令和5年3月3日
講演会などで演者が「子宮内膜症が増えている」というが当院のような小クリニックにはそんな感じはない。勤務医の頃もそれほど多いという印象はなかったのでいつもなぜなのかと思っていた。子宮内膜症は、子宮内膜が卵巣や他の臓器に生着して卵巣からのホルモンにより月経と同じ変化を起こすために起きる病気で、典型例は卵巣にチョコレート嚢腫をつくり、周囲と癒着を起こし痛みが強くなる。以前は良い治療法がなく手術が中心だった。手術しても再発が多く、治療薬ダナゾールも副作用があって使いづらかった。
そこで登場したのがLEP製剤(低用量ピルなど)である。安全で画期的な薬で、どれだけ助かったかわからない。ピルの安全性は欧米では常識になって使われていたのに、厚労省は待ったをかけて10年据え置き、20数年前にやっと認めた。ピルは排卵を抑制するので避妊もできるし、生理痛も改善する。以前講演で「生理の回数が増えたのが子宮内膜症が増えた原因だ」「少子化になったので女性が一生の間に450回生理を経験するようになったが、かつては多産なので50回くらいしか生理がなかった」と説いていた先生がいたが一理あると思う。いずれにせよピルが開発されてよかった。ピルの普及が進めば進むほど子宮内膜症は減ってくると思う。