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梅雨明け

平成24年7月21日(土)
この前の連休は九州地方で豪雨があり被害甚大だったのはまことに気の毒であったが、今週は一転して日差しが強くなり梅雨明け宣言もでた。
久しぶりの連休なので阿蘇の黒川温泉に行くつもりでいたが、あの豪雨である。前日まで様子を見ていたがとても無理なようで、しかたなくキャンセルした。5月の連休は壱岐に行く予定だったがこれも腰痛のため中止したので、これで2回九州地方に振られたことになる。広島から門司までの距離は広島から岡山までの距離とあまり変わらず、岡山から大阪までの距離とほぼ同じである。新幹線を使わず車で行くなら関西よりも九州の方が行きやすい。湯布院に別荘を建てて毎週土日に車で通っている人もいるそうで、九州は広島市在住者には親しみのある所のようである。暑い夏はあまり動かないようにして、秋になったらまた旅の計画を立ててみたいものである。

フェルメール光の王国

平成24年7月13日(金)
17世紀のオランダの画家フェルメールは、現在世界中で最も人気のある画家ではないだろうか。かく言う私も本物を見たことはないが、光を巧みに表現した細部にわたって精緻な絵に惹かれていた。先年、東京で作品展が開かれたことがあったが、あまりの人気に行くのがためらわれた。作品の前でゆっくり観賞することなどできないだろうと思われた。ゆっくり見るためには作品が展示されている各国の美術館に行くしかないだろうと思っていた。フェルメールに関する本は多数出版されており、いくつかは読んでみたが内容がもう一つだと感じていた。
「生物と無生物のあいだ」「動的平衡」 などの著書で知られる生物学者福岡伸一氏の近著「フェルメール光の王国」は、4年間にわたってフェルメールの作品が所蔵されている美術館を訪ねてまわり、その地の歴史と合わせて考察・観賞した力作である。旅の後半で氏が生物学者になって以来、考え方のよりどころとなっている孤独な学者シェーンハイマーの生誕の地ドイツ(ワイマール共和国)を訪ね、新築されたベルリン国立絵画館でフェルメールの絵を鑑賞し同時に生前その業績が正当に評価されたとはいえない学者に思いを馳せる。
ここでは芸術と科学と哲学は混然一体となり、切っても切り離せないものだと納得させられる。ヨーロッパの歴史にはかなわないと感じるのも、氏の深い考察と筆力の賜物であると思う。

精神科医師の本

平成24年7月6日(金)
精神科セカンドオピニオン活動に携わり、自身でもクリニックをたちあげ薬を使わない治療に努めている医師、内海聡氏の近著「精神科は今日も、やりたい放題」は、精神科についての内部告発ともいうべき話が語られていて実に興味深い。
近年、精神科のクリニックが増え抗うつ薬が大量に処方されるようになったが、本当の意味での「うつ病」「そううつ病」「統合失調症(精神分裂病)」などが、こんなに高頻度に発病するはずがないと思っていたが、やはり欧米の巨大製薬会社の抗うつ薬、抗精神病薬の販売拡大との関連があったのかと納得した。抗うつ薬SSRIが国内で承認されて以来、売り上げはうなぎ昇りで同時に副作用も増えている。内海医師によると、これらの薬は効かないうえに副作用・依存性が強く、患者のためにならず製薬会社を利するだけだという。やや過激な発言であるが腑に落ちる部分もある。
そもそも精神疾患を薬で治すことが可能なのだろうか?先ごろ亡くなった北杜夫氏は自身の「そううつ病」を公表していたが、その状態になったらどうしようもなくなることがプロの作家の筆でくわしく描かれている。私も同様の病気の人を知っているが、一旦「そう状態」あるいは「うつ状態」になったらお手上げで、ひたすら普通の状態に戻るのを待つしかないことを痛感していた。本物の病気でもそうなのである。安易に薬を使わないようにするべきであろう。

月経血の逆流

平成24年6月29日(金)
昨日の講演会で高知大学の深谷教授が子宮内膜症について面白い話をされた。生理の時月経血が卵管を通って腹腔内に逆流することは以前から言われていたが、なんと全員に逆流が見られるという。子宮内膜症の原因はこの月経血の逆流にあると言われているが、逆流が全員に起きているにもかかわらず子宮内膜症になるのは10%なので、その違いはなぜなのか。また全員に逆流があるということは、逆流そのものになにか大切な意味があるのではないかと話された。
妊娠しにくい人に検査として卵管造営を行う際、造影剤を卵管に流すことが妊娠につながることは経験上良く知られている。おそらく月経血が毎回逆流するのは、卵管をきれいにして精子が通りやすく卵子が子宮内に行きやすくするために、つまり受精・妊娠するために必要なことなのだろう。生物・種が現在生き残っているのは環境に適応しているからで、適応できず滅びた種は数限りなくあるという。生き残るためにはなにひとつ無駄なものはない、きびしいのである。現在体内・対外で起きていることは、たとえそれが不合理に見えても必要なことなのだろう。不必要なことを許容できる余裕はないはずだから。
生物は生き延びるために色々な仕組みを作っていると改めて思ったことである。

