平成26年9月11日(木)
著者は、寄生虫体内のアレルゲン発見で小泉賞を受賞した東京医科歯科大名誉教授で、サナダ虫の「ハナコ」ちゃんを自らの腸内に寄生させてみたり話題の多い人であるが、一貫して表題の内容を主張している。
生物は栄養を吸収する腸を中心として発達してきており、脳は後付けの器官であるからヒトの体の司令塔は「脳」ではなく「腸」に置くべきだという説はそのとおりだと思う。ヒトの体は60兆個の細胞からできているが、腸内には2万種1000兆個もの細菌が住み着いていて、いわば生命共同体というべきものである。これらの菌が免疫システムを支え、働きを活性化しているのである。生後1年間で腸内細菌の組成がほぼ決定するといわれているが、この時期に「はいはい」していろいろなものを舐めない赤ちゃんは、免疫力が弱くなるという。
腸から健康になる方法として「食事の初めに小皿1杯のキャベツを食べる」「ネバネバ食品をたくさん食べる」「週に2~3回ステーキ(肉)を食べる」などは、わりと簡単にできそうである。広島大学の元学長、原田先生の話題もあり面白く読ませてもらった。
カテゴリー 日誌
藤田紘一郎著「人の命は腸が9割」
「成人病の真実」再び
平成26年9月3日(水)
久しぶりに近藤誠医師の表題の本を読み返してみた。「成人病の真実」は平成14年(2002年)に出版された本で、近藤医師が平成13年4月より文芸春秋誌に掲載した論文をまとめたものである。
氏の文章は平明でわかりやすく、出典も常に明らかにしており論文として優れたものである。今回読み返してみて、現在の医学の進展?から検証しても内容にいささかの訂正の必要もなく、ほんの一部ではあるがやっと医学界も認めてきたところがある。ただ、医療経済の面からは、全部認めれば医療費が縮小するからその方向にはいかないだろう。
タイトルだけあげれば、「高血圧症3700万人のからくり」「コレステロール値は高くていい」「糖尿病のレッテルを貼られた人へ」「脳卒中予防に脳ドック?」「医療ミス、医師につける薬はない」「インフルエンザ脳症は薬害だった」「インフルエンザワクチンを疑え」「夢のがん新薬を採点する」「ポリープはがんにならない」「がんを放置したらどうなる」「主要マーカーに怯えるな」「定期検診は人を不幸にする」など、なかなか刺激的である。でも著書からは患者さんに不利益を被らせないようにしようという、氏の真摯な思いが伝わってきて、その努力と勇気に満腔の敬意を表するものである。
福田蘭童について
平成26年8月30日(土)
今度、某所で福田蘭童の曲を吹くことになったので、目下練習しているところである。福田蘭童は尺八奏者・作曲家で昭和51年、71歳で亡くなったが、その曲は尺八愛好家の中では好まれていて、今でも折に触れ演奏されている。どの曲も個性的で一度聞けば「これは福田蘭童の曲だな」と感じられる作風である。
蘭童は明治38年、洋画家青木繁と福田たねの子として生まれたが、正式な結婚でなかったので祖父母に育てられた。この生い立ちが後の独特な作風になったのではないかと思われる。腕白で利発な子供で小学校時代はいつも級長だったそうだが、中学校に入ってから尺八にはまってしまい成績は落第寸前だったが、尺八は師にも恵まれて猛練習、めきめき上達した。古風な和楽器をマスターし大成するには西洋音楽の理論も必要だと、音楽学校でピアノとヴァイオリンを学び後に作曲を手がけた。NHKラジオドラマ「笛吹童子」「紅孔雀」のテーマ曲が好評を博した。釣り好きで釣りの随筆など多数あり、飄々と人生を生きた自由人。クレージーキャッツの石橋エータローは息子である。
休日当番医
平成26年8月24日(日)
今日は休日当番医として午前9時から夕方6時まで診療を行う。産婦人科の当番医は広島市全体で1施設ずつ順番に、およそ6か月ごとに回ってくる。患者さんの数は平均して10数人、他の科と比べてもっとも少ない。受診頻度の多い妊婦さんはお産をする施設に行くのでこれぐらいですむのだろう。緊急を要する患者さんもおられるので当番医制度は必要だと思うが、実際に病院に搬送するケースは少ない。
数が少なくても当番医には昼休みがないので、いつもはセブンで弁当を買って行くことにしている。今回は入れ替え前で弁当がほとんどなかったので一瞬の合間にアンデルセンへ仕入れに行った。なにしろ徒歩30秒の距離なので5分もあれば行ってくることができる。アンデルセンの弁当もなかなかのものであった。これからも時々利用しよう。次回の当番は2月ごろになると思われる。
来月で17周年
平成26年8月18日(月)
盆休みの間はずっと天気が悪かったが、今日は久しぶりに晴れて真夏日のようだ。休みの間になまっていた体調も昼までには復調して、平常通りに戻り診療開始である。
平成9年9月に始めた当院も来月で17周年を迎える。17年というと長いように思えるかもしれないが、自分の感じではつい先日のようである。開業してからは、それまでの17年間と比べるとはるかに時間が経つのが早かった。きっと毎日いろいろなことが起こり、それらを調整したりしているうちにあっという間に時が経ったのだろう。この調子でいくと、残りの人生は瞬きする間に終わってしまうのだろうと思った次第である。
それも善き哉。
高血圧はほっとくのが一番
平成26年8月9日(土)
表題は関東医療クリニック院長、松本光正氏の著書名である。氏は長年、高血圧症や高脂血症などの成人病(今は「生活習慣病」といって、本当の原因である「老化」を隠してあたかもきちんと生活しなかった本人のせいだといわんばかりの呼び方である)を診てきたが、これまでの経験とさまざまな新たにわかってきたデータから、上記の結論に達してそのように診療しているという。
