流産を告げるとき

平成16年11月17日(水)
朝から流産手術2件。いつもながら流産の事実を告げるのは気が重い。特にやっとできたはじめての妊娠の場合は、どのように話そうかと思う。できるだけ衝撃を緩和するように反応をみながら話すのだが、つらい事実には変わりなく心の動きが手に取るようにわかる。納得するのに時間がかかるので、緊急を要するとき以外は流産手術をすることの同意を何日でも待つようにしている。そして、次の妊娠への希望を持ってもらえるように話すのである。
当院ではがんや致命的な病気の治療は行っていないが、そういう病気を本人に告げるのは大変であろう。治る可能性があればいいが、ほとんどない場合は本人の衝撃はすごいものだろう。「世界が変わる」という。それを告げてさらに本人の驚き、怒り、恐怖などもろもろの感情を受けとめるのは、大変なことと思う。よほど強い意志と深い愛情がないとできないのではないか。そういう立場の医師は大変だろうが、現在の私はそうでなくてほっとしている部分もある。勤務医の頃は多くはないがそういう立場になることがあり、自分の無力さを痛感することがあったのである。