朧月夜

令和3年4月9日
4月になって日が長くなり、日中は暑さを感じるようになった。夕方散歩していると、周りの風景に小学校の時に習った「朧月夜」を思い出させるような風情を感じた。ほとんどの家が農家だった田舎では、学校に通うときに田んぼの畦道を通ることもあって、まさに「朧月夜」の歌詞と同じだった。菜の花も暮れ行く山の端の風景も、霞がかかったような夕暮れの生暖かさも、まるで自分たちの村の風景を歌っているように思っていた。歌詞は文語調で韻を踏んでいて曲もぴったり合っている。ただ、文語調なので言葉を正確に理解していなかったことを、ずいぶん後になって知った。「夕月かかりてにほひ淡し」の「にほひ」は匂いではなく「目に立つ色合い」という意味で、「さながら霞める」の「さながら」は「のこらず、すべて」ということである。小学校の時には習わなかったような気がするのだが…。やはり文語の詩は風情がある。絶えてほしくないものである。

菜の花畠に 入日薄れ、見渡す山の端 霞ふかし。
春風そよふく 空を見れば、夕月かかりて にほひ淡し。

里わの火影も、森の色も、田中の小路を たどる人も、
蛙のなくねも、鐘の音も、さながら霞める 朧月夜。