診察室の絵

平成24年6月22日(金)
診察室の壁に絵を掛けているが、このたび偶然日本画が手に入ったので掛け替えた。初めは開業した時に同門の先生からいただいた「踊り子」の模写、次は藤城清治のリトグラフ「3台のピアノ」でこれはずいぶん長い間掛けていたので風景の一部になっていて、絵の存在を忘れるぐらいになっていた。「3台のピアノ」は子供の頃よく目にしていた影絵が藤城清治のものとは知らず、ギャラリーで偶然見つけて懐かしくて買ったものであった。初めは気にいっていたが、絵が小さくインパクトが強くないので風景になってしまっていた。
このたびの絵は広島在住の平末初子氏の「桜」という日本画である。平末氏にはカミさんが日本画を習っていて、たまたまチャリティーで破格の値段で手に入れることができたのである。この絵に替えてから診察室の雰囲気が変わったように思われる。日本画の奥深さを感じている日々である。

美味いイカ

平成24年6月15日(金)
久しぶりに晴れ渡った休日、かねてより行ってみたかった店を訪れた。萩市と益田市のほぼ中間に位置する萩市須佐駅の近くにある「梅乃葉」は、獲れたてのイカを食べさせてくれる店で遠くから訪れる人も多い。広島からは高速で戸河内インターまで行き、191号線を益田経由で行くのが早いそうで、実際2時間半で到着した。戸河内インターからの191号線のドライブは信号も無く緑の中、気持ちのいい山道である。
ここのイカは須佐男命イカ(すさみこといか)というブランド名の活き剣先イカで、実に新鮮である。イカは獲れた所で食べるのが一番おいしく、透き通った歯ごたえのあるイカが次第に甘くなってくる。丸ごと1ハイを半分食べたところで残りはてんぷらにしてもらったが、これはまさに絶品だった。日頃食べているイカはなんだったんだろうと思わせるうまさである。獲れたてのウニや刺身もあり大いに満足できた。
萩市は歴史のある城下町で町並みも美しくそぞろ歩きするのがいい。ここには「割烹千代」という名店がある。以前この店を訪れた時は、カウンターで新鮮な魚介を堪能した。今度来る時は「千代」に行ってみよう。

ビッグファーマによるワクチンの普及

平成24年6月8日(金)
子宮頸がんのワクチン、インフルエンザワクチン、ヒブワクチンなど、近頃ワクチン接種を勧める報道が多くされている。毎年冬になると、マスコミはインフルエンザが大流行するという厚労省の発言を大きく報道し、結果多くの人がワクチンを接種するが流行せず掛け声だけに終わる。これらのワクチンは本当にメリットがあるのか疑問で、特に子宮頸がんのワクチンは値段が高価過ぎて問題外だと思っていた。
医師でグローバルに活躍している崎谷博征氏著「医療ビジネスの闇」は、近代医療がロスチャイルド財閥、ロックフェラー財閥が投資している巨大製薬企業(ビッグファーマ)によっていかに支配されてきたかをデータを示して述べている。この本は6章から成り、各章はそれだけで1冊の本が書けるくらいの内容があり、データの出典も明示した力作である。これを読むといままで疑問に思っていたことがほぼすべて氷解した。ロックフェラー財閥は第2次大戦後サンフランシスコに国際連合を創設し、下部組織のWHOやWTOを自身の石油と製薬の利益を拡大させる政治的道具として設立、配置した、とある。
WHOは中立的な機関だと思っていたがそうではないようである。バックに世界を支配してきた財閥がついているのであれば、いままでのWHOのふるまいも理解できる。たとえばWHOの唱える血圧の正常値の変遷やコレステロール値は、降圧剤・高脂血症薬の使用量を増やすためとしか思えない変更で、ビッグファーマの利益が増えることになる。また、その効果について疑問が出ている各種ワクチンもこれらの企業が製造し、世界中に販売を広げようとしている。わが国では子宮頸がんのワクチンは、まだメリット・デメリットが確定していないのに、厚労省が公費負担にして他国よりもはるかに高い値段で買っている。米国の忠犬ポチであるわが国は、ビッグファーマの戦略にうまく飲み込まれているのだろう。著書の内容をすべて鵜呑みにするわけではないが、腑に落ちることが多く医療関係者にも読んでもらいたい本である。

