「やはり死ぬのは、がんでよかった」

令和3年8月19日
表題は以前にも紹介したベストセラー「大往生したけりゃ医療とかかわるな」の著者、中村仁一医師の近著である。氏は老人ホーム附属診療所所長を務め、100名以上のがんで死亡した人を診て、がんになっても何もしなければ痛みもなく大往生できることを実感し、上記の本を書いたのである。動物(人間)には自然死の仕組みが備わっているので、下手に治療しなければ安らかに逝けるのに、がんだからといって手術、抗がん剤、放射線治療などを行うとかえって苦しんで死ぬことが多くなる。
氏の考えに大いに共感していたが、氏は昨年の6月ごろから息切れ・咳などが起きてきて、胸部レントゲン(片肺が完全に潰れている)と腫瘍マーカーなどから肺がんⅣ期と診断された。9月に退職して訪問診療でかかりつけ医に診てもらいながら「死ぬならがんに限る」に加筆したものである。主張してきた通り一切治療はせず、今年の3月には近藤誠医師と中村氏の自宅で対談を行っている。それから3か月、食事も排泄も自力で行って6月あの世へ旅立たれたという。穏やかな大往生だったそうである。言行一致を貫いた上医というべき人だと思う。