平成24年5月7日(月)
連休が終わり今日から通常の診療が始まった。今回は久しぶりの長期連休なので普段行けないところに行くつもりであったが、腰痛がまだ少しあり残念ながら近場をうろうろするのみであった。まだ車の運転はしんどいので助手席に乗るか、ゆっくり歩くぐらいがせいぜいであった(涙)。
今年度の診療報酬改正では、薬剤料を抑えようとしている政府の意図がひしひしと伝わってくる。確かにわが国の医療費に占める薬剤料は関連費用を含め10兆円といわれて諸外国と比べても多い。見たところ最も多く使われているのは加齢による変化に対する薬である。本来、加齢による変化を改善し寿命を延ばす薬など存在しない。にもかかわらず患者さんも要求し、医師も処方する図式が存続しているため増える一方である。医療に対する考え方を変えない限り改善できないのは明白である。
このところ、以前にも紹介した「大往生したけりゃ医療に近づくな」や近藤誠医師の「がん放置療法のすすめ」など、むだな治療をしない方が良いという意見があちこちで上がるようになってきた。慶賀の至りである。これからの医療は、このようなまっとうな(?)考え方に向かうことが皆の幸せにつながると思われる。
カテゴリー 意見
連休明け
薬の話
平成23年11月8日(火)
日本人は薬好きだといわれるが、確かに医療機関では多量の薬が処方されている。医者が処方しすぎるのか、患者さんが求めるのか、その両方の相乗効果なのか、とにかく医療費に占める薬剤費の割合はアメリカの3倍、フランスやドイツの2倍である。明らかに薬の使い過ぎだろう。
本当に必要な薬は約300種類で、これだけでほぼ対処できるというエッセンシャルドラッグの概念がWHOで提唱されて久しいが、わが国では世界一高い薬が17,000商品も売られている。同じ薬でも日本以外の国と比べて高い薬価になっていて、喜ぶのは外資系も含めた製薬会社だけである。一方、昔から使われていて評価の定まった薬は薬価が下げられて、製薬会社は利益が出ないから製造中止にしようとしている。
当院では薬の処方は実に少なく、本当に必要だと思う薬しか処方しないようにしている。ただし、患者さんが漢方薬や他院で処方されていた薬を出してくれと言われた場合には、一応自分の考えを言った上で、それでも求められたら仕方なく処方することはある。もちろん納得されて今まで使われていた薬を止められる患者さんも多い。思うに自分のような医者ばかりだったら製薬会社はいやがるだろうが、薬剤費は大幅に減るのではなかろうか。
受診時定額負担
平成23年11月1日(火)
現在、75歳未満の人は医療費の3割を負担し、75歳以上の人は1割を負担している。これから高齢者が増えることは確実なので、政府は受診する度に100円を別に徴収するという提案をしている。これが受診時定額負担という提案であるが、受診回数の多い高齢者にとってはきびしいことになると思われる。消費税と同じで初めは3%だったものが今は5%になったように、100円は200円になりそのうち500円1000円になるかもしれない。
民主党は先の選挙で国民に媚びるような甘い政策を一杯掲げて、自民党の政治に飽きていた人々の心をつかんで大勝し政権を担った。ところが実際に国のかじ取りをしてみると現実のきびしさに気がつき、経験不足もあって右往左往しているところである。国を企業に例えると、前経営陣にとってかわった新経営陣は全くダメで、経営をさらに悪化させつぶれる寸前にしてしまったということである。前の経営陣の方がマシだったと皆が思い始めているのが現実であろう。国民の負担を増やす経営(政治)などアホでもできる。昔から重税を科すのは悪代官と決まったものである。受診時定額負担には反対である。
適応とがん
平成23年6月4日(土)
女性ホルモン依存腫瘍である乳がんや子宮内膜がんは、閉経後の血中女性ホルモンがほとんどない時でも増殖していく。それは、腫瘍組織内でホルモンを作っているからで、このことがわかってきたのは1980年代以降である。がん組織が生き延びるためには、本人にはお構いなく何でもやるということだ。
生物は環境に適応するためにその形や代謝を様々に変えて生きてきた。環境に合わせて変えることができた生物のみが生き延びていて、それ以外は全部滅びてしまった。飛躍するようだが、変える能力を持っているがゆえに「がん」も発生するのである。つまり、良い方に変われば「適応」として生き延びることができ、悪い方に変われば「がん」となって滅びる。「適応」と「がん」は紙一重、表裏の関係である。だから人類は「がん」を克服することはできないだろう。
赤字大国
平成23年5月27日(金)
まだ5月なのに広島も梅雨に入ったそうだ。台風も発生して沖縄から本州の南を通過するという。今年は東日本大震災をはじめ、天変地異の起こる年なのだろうか。
太平洋戦争で完膚なきまでに壊滅したわが国が、死に物狂いで頑張って復興し、世界第2位の経済大国となったことは奇跡であった。ところがある時から国は借金して予算を立てるようになり、いまや1000兆円の借金国になりさがった。今も毎年赤字国債を発行し続けている。このままでは早晩、国は借金でつぶれるだろう。こうなったのも目先の利益を与えてくれるような政治家を選んだ我々が悪かったのである。
わが国はこのたびの震災でもわかったように、決して我慢できない国民ではない。品性のある政治家が情理を尽くして説得すれば、借金を返し子や孫のために窮乏生活をする覚悟はあるはずである。地方では橋本大阪府知事や河村名古屋市市長など新しい政治のうねりが起こっている。国にもこのうねりが起きて欲しい。
児玉清氏と逸見正孝氏
平成23年5月20日(金)
パネルクイズ25の司会でおなじみの児玉清氏が亡くなった。一視聴者としてご冥福をお祈り申し上げる。
テレビや新聞の報道によると、昨年12月頃胃の不調があったが、胃カメラなどが嫌いで病院へ行かず今年の3月に胃がんの末期とわかり入院していたが、先日安らかに亡くなられたという。治療は抗がん剤を投与しかけたが副作用が強くて中止し、亡くなられる4日前まで普通に寝起きされていたそうである。
昔からこれらの死に至る病は「老衰」と言われることが多かったが、現代は検査法が充実してきたので正しい病名がわかるようになった。そして手術や抗がん剤の投与など徹底的に治療されるようになった。それでも亡くなる時は何をしてもだめなのである。その場合は病の苦しさに加えて、治療による痛みや苦しみが加わる。患者さんは治療が役に立つと思うからその苦しみに耐えて治療を受けるのである。
治らないのなら、痛みや苦しさをできるだけ緩和するようにして、やすらかに逝かせてあげるのが医療者の務めではなかろうか。そして治るか治らないかはベテランの医療者ならほぼわかるはずである。
かつてアナウンサーの逸見政孝氏が同じ胃がんで亡くなられた時の気の毒さに対しては、医療者は心底反省すべきである。入院前日まで仕事をされていたが、入院・手術・抗がん剤で苦しんだ末に一度も退院することなく亡くなられた。入院中「こんなに痛い思いをしたことは生まれて初めてだ」と言われていたそうである。
自粛と社交
4月30日(土)
大型連休が始まったが、当院は暦通り。日曜・祝日以外は開院している。このような混雑が予想される時には移動が大変である。予定を決めず、臨機応変に動くつもりである。
英国ではウイリアム王子とケイトさんの結婚式が行われ、世界中で20億人が中継を見ていたそうである。わが国からは皇太子ご夫妻が招かれていたそうであるが、東北大震災のために自粛したとか。ウイリアム王子はわが国の震災に心強いお言葉を発せられたいわば数少ない味方である。婚礼には出席するのが、礼に適うあたりまえのことであろう。このような社交はわが国の国益にとってもきわめて重要なことである。自粛を決めた責任はすべて現政府にある。現政府はいったいどこまでわが国を貶めればすむのか。民主党・管政権よ1日も早く解散総選挙をして民意を問え。
東日本大震災
平成23年3月17日(木)
3月11日に起きた大地震はその規模から歴史に残ることだろう。続いて襲ってきた津波のすごさにはただ驚くばかりである。被災地の方々の心労はいかばかりであろうか。
それにしても政府の対応の稚拙さには驚きを通り越して怒りを覚える。原発の重大な状態に対しても、後手にしかまわらず、責任を全部電力会社に押し付けており、政府主導で対処することにしたのはずいぶん後になってからであった。以前トヨタがアメリカでバッシングを受けた時も全く助けようとしなかったが今回は深刻さが違う。民主党、管政権はいったい何をしたいのだろう。今この未曽有の国難には、あらゆる知恵と力を結集して対処しないとそれこそ国が滅びる。政権を維持するためだけの政権なぞいらない。
今われわれができることは、義捐金を送ることだと思う。救援などはプロに任せるべきで、後方支援として求められたことをすればよい。今こそ全国民が力を合わせて乗り越えなければならない。
子宮頸がん予防ワクチンに思う
平成23年3月10日(木)
今年の1月から1年間の暫定措置で、中1から高1までの4学年の女子生徒に、子宮がんを防ぐためのワクチン接種が始まっている。英国の製薬会社が開発した非常に高価なワクチンであるが、彼らのロビー活動の成果により、わが国の政権与党である民主党のバラマキ政策と一致して、接種が始まったわけである。
一般の人たちがわが子のためになると信じて接種させるのは当然である。何の問題もない。問題は政府与党と、専門家である。わが国の子宮がん(頸部がん)の年間死亡数は2,500人である。年齢調節死亡率では2万人に1人。そして、ワクチンを全員に接種したとしても、3~4割の人には無効なうえに、ワクチンの効果も7年先以降についてはまだわかっていない。
わが国は借金を重ねて毎年赤字国債を発行しているが、これらのつけはすべて子ども世代に行くわけである。物事には優先順位がある。国を預かる者や医学の専門家は大きな視野で物事を見ないと、破滅の方向へ進んで行くことになる。
最近、ワクチンを製造している英国の製薬会社が、製造が追いつかないと言い出した。まったくお笑いぐさである。製薬会社が利益を追求するのは当たり前である。要は、あらゆることを正確に判断して国益になるように行動するのが政治家であり、専門家のはずである。恥を知って欲しい。
周囲の国々のモラル
平成23年2月18日(金)
日本の周辺の軍事大国にはモラルがないように見える。北の大国は太平洋戦争末期に、条約を無視して突然北方領土を占領していまだに居座っている。隣の個人独裁国はわが国の何の罪もない人たちを拉致し、いまだに帰さない。わが国が飛鳥時代から朝貢を続けてきた国は一党独裁で、権力主義と拝金主義が国を覆い尽くしている。
これらの国に共通しているのは個人であれ党であれ独裁である、ということだ。独裁になると権力は必ず腐敗して末路は哀れなことになる。隣の大国からわが国は「論語」をはじめすばらしい思想を学び、行動規範のバックボーンにしてきた。なのに一党独裁になってしまった今のモラルのなさはどうしたことであろう。ついでに言うと、規模は小さいけれど相撲界も同じ道を歩んでいるようだ。大きな声では言えないが警察組織が一番心配である。内部公開が一度もされたことがないのは問題である。
わが国の政治体制は、これらの国やわが国に原子爆弾を落とした国と比べてみたら、かなりマシであると思う。でも民主主義の弱点は衆愚政治に陥りやすいことと、正しいことでも素早く進めることが難しい、ということである。これらをどうしたら少しでも改善できるかが、永遠のテーマである。