邦楽演奏会

平成24年6月2日(土)
4月、5月は腰痛のためあまり活動できなかったが、尺八の演奏会だけは2回聞きに行くことができた。もっとも1回は会場のイスに座ったとたんに腰痛が再発し、ロビーで横になって休みながら合計30分ぐらいしか聞けなかったが。
先週行われた藤原道山のコンサートは前半はイスに座って聞いたが、イスの座面の角度が腰に合わないのか腰に不快感が起きてきたので、後半は会場の後ろに立って聞いた。人間国宝・山本邦山の弟子の藤原道山は現在、最も人気のある若手尺八演奏家で、広島でも年に1回は演奏に来る。さすがに音も、指使いもすばらしいものを持っていて、非の打ちどころのない演奏に聞きほれてしまった。今回の曲目の中に、今ちょうど練習している尺八独奏曲「甲乙(かんおつ)」があり、よりいっそう興味深く聞いた。この曲は彼の師匠の山本邦山が作曲し演奏したもので、昨年三原市で邦山自身の演奏を聞いた。高齢とはいえさすが人間国宝である。演奏はすばらしく、今でもその時の音色が耳に残っている。藤原道山の演奏は師とは異なったもので、これはこれで味があるものだった。
演奏会の後は「とくあん」でうまいおでんに舌鼓を打ち、ビール日本酒。

今週の昼食

平成24年5月26日(土)
腰痛もだいぶ改善し長時間イスに座っても大丈夫になった。そこで今までに行けなかった仕返し(?)に、今週の6日間の昼食は全部別の店に行くことにした。
とくみ鮨:ここは15年ぐらい通っているが、いつも大いに満足して帰れる店である。特に好きなのは、こはだ、たこ、あじ、あなごなどだが、季節もののかき、しんこをはじめ皆美味い。値段はそこそこなのでいつも行くわけではないが、今回は久しぶりだったのでいっそう美味しく感じた。
菊屋:ここ4年ぐらい週に1回は通っている、とんかつ・串揚げの店である。ここのロースカツ定食はロースカツ、キャベツの千切り、味噌汁、漬物、たれ、が混然一体となって「とんかつを食べた!」と思わせる味である。聞くところによると、知事や国会議員も来られるとか。
一楽章:ここも15年通っているカレーの店である。色々な店のカレーを食べてきたが、ここのカレーは自分好みでいつまでも飽きが来ない。豊潤でしっかり辛い。いつもチキンカレーを食べる。
小太郎:串焼きの店である。ここも10年以上通っている。店主が備長炭で焼いてくれる、オリジナルのシソ巻きと牛串のミックス定食を食べる。なんともいえずいい味である。夜は串焼きをつまみの居酒屋になる。
天甲:てんぷらの店である。ここも15年近く通っている。最近はてんぷらは重いのであまり行かなくなったが、以前は毎週通っていた。店主は昨年、堀川町に本店を作ってそこでてんぷらを揚げている。元の店は弟子たちがやっているがクリニックに近いのがいい。最後は?き揚げとご飯、赤だしで締める。
讃岐屋:いつも行く便利な店である。うどん、そば、丼物などなんでもある大衆食堂であるが、15年間通って飽きない。冬は鍋焼きうどん、えび天うどん、カレーうどん、夏はてんぷらそば、そうめん、カツ丼などをよく食べるが、味もなかなかで気軽に寄れるいい店である。
というわけで今週は6店すべて行ってしまった。また行こう。

流産について(2)

平成24年5月21日(月)
自然流産は妊娠の15%起きるといわれているが、検査精度の増した現在ではどこからを流産というのか悩ましい。一般的には子宮内に胎嚢という袋が超音波検査で確認できる時点で妊娠と診断するが、妊娠検査薬が陽性になるのはそれより1週間以上前である。では、検査薬が陽性になった時を妊娠としたとして、胎嚢が見えるまでに出血が起こり流産してしまうことは結構多いのであるが、これを流産にカウントするべきかどうか。
もし、妊娠検査薬で調べていなければいつもより生理が遅れてきたということで、そのまま普通に生活していることだろう。
胎嚢が見えた1週間後に胎児の心拍が確認できるようになるが、この時にダメになるのを「稽流流産」といって流産の中では最も多い。これをなにもせず経過をみていると数週間後に自然に流産してしまうことが多い。だから、こういう場合、流産手術をせずに自然に経過をみるのも選択肢の一つである。問題はときに組織の一部が子宮内に残ったままでいつまでも出血する「不全流産」になることである。その場合に感染を起こすと厄介なことになるので、そのことを話して手術をするかどうか決めていただく。
もっと大きくなって胎児が確認されるようになった後、胎児の心拍が止まった場合は流産手術を勧める。この場合、自然に経過を見ていても出血も多くなり痛みも強く、なにより不全流産の頻度が増すからである。流産は一定の割合で起きるが、どう対処するかは必ずしも同じではないのである。