれない。担当医は「しっかり食べてください」と言うが、あまり食べたくないし友人が「婦人科でホルモン注射をうけたら太った」と言うので当院を受診した。ご主人が1年半まえに亡くなって、はじめの1年ぐらいはそうでもなかったが、半年前から食欲が落ちて体重が減っている。日中よりも夜の方が落ちつくが、なかなか眠れない。明け方まで起きていることもある。娘は嫁いでおり現在一人暮らし。
こういう書き方ををすると、医師であればまず「うつ病」を考えるだろう。そしてカウンセリングや抗うつ剤などを使い総合的に治療しようとするだろう。また精神科に紹介してきちんと診断治療を仰ぐだろう。でもそういう視点で診ていなければ、背景もわからないし身体的な病気の有無ばかり探して、患者さんにとっては検査はいっぱいしたけどちっとも良くならないことになる。実はこういうことはよくあり、問診だけでかなりのことがわかるのである。要はどういう視点で人を見ているかに尽きるのだろう。人を見る目を鍛えるということは、自分を鍛えるということである。自分はまだまだ全然だめだと思うが、少しづつでもわかるようになっていきたいものだ。今日はまじめなことを書いてしまった。
妊娠中の風邪
平成16年4月25日(日)
今日は日曜なので本来は休診なのだが、広島市の産婦人科当番医のため開院した。当番医は各科の開業医が休日診療を順番に行うもので、半年に一度まわってくる。いつもどんな急を要する患者さんが来るかとてぐすねひいているのだが、ごく普通の患者さんばかりで、ほっとするような、拍子抜けするような。産婦人科で最も多い緊急を要するのは妊娠・お産関係で、何か起こればお産を予定している病院へ行くだろうから当番医の所へは来ないのだろう。
実際妊娠中にはさまざまな心配があるようで、電話相談などもよくある。妊娠初期なら出血の心配が多い。あとは風邪をひいたので薬をどうしたらいいかの問い合わせも。出血については色々な場合があるので、状態によっては受診を勧めることが多いが、風邪についてはひどくないかぎり、「あったかくして安静にしてください」という。知り合いの内科の先生は「風邪?寝ときゃあ治る」とおっしゃる。私も全くそのとおりだと思う。オランダなどでは風邪をひいて受診しても、熱があれば家で冷やして様子を見て3日たってもよくならなければ来院するように話して薬も出さないそうである。日本人は薬好きの人が多く、風邪でも薬を出さなかったら、もう来てくれなくなると聞く。また、妊娠初期は薬の副作用も気になり、風邪も心配だが薬も心配だという人が多いのである。でも風邪をひいたからといって胎児に影響があるわけではなく、(ウイルスによる影響があるとしたら感染した時点で影響がありどうしようもなく、薬を使うのは有害無益である)まさに「寝ときゃあなおる」と言いたいのだが、そう言ってしまうと身もふたもないので同じようなことをやんわりと言う。もっとも、どうしても薬が欲しいという人には、さからわずに薬を処方する。開業医は患者さんのニーズを優先するのだ。
そうこうするうちに夕方6時になり、休日診療は終わりとなった。明日は月曜日でいつもと同じ診療日だ。早く帰ってビールを飲もう。
性病の患者さん
平成16年4月24日(土)
場所がらか性病の患者さんが多い。どちらかというと、性病を心配して来る人の方が性病がなくて、心配してない人の方がほんもののことが多いようだ。性病で多いのはクラミジア、淋病、コンジローマ、ヘルペスなどで、誰から染されたかわからないこともよくある。結婚している場合は、相手は配偶者のことが多いが、そのことがよくわかってない人もいて、「どうしてこうなったんでしょうね」とのんびりしている。うつした相手がよそで病気をもらってきたことに気が付いてない(?)様子。こういう時は当方もとぼけて、「うーん、まあ相手のひとも治さなければいけないから、必ずお医者さんに行くように言ってください。そうしないとあなたもいつまでも治らないからね」と言う。後で聞くと、だんなさんもすぐに医者に行って治療したとのこと。良かった。これからも夫婦仲良く暮らしていって欲しいと思う。
今日は土曜日なので夕方5時で終了。明日は当番医なので休めない。
患者さんの要求
平成16年4月23日(金)
医者は患者の要求をどこまで聞くべきなのだろうか。神戸の不妊治療の病院での男女産み分けのことで新聞報道があった件である。膣内をアルカリ性にしたり、排卵日にセックスをするなどの方法ならどこからも文句は出ないようであるが、妊卵を調べると問題らしい。こういうことはだれが決めるのか、だれの許しを得て決めるのか、その決定は正しいのか、本当に難しい問題である。これらのことは、昔からキリスト教をはじめ宗教による規制、歯止めがあった。今の日本ではマスコミを中心とした集団のコンセンサスが大きいようである。医者は科学者の面もあり、科学的な真実を知っていると思われているので、その立場から発言しているようであるがかなりあやしい部分もある。
私自身は患者さんの要求を全部かなえてあげたいが、一方ではそこまではやりすぎだという思いもある。今回の件とは違うが、たとえば進行がんで手術しても直る見込みはきわめて低いと思われる時に、患者さんが手術を要求してきた場合どうするかである。手術しても治る可能性は低く、手術による負担でかえってよくないと話しても納得しない場合どうするか。美容整形で患者さんの要求どおりにしたら、医学的に良くない時には、あるいは民間療法に過大なお金を使っていて、どうみてもだまされているとしか思えない場合にはどうするか。また、いくら思いをかなえてあげたくても、医学ではどうしようもないこともある。
今日は以上の事を考えさせられるようなことがあった。また機会があれば具体的に書いていきたい。
木曜日の午後
平成16年4月22日(木)
今日は診療は午前中のみ。午後からはフリーだ。開業するまでは、土日が隔週休みだったのだが、今は土曜も夕方までやっている。だから今日は貴重なのだ。初めの頃は、木曜午後を話を聞く時間にあてようと思っていた。日頃受診されるメンタルケアが必要な人に、1時間ぐらいを目安に話を聞いてアドバイスをすることにしていた。普通はこれを「カウンセリング」というが実際のところ難しく、いつも「共感を持って話を聞く」ことに徹していた。アドバイスされたぐらいで解決するような悩みなど、たいした悩みでなく、まず人に自分のことを知ってもらうことが第一歩と思うからだ。西洋には教会で懺悔をするという伝統があると聞く。ニュアンスは違うだろうが、「カウンセリング」も似たようなところがあり、人間には必要なのだと思う。
最近は「カウンセリング」の申し出がないので、午後からは運動したり趣味を行っている。
流産手術
平成16年4月21日(水)
毎日日誌を書くのは結構大変だと思う。でもここでやめたらまさに三日坊主である。やめてたまるか。
今日は朝から流産手術あり。いつものことだが、患者さんに流産を告げるのは気が重い。妊娠を告げた時の患者さんのうれしそうな顔、でもその約15%は流産するのだ。これはどうしようもない、まさに運である。治療によって何とかなることはほとんどないと思ってよい。妊卵は一定の比率でだめになり、それは誰にあたるかわからないのだ。流産と診断した時、いつもどのように言おうかと考える。それまでに何回か接していると、ある程度この人にはこういうふうに話た方がショックが少ないかなと思うので、そのように話す。どう話しても事実は変わらないのだが、なんとか少しでも希望が持てるように話すのであるが、正直難しい。今は妊娠検査の薬の感度がよいので、かなり早くから妊娠がわかるようになっている。そのため流産の事実がわかりやすくなったり、胎嚢という袋がみえるまでは子宮外妊娠も否定できないなどの心配をしなければならなくなっている。診断能力が増してもそれが幸せにつながらない場合もあるのだ。
今日も夜には勉強会を兼ねた会合がある。月曜をのぞいて5日連続の飲み会や会合だ。元来アルコールは弱いのだが好きである。弱くてよかった。もし強ければ確実にアルコール中毒だろう。ありがたいことにすぐいい気分になり、それ以上は飲めなくなる。お医者さんもすすめる適量がまさに自分のMAX(適量)である。親に感謝。
ピルの話
平成16年4月20日(火)
今日もピルをすすめたら「副作用は?」と聞かれた。ピル以外の薬を処方してもなにも言われないのに、ピルの時だけほとんど必ず聞かれる。これは20年以上前からほぼ同じである。漢方薬なら一切聞かれない。いったいこれは何なのだ。イメージとは恐ろしい。日本ではホルモンはすべて副作用が怖いというイメージがあり、漢方薬は安全だとの思い込みがある。いくら事実をあげて説明してもなかなか一旦ついたイメージは変わらない。これは日本だけの現象なのだろうか?世界中で日本ほど避妊をコンドームにたよる国はないし、ピルを怖がる国もない。うちでは毎月300人ぐらいの人にピルを処方している。問題となる副作用はほとんどない。たまに吐き気が強くて飲めない人もいるが、多くの人は調子良いとのこと。生理痛の強い人にはおすすめである。