「森のうた」

令和4年6月23日
表題はN響の指揮者で2,006年に逝去された岩城宏之氏の著書で、復刻版として今年発刊された。氏は東京芸大に現役入学し、一浪して一学年遅れて入学した山本直純氏と肝胆相照らす仲となり、指揮者になることを目指して頑張った青春記である。あまりにも面白かったので紹介することにした。
「青春記」はどれも面白いもので、自分のその頃の記憶と相まって興味深く読めるものだ。畑正憲「ムツゴロウの青春記」南木佳士「医学生」小松左京「やぶれかぶれ青春記」北杜夫「どくとるマンボウ青春記」久坂部羊「ブラックジャックは遠かった 阪大医学生ふらふら青春記」など数え上げればきりがないが、いずれも実に面白い。
表題の「森のうた」は芸大の打楽器科に入った岩城氏と作曲科の山本氏が、指揮がしたい一念で切磋琢磨しながら夢をかなえていき、とうとうショスタコービッチのこの曲を指揮するに至るところまでを描いている。語り口もよく、よくぞ復刻版を出してくれたものだと思う。