平成30年1月12日(金)
魅力的な人物の評伝に興味があるので本屋で見つけると買うようにしている。最近、直木賞作家の田中小実昌氏のエッセイ集を見つけたので読んでみた。氏が色々な雑誌に書いたエッセイを年代を追ってまとめたもので、オビの「コミさんの入門編にして決定版」とあるように、実に面白く読ませてもらった。
氏は私の父親とほぼ同年代の作家というか自由人で、75歳で亡くなっているがその飄々とした風貌と振舞いが雑誌などで紹介されていてなぜか気を惹かれていた。エッセイによれば、氏は月のうち5日ほど仕事をして、あとは昼は映画、夜は新宿ゴールデン街に入り浸っていたようでまことに自由である。氏の父親は牧師で呉に教会をつくりそこで少年期を過ごした。短期間であるが招集されて軍隊にも行っているが戦後、東京大学文学部哲学科を中退して翻訳などをしながら生活していつの間にか作家として認められている。ドイツ人の医師と結婚してドイツに住んでいる娘さんのところや、親戚のいるアメリカにも行き来していて最後はアメリカで客死しているが、こういう人を「達人」というのではなかろうか。