追悼

平成30年6月1日
大学入学以降、故郷を離れて何十年になるが、歳を重ねると一層懐かしいものである。そのふるさとの本家の当主である従兄が亡くなった。3年半前、父が亡くなったころに発覚した病と闘っていたが、はかなくなってしまった。小さい頃から同じ敷地内で育ち、父が分家してからも兄弟のように親しんでいた3歳年上の従兄とは色々な思い出がある。戦後の高度経済成長の時代と共に育ってきた自分としては、郷里に帰るとその頃のことがまざまざと思い出されて、その時代を共有できる従兄夫婦と話すのは楽しみだった。 病が発覚してからはできるだけ父の墓参りも兼ねて、誰も住んでいない郷里の家に帰るようにした。そして、従兄に会って色々な話をした。たいてい他愛もないことだけれど、その時間がうれしいことだった。治療の手立てのなくなった4月の末に、夫人の心づくしの御膳を囲んでの会話と食事が最後の昼餐になってしまった。従兄は最後まで弱音を吐かず、昔から全く変わらないおおらかな自由な人がらのまま逝った。故郷が少し遠のいたような気がする。  合掌