ヒトの体は自然にそれぞれ最も良い状態になる力があり(これをホメオスタシスという)血圧が高くなるのはそれなりに理由があるわけで、無理に下げると脳梗塞になりやすくなる。氏は高血圧症の基準値をWHOが8年間で50も下げたことに憤りを感じている。WHOは予算の7割を製薬会社の寄付金に依存している。降圧剤は製薬会社にとってドル箱である。高血圧症の基準値を下げれば患者が増えるのはあたりまえである。それらも含め氏は「血圧計は捨てなさい」など一見過激に思えることを提唱している。そういえばかの有名な近藤誠医師も「私は何十年も血圧を測ったことがない」と書かれていた。
実は私もここ1年血圧を測っていない。
生物の不思議
平成26年8月1日(金)
人間の体にはまだまだ分からないことがいっぱいある、というよりわからないことの方が多い。医学は生物学を基本にしているが、生物学自体がわからないことだらけなので、病んだ状態を改善するためにどうしたらよいかと試行錯誤しているというのが実態である。原因がわかり対処法もわかり実際に治る病気というのはほんの一部で、多くは経験に基づく対症療法である。
人体は60兆個の細胞からできているというが、その細胞の核には遺伝子がつまっていて、次の世代につながるようになっている。さらに細胞の中にはミトコンドリアがあり、これが酸素を取り込み糖を分解してエネルギーを生んでいるので、ミトコンドリアがなければ細胞、ひいてはヒトは死んでしまう。このミトコンドリアを調べてみると、核の遺伝子とは別の自前の遺伝子を持っていることがわかってきた。この遺伝子は細菌由来のものであるという。つまり我々の体の細胞内には細菌の遺伝子が入り込んで住み着いているがゆえに生き延びてこられたのである。
実際に診療していて驚くことはしばしばというほどではないが見られ、そのたびに生物の不思議さを感じる。ヒト、生物の仕組みはどこまでも不可思議で興味がつきない。
奈良国立博物館
平成26年7月25日(金)
久しぶりの移動可能な連休だったので、奈良国立博物館の特別展「醍醐寺のすべて」を見に行くということで計画を立てた。まず和歌山にいる息子のところを訪ねてから夕方、奈良に行くことにした。彼の入学以来、紀三井寺を訪れるのは5年ぶりである。大学と附属病院を案内してもらい、おすすめの店でおいしい昼食、和歌山城見学まで付き合ってくれた。夕食は奈良唯一の三ツ星「和やまむら」が偶然予約できたのでカウンターで食したが、胃の調子があまり良くなく日本酒が飲めなかったのは残念だった。
翌日は涼しいうちに春日大社を散策し奈良国立博物館へ。特別展は、国宝と重要文化財がこれでもかというほど展示されており、世界文化遺産にも指定されている醍醐寺の歴史に圧倒された。三条通りを歩いていると「うなぎ川はら」ののれんが見つかり、久しぶりのうなぎに舌つづみ。あまりに暑いので奈良公園の木陰で一休みしたが、風がよく通って心地よく思わず眠ってしまった。夕方、京都伊勢丹で菱岩の弁当を受け取り新幹線で帰広。弁当は菱岩が群を抜いていると思う。このところ予約すらできなかったのが、久しぶりに手に入ったので日本酒とともにおいしくいただいた。いい旅であった。
広島市の産婦人科救急医療
平成26年7月18日(金)
自分のところのような病床を持たないクリニックで緊急を要する患者さんを認めた場合、ウイークデイの午前中なら入院・手術のできる近くの病院に連絡して診てもらうことはよくあることである。問題は、夕方や土曜日である。特に土曜日は病院の外来は休みのところが多く、医師の人数も少なくなっていて、どの病院に頼もうかと悩む。
広島市内には新生児ICUのある総合病院が4施設、手術を含めて受け入れ可能な病院が5施設、お産のできる病院・医院が13施設、入院のない外来のみの医院が30施設ある。わが医院もこの30施設の一つであり、とりあえず入院して様子を見るというわけにいかないので、はじめの悩みになるわけである。
妊娠に関しては夜中とか休日に問題になるような症状が起きたら困るので、早めに紹介するようになる。そうやって注意していても予期せぬことが起きるので救急を受け入れてくれる施設は貴重である。勤務医の頃は受け入れる側だったので、その大変さもわかっていて安易に紹介しないようにしてはいるが、紹介しようかどうしようかと苦慮することも多い。それでも、いつも快く受け入れてもらっているのはありがたいことである。
最近の昼食(2)
平成26年7月11日(金)
以前にも書いたが開業して十数年、昼食に行く店は大筋では変わらないが、閉店や味・好みの変化などで微妙に変わってきている。ずっと通い続けている店もあるが、いつの間にかレギュラー店から入れ替わった店もある。
初めから変わらず通っているのは「小太郎(串焼き)」「讃岐屋(うどん、他)」「一楽章(カレー)」「とくみ鮨(鮨)」「中屋(あなご丼)」「天甲(てんぷら)」で、初めの3店はほぼ毎週!飽きずに通っている。あとの3店は1~2か月に1回ぐらい。今のレギュラー店は先の3店に加えて、「菊屋(とんかつ)」「こけもも(ビーフカツ)」であるが、じつにうまい。ただ、さすがに年を取ると食べられなくなるというか、以前ほどお腹がすいたという感覚がなくなってきているのはさびしいことである。
休日であれば「はっぴ(そば)」「ペロー(パスタ)」「そばきり吟(そば)」などに行くが、飽きない味でしばらくするとまた行きたくなる店である。おいしく食べられるうちが花なので、いつまで行けるかわからないができるだけ続けたいものである。