平成19年5月11日(金)
「貧困の光景」という曽野綾子氏の最近のエッセイ集を読むと、自分の考えていた貧困と氏が実際に見てきたアフリカ諸国の貧困とは程度が天と地ほど違うことがわかる。氏が以前より活動してきた海外邦人宣教者活動援助後援会でのレポートともいうべきエッセイは、まさに世界は不公平であり、人は生まれる場所を選べないということを教えてくれる。氏の定義する「貧困」とは、「その日、食べるものがない状態」のことである。当然であるが明日になっても食べるものがあるかどうかはわからない。そういう意味で日本には「貧困」はない、という。
わが国は世界でも有数の豊かな国であり、安全面からも気候からもこれ以上何を望もうというくらい恵まれている。むろん勤勉な国民性と高い教育によることが大きいが、エッセイに登場する国々と比べると条件が違いすぎる。日本は気候も温暖で雨が多く植物が育ちやすい。周りの海からは食料となる魚、貝類、昆布などがたくさんとれる。他国からの侵略もほとんどなかった。そしていっそう豊かになった今がある。現代の日本に生まれたことを心から感謝する思いと同時に、恵まれない国々の人々に対して後ろめたい気持ちがするのも事実である。