平成21年4月25日(土)
このところ養老孟司にはまっている。以前「バカの壁」がベストセラーになった頃にはあまり興味がなかったのだが、色々読んでみるとものの見方がユニークだけれど腑に落ちて思わず「そうなんだ」とうなずいてしまう。
著者は東大で解剖を30年にわたってやりながら思索してきたが、解剖学の手法と緻密な頭脳がこの考え方を生んだのだろう。ヒトを脳と身体に分けてとらえると同時に、人間の世界を脳が創り出した環境=近代化と自然=田舎に対比してみるという考え方は、そう言われてみればさまざまの人の世の現象に説明をつけることができる真理だと言ってもいいのではなかろうか。
すぐれた人の考えを知ることができることは、じつに幸せなことである。
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養老孟司氏の本
過剰診療?
平成21年4月17日(金)
病気に対する対処の仕方は個々の医師によってずいぶん違うものである。
2年ぐらい前に当科で子宮筋腫と診断した患者さんがおられた。症状も軽度で貧血もなく経過観察で問題ないので、年に1回ぐらい診せてくださいと言っておいたがその後は来られていなかった。ところが最近その患者さんが、他院で手術を勧められたので驚いてMRIの写真を持って意見を聞きに来院された。
他院で子宮がん検診をした時に子宮筋腫を指摘されてMRI検査を勧められ、そのあとで手術を勧められたそうである。聞けば症状はあまりないようなので、筋腫がよほど大きくなったのかと思って超音波検査をしてみたが、2年前と比べてあまり変化はない。そこで、「2年前の状態と現在の状態と比較してみても今手術が必要とは思いません、手術は最終手段であって軽々しくするものではありません、現在症状があって困っているわけでもないのに手術は勧めません、今後は超音波検査でフォローすればいいです」とお答えした。
かつて子宮筋腫といえば手術をするという時代があった。現在はできるだけ保存的に治療するようになっているし、実際ホルモンを抑える薬や低用量ピルなど有効な方法があるので、手術しなくて済むようになっている。実にいいことである。この度は同じ患者さんに対して医師によって検査をどれだけするのか、治療をどうするのかなどずいぶん意見が違うことを痛感した次第である。
ピルの使用を妨げるもの
平成21年4月11日(土)
中絶手術をして一番傷つくのは女性だから、すべてが終わって落ち着いた後でピルを勧めるようにしている。でもたまに、一旦ピルを飲みだしたのに、パートナーに反対されてやめる人もいる。
理由を聞いてみるとパートナーが「ピルは体に悪いのではないか」と言うらしいが、中絶と比べてどちらが悪いというのだろう。男性は痛くも痒くもないだろうが、実際に中絶手術を受けるのは女性である。今後は絶対に妊娠しないという自信があるのだろうか。コンドームを使っても妊娠する可能性は結構高いのに、もしまた妊娠したらどうするのだろう。今度は生むようにするのなら何も言うことはないが、そうでないのなら結局傷つくのはパートナーの女性である。
神代の昔から、女性は妊娠を自分でコントロールできなかった。そのために死に至るまでの様々の悲劇がおこってきたのであり、それをなくすために開発されたピルというすぐれた避妊の技術を使わない手はない。まことに残念なことである。
花見の季節
平成21年4月3日(金)
今週は桜も咲いて花見の時期になったがあいにくの雨と寒さであまり盛り上がってないようだ。昨日は午後からクリニックが休みなので、夕食を早めに済ましてカミさんと比治山に夜桜見物としゃれこんでみた。サティでアルコールを少し仕入れてスカイウオークで登り、広場へ行ってみたが、寒さのせいか花見客はちらほら。暗いし冷えるし、早めに切り上げてしまった。桜はやはり暖かい日に散り際を眺めるのが一番だと思う。今度の日曜日は天気が良ければ絶好の花見日和になるだろう。
今朝自宅近くのマンションで、今年入学したばかりの娘さんとその母親と思われる人が、今から大学の入学式に出るのだろう、きちんとスーツを着て写真を撮って、大学へ向かっていく場面を見た。娘さんのために新しくマンションを借りてやって、うれしさや心配などいろいろな思いがあるのだろう。新入学の娘さんも、合格した喜びとこれからの生活への期待と不安などが感じられて、いいなあ、これからいろいろなことがあるだろうけど頑張ってやと思ったことである。
風の歌
平成21年3月30日(月)
このところ尺八の演奏会に行っていなかったので、やや演奏会飢餓状態になったので、知り合いの人に頼んでチケットを手配してもらい早速行ってみた。
島原帆山先生の系列の会なのでなかなか良かった。何人かプロをゲストとして招いており、そのなかの「風の歌」という曲を聞いた時は鳥肌が立つぐらい素晴らしいと思った。これはあの琴の名手沢井忠夫作曲の琴と尺八の曲で、初めて聞いた時からいつの日か自分も吹けるようになりたいと思っていた曲である。音も表現もすばらしく、プロのすごさに感じ入った次第である。この日はこの演奏を聴けただけでも充分だと思ったぐらいであった。
6月には藤原道山が広島に来るそうなのでこちらもぜひ行ってみたい。
妊婦健診の無料化
平成21年3月23日(月)
妊婦健診の無料化が4月から実施されることになった。といっても、完全な無料化ではなく、全額の7割から8割の援助であるが。それでも今までの2割程度の援助に比べればいいことである。とりあえず2年間の時限立法だそうである。
最近の政府は国民全員にお金を配ったり、高速道路を安くしたり、妊婦健診を援助したりしてせっせとお金をばらまいているが、財源は本当にしっかりしているのか心配である。ただ借金を増やして今だけいい目を見させてあとは知らないよ、としか考えられない政策のように感じられる。真偽のほどはあと10年もすればはっきりわかるだろうが、その頃には責任者は引退していて知らん顔だろう。借金を残されたこれからの人たちがかわいそうである。目先の人気取りより、将来を見据えた政策を行ってほしいものだ。きちんと説明すれば多くの人は納得するはずである。
急速に進行したがん
平成21年3月11日(水)
啓蟄を迎えすっかり春めいてきた。今年は例年と比べて暖かい日が続いて、コートを必要とする日がほとんどなかった。これも地球温暖化の影響だろうか。
カルテの整理をしていて、数年前に亡くなられた患者さんのことを思い出した。何年かに一度ずつ子宮がん検診に来られていたが、ある時一目でがんとわかる状態で来られ、すぐに病院に紹介して治療を行ったが1年後に亡くなられたのである。その前に診た時は肉眼的にも異常なく、もちろん細胞診にも異常は認められなかった。亡くなられたことは、お母様が来院されてお話を聞いてわかったのだが、まだ三十代の娘さんを亡くされた悲しみはいかばかりかと思うと、お悔やみの言葉もないぐらいであった。若い人に急速に進行するがんは、定期検診の回数を増しても防げるものなのだろうか。治るがんと治らないがんの違いは、近藤誠氏が言うように、医学では現在のところどうしようもないものなのだろうか。
春めいたおだやかな日だけに一層しんとした気持になった。合掌。
卒業式の仰げば尊し
平成21年3月4日(水)
先日、息子の高校の卒業式にはじめて出席した。上の娘たちの卒業式は出たことがなかったので、まあ最後だし、と思って出てみたがなかなか良かった。校長先生の話もよかったが、送辞が素晴らしくさすがだと感心していたら、答辞はそれを上回るほどのものであった。はるか昔の自分の卒業式の様子はどうだったか思いだそうとしてみたが、あまり記憶にないところをみると感動的ではなかったのだろう。
久しぶりに「仰げば尊し」を一緒に歌ったが、いい歌だと思う。なにより歌詞がいい。文語で七五調の歌詞は文部省唱歌以来聞いたことがないが、「係り結び」など思い出して懐かしいことであった。かつては中国は日本にとって今の米国のようであったから、中国の文章を翻訳して使った訳文が文語だったのではないだろうか。もう今後復活することはないだろうが、子供たちの最後の卒業式だとの思いと重なってちょっとさびしく思ったことである。
サクセスストーリー
平成21年2月28日(土)
同門会誌が届いたので読んでいたら、同門の先輩の文章が載っていた。親の後を継いで小さな医院から始めて、今では全部で1000床を超える病院と療養施設群を作り上げたという話である。まさにサクセスストーリーであり余人にはまねのできない素晴らしいことである。考え方の基本は、他の施設がやってない方向に目を向け、政府の医療政策の先取りをして攻める、引くをはっきりさせて、攻めるときは果敢に攻める、借金をおそれない、というものである。
なんだか他国との戦争みたいな話であるが、企業を大きくするにはそういう争いは必要だろう。でも医療はおしなべて個人的なものであり、大量生産のようなやり方にはなじまず、つぶれたら困るけれども儲かるものではないし、自分としては大きくすればいいとは考えられないしそのような能力もない。目の前の患者さん1人ひとりが少しでも幸せになってくれたら、これ以上の喜びはないので今まで通りこつこつとやっていくだけである。
WindowsVista
平成21年2月24日(火)
パソコンを買い替えたが慣れてないせいか使いにくくて困る。前はWindowsXPだったのだが、朝スイッチを入れて使えるようになるまでに15分はかかっていたので仕方なく新しいのを買ったのである。今度はWindousVistaでどこがいいのかよくわからない。メールもWindowsメールで以前のOutlookとやや勝手が違う。年をとるとこういうのに慣れるのが遅く困ったものである。
パソコンはMS-DOSの頃から一応使っているが、実際必要なのはワープロとメールにネットぐらいで、あとははっきりいってどうでもいいのである。今、そのように簡素化したパソコンを安く売っているそうだが、なかなかのアイデアだと